新型コロナウイルスの影響でビジネスパーソンの働き方は岐路を迎えている。特に感染防止という観点から、在宅勤務を実施する企業が増えたことはインパクトが大きい。中小企業やスタートアップの中には、オフィス自体を廃止して原則リモートワークに移行した企業も出てきている。
そんな働き方が実現できるのは、テクノロジーが進化した現代ならではといえる。しかし、“従業員が場所にとらわれない”ということは、情報システム担当者からすれば困ったもの。それぞれの環境に適したビジネスPCの支給や設定、セキュリティの確保まで、新たに考えなくてはいけない問題は山積みだ。
一変したビジネスの現場で、情シスはこれからどのような対応を求められるのか。こうした企業の課題に数多く携わってきたレノボ・ジャパンの元嶋亮太氏(コマーシャル事業部 企画本部 製品企画部 モダンプラットフォームグループ マネージャー)に、“ニューノーマルなIT構築”について話を聞いた。
「2019年までの常識であった『出勤前提で仕事をする』というのは、数十年前から変わらないものでした」──元嶋氏はそう話を切り出した。仕事場があり、自宅から通って出社するという形態は、まだITの活用が台頭していない、はるか昔から続いていたもの。私たちが今直面している変化は、それぐらいドラスチックなものだ。
レノボ・ジャパンが2021年4月に行った調査では、新型コロナウイルスが落ち着いたとしても、8割の企業がリモートワークを組み込んだワークスタイルを維持すると答えている。ここから分かることは、出勤と在宅のハイブリッドに移行する流れはもはや不可逆ということだ。
元嶋氏は「今は在宅勤務で家から出られないという状態ですが、新型コロナウイルスの影響が落ち着いたら、オフィスワークとリモートワークのハイブリッドな組み合わせが主流になってくるでしょう」と説明する。
コロナ禍で急激に普及したことから誤解されることもあるが、「テレワーク/リモートワーク=在宅勤務」ではない。近い将来はオフィス以外、例えば顧客先に向かう途中にカフェやコワーキングスペースで仕事をするようなスタイルも、より一層定着していくだろう。
また、それらはいわゆる“営業パーソン”だけにとどまらない。例えばバックオフィスといった、以前なら出社が前提であった業務──いわゆる“ハンコ出社”のような状況も改善が進んでいる。他の職種であってもハイブリッドな働き方が広まりつつある。
ここで重要なポイントとして、元嶋氏は「一人一人に最適な働き方は異なるということをしっかり直視しないと次の展開はありません」と話す。情シス視点でいえば、支給するビジネスPCをこれまで以上にしっかりと吟味する必要がある。
これまでは画一的な働き方がメインであったが故に、例えば「PCの選定一つを取り上げてみても、単一の標準PCを従業員全員に配布している」という企業や組織も多い。今後は一人一人のワークスタイルの多様化に伴って、IT部門がいかに「選択肢」を提供するかが課題解決の鍵となる。
「同一の企業や組織の中でもいろいろな働き方があります。日々、自宅やコワーキングスペース、オフィスなどを渡り歩くような働き方を重視するなら小型軽量性の高いPCが求められますし、逆に在宅勤務がメイン、ブレインストーミングなどが多ければ可搬性よりも大画面を重視したマルチモード2-in-1が最適、つまり“ワン・フィット・オール”はもはやありえないということです」(元嶋氏)
従業員の働き方に合ったビジネスPCを選定して支給する──企業のIT環境として理想の形であるとはいえ、これを愚直に実現するのは大変だ。多くの場合、企業や組織では業務用として支給するPCの機種ごとにOSや設定ファイルなどをあらかじめ入れたOSのマスターイメージを作り、一台ごとに導入する方法が主流となっている。
しかし、このような従来型の方法を続けていては、一人一人の働き方にあったPCを用意するのは厳しい。機種が増えるほどキッティング作業も増える上に、例えばWindowsのバージョンが上がったら、その度にそれぞれメンテナンスをする必要がある。このために情シスが出社しなくてはいけない状況になっていたら、情シス自身の働き方改革の観点でも課題が残る。
元嶋氏はこうした伝統的な“トラディショナルIT”からの脱却を訴える。「固定された場所での画一的な勤務スタイルから、ハイブリッドワークへの移行は既に始まっています。一人一人の働き方に合わせた環境の選択肢を、できるだけ効率良く準備できるデプロイメント手法への移行は今後、顕在化した課題となることが予想されます。こういった問題を解決するのが、モダンITという新たなアプローチです」(元嶋氏)
具体的にモダンITとは何を指すのか。例えばビジネスPCにおいては、情シスが1台ずつキッティング作業をしなくてもいい世界だ。
工場で生産したタイミング、もしくは販売店が出荷するタイミングでデバイスごとの識別情報をMicrosoft 365に登録。従業員はPCがメーカーから出荷された状態で届いた後、個人の認証情報さえ入力すれば、Windows Autopilotという仕組みを通じて自動的にクラウドを介して初期設定が施される。情報システム担当者が物理的にPCをセットアップする必要はなく、クラウド上のMicrosoft 365 管理センターから設定するだけで良い。つまり、情シスの手を介することなくビジネスPCが従業員の手元に届くという流れになる。
元嶋氏はスマートフォンの初期設定を例に挙げて合理性を説明する。「スマホの場合、初期状態から使えるようになるまでのセットアップをユーザー自身でやっているはずです。PCも同じで、情シスは必要最低限の準備をして、あとはユーザーがセットアップをすればいい。できるところはセルフサービスにすべきであるとともに、なるべく自動化することも求められます」(元嶋氏)
近年よく耳にするようになった「DX」(デジタルトランスフォーメーション)はコロナ禍でますます注目されている。ITやテクノロジーを活用して変革を起こすために、まずはモダンITの環境を活用することが従業員体験を強化することにつながっていく。
「ハイブリッドワークを実現する上で、業務環境の多様化は避けて通れない問題です。ゼロタッチデプロイメントやクラウドベースの管理を通じて管理工数を削減しつつ、選択肢の用意、という本来相反する要素を同時に実現していく。これこそが、いま情シスが直面している普遍的な課題の一つであり、今日のテクノロジーの活用で解決できる問題でもあります。クラウドを活用したWindows PCの展開は、2017年から提供が始まり、今日では技術的にも成熟フェーズに達しています。日本の働き方が大きな変化を遂げる今こそ、新たなデプロイメントの手法に目を向ける絶好のタイミングです」(元嶋氏)
こうした環境構築を“コスト”ではなく”投資”と捉え、数年先の働き方を見据えた準備を行う──クラウドを活用したPC展開、管理手法のモダンITは、情シスをサポートする強力な武器となり得るだろう。関心がある担当者は、まずはレノボ・ジャパンに相談してみてはいかがだろうか。
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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia NEWS編集部/掲載内容有効期限:2021年8月1日