スパコンで量子コンピューティング、配送計画の最適化で物流費3割減 “現場の工夫”を上回る効率化の裏側

» 2022年03月01日 10時00分 公開
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 スーパーコンピュータ(以下、スパコン)の活躍は耳にするが、研究機関や大企業のR&D部門が使うもので、実際に業務を担う現場にとっては雲の上の話――そう思う人も多いのではないだろうか。しかし今、現場の課題をスパコンが解決し、業務を改善する例が出始めている。キーワードは「スパコンをベースにした量子コンピューティング技術の実現」だ。

 そんな量子コンピューティング技術の活用に勝機を見いだしているのが、ICT機器などの保守を手掛けるNECフィールディングだ。これまで保守部品の配送をいかに効率的に行うか長年悩んでいた同社は、量子コンピューティングを使った配送計画の最適化に期待を寄せている。

photo NECフィールディングの山崎正史さん(執行役員)

 「量子コンピューティングで物流コストが3割減る」──NECフィールディングの山崎正史さん(執行役員)はこう説明する。「普通は『3割減らせ』と言われたら、現場の担当者は大変驚くと思います。しかし量子コンピューティング技術を使えば削減できる可能性がかなり高いのです」(山崎さん)


photo NECの泓宏優さん(AIプラットフォーム事業部 上席事業統括)

 今回の取り組みで活用した量子コンピューティング技術は、NECのスパコン「SX」シリーズの最新モデルである「SX-Aurora TSUBASA」をエンジンとして使った。NECの泓宏優さん(AIプラットフォーム事業部 上席事業統括)も「この技術が業務現場の役に立てると信じていましたが、やっと実現できる日が来ました」と喜びをあらわにする。


 すでに計算上は成功の道筋が見えており、2022年2月には東京都内の配送拠点でPoC(Proof of Concept:概念実証)を開始。今回は量子コンピューティング技術が現場の課題をどう解決するのか、深掘りしていく。

求められる迅速な保守対応 鬼門は配送計画の“膨大な組み合わせ”

 ICT機器の保守作業は時間との勝負だ。対応が遅れると顧客の業務継続に影響が出るため、依頼を受けてから保守作業を完了するまで緊急性を要する。迅速に対応するために、NECフィールディングでは全国に保守作業を担うカスタマーエンジニアを配備し、交換用の保守部品を配送するロジスティクス網を整備している。

 1台のトラックで複数箇所に部品を届ける場合、配送計画をできるだけ効率化したい。配送ルートの候補を総当たりで計算すれば最適なルートを導けるが、拠点数や配送部品が増えると組み合わせの数が爆発的に増え、計算にかかる時間が大幅に伸びるため通常のコンピュータでは最適解を出すのが難しかった。

 そのため、NECフィールディングでは翌日の配送量や目的地を見ながらベテランの配送担当者がルートや手配するトラック台数を判断。ITはごく補助的にしか使っていなかった。

現場でも地道な工夫の跡

 これまでNECフィールディングは現場改革やDX(デジタルトランスフォーメーション)化を継続的に行い、保守現場のサポート品質向上に取り組んできた。故障箇所の診断や対応するカスタマーエンジニアの割り当てにAIを活用したり、スマートグラスを導入して遠隔地から作業の指示や支援をしたりといった業務改善を推進。最後に残ったのが配送計画の最適化だった。

 人力で効率的な配送計画を導き出せていたのは現場の努力のたまものだ。泓さんが配送のオペレーション現場を視察すると、至るところに工夫の跡を発見。「今日は何件で何分以下に抑えよう」「今日の目標は○○」といった改善を日々続けて効率化を進めていた。

突破口は「量子コンピューティング技術によるシミュレーション」

 ここで「量子コンピューティング技術」と説明しているのは、正確には“量子”そのものを活用した技術ではない。組み合わせ最適化問題に特化することで高速計算を可能にした「量子アニーリング」という計算方法を、スパコンによってシミュレーションしたものだ。量子コンピュータによる計算にはまだ課題があるといわれる中、安定した従来技術に立脚するSX-Aurora TSUBASAを使ってシミュレーションすることで、大規模な組み合わせ最適化問題の高速処理を実現した。

 NECが研究開発を続けてきたこの技術が、配送計画の最適化における“膨大な量の計算”を突破する力になった。

トラック台数を3割削減 ベテランも踏み込めなかった“ゆとり”を切る

 「配送計画の最適化という発想自体はずっと持ち続けてきたが、ようやくそれに適した技術が出てきました」――山崎さんは今回の取り組みの発端をこう振り返った。NECフィールディングの状況を見た泓さんが、量子コンピューティング技術を使った配送計画の最適化を提案した。

 現在、首都圏の配送業務は東京都大田区の平和島にある物流センターを拠点に、約100台のトラックで担っている。過去のデータを基に、配送計画の最適化による効果を試算したところ、トラックを約3割減らせるという結果が出た。山崎さんは物流費も2〜3割削減できると見込んでいる。

photo 最適な配送計画を策定する背景(クリックで拡大)

 最適な配送計画の策定に加えて、配送時間の予測精度も向上する見込みだ。従来の人が手配する方法では、到着時間に遅れないように余裕を持った配送計画にしていた。しかしSX-Aurora TSUBASAを使って精度を上げられれば、ゆとりを持たせていた時間を削って効率化できる。「精度を上げて余裕を削るという方法を実行できるとは考えていませんでした。そういう発想を現実のフィールドで試してみることができる、という点が今回のチャレンジで感じた大きな魅力の一つです」(山崎さん)

配送計画の最適化を含めたDX化を、事業拡大の大黒柱に

 NECフィールディングは配送計画の最適化に強い期待をかける。効率化によって物流費を抑えられるだけではなく、トラック台数や走行距離を減らせば環境負荷の軽減にもつながる。また、配送計画の立案業務における属人化を解消する効果も見込める。

 「配送計画の最適化には、効率化や品質向上など事業に対する直接的な貢献だけでなく、環境面などの社会貢献にもつながるので強く期待しています。試算通りの結果が出れば意味のある改善になると考えています」(山崎さん)

 NECフィールディングはICT機器だけでなく、医療機器やコンビニエンスストア向け設備機器の保守といった分野にも事業を拡大している。今後、さらに非ICT機器保守サービスにも注力するに当たり、配送部品量の増加に伴う課題を配送計画の最適化やDXを通して解決したい考えだ。

現場でも歓迎の声

 経営層が新しい技術に期待していても、現場では導入の手間や「仕事が奪われる」といった不安から反発する動きが出る可能性もある。しかし現場のマネジャー層に取り組みを説明すると「面白そうだからやってみよう」と前向きな反応が返ってきた。

 泓さんが配車担当のリーダーと話したときも「え!? 配車が自動でできるんですか!」と驚いたそうだ。自動化して手が空けば、他にやりたかったことに時間を割けるため、ぜひ自動化ツールを導入してほしいと歓迎する声が上がった。

SX-Aurora TSUBASAのマシンパワー×NECの技術と経験

 今回の事例のように、スパコンの新たな応用例として量子コンピューティング技術への活用が進んでいる。今回活用した組み合わせ最適化問題を解くサービス「NEC Vector Annealing」も、NEC独自のアルゴリズムを組み込んだソフトウェアをSX-Aurora TSUBASAで動作させている。

 このアルゴリズムは、組み合わせ最適化を行う場面で生じるさまざまな計算上の制約から最適解の探索範囲を絞り込めるため、効率的に解を求められる。大きなサイズの行列計算を得意とするSX-Aurora TSUBASAを使うことで、大規模な組み合わせ最適解問題の高速処理を実現した。今回の配送計画最適化の場合、1日分の全配送の最適ルートも数分で解いてしまう。

 現場へのヒアリングで得た条件に基づき、あらかじめ効果を試算。加えて、人の作業を自動化する上では、計算式に反映し切れていない暗黙のルールなども取り込む必要があるため、2月に実施するPoCで精度を上げていく考えだ。泓さんは現場に当てはめる上での不安はあるとしつつも、過去に同様の問題を解いた経験を生かせると話す。

 「スパコンを扱っていると、計算センターや大学の研究者といったお客さまとの商談がほとんどです。だからこそ、現場の問題を解決できるというのは画期的だと思います。そして今回の量子コンピューティングの取り組みは、大規模な計算を素早く解けるNECのベクトルマシンの特長を生かした本当に良い使い方だと考えているので、ぜひ成功させたいです」(泓さん)

最適化問題を解くことで企業の課題解決を後押し

 NECは海外にもNEC Vector Annealingサービスを販売しており、米国の顧客からは「ベクトル型は他と比べて性能が良い」と評価されている。他のハードウェアに比べて解ける問題サイズが大きいため、エネルギー業界の企業や金融機関などからも引き合いがあるという。

 NECは国内外での評価やNECフィールディングと実施するPoCの成果を受けて、量子コンピューティング技術を活用して企業の課題解決を後押ししていく。まずは物流業界や交通機関、小売業、自社で物流網を抱えている製造業といったモノを動かす業務に焦点を合わせていく。加えて製造業で効率の良い生産計画を立てる場面や定期的な人事異動の最適化など、至るところに存在する組み合わせ最適化問題に取り組むことも視野に入れている。併せて、顧客の要望に応じてより柔軟な価格で提供できるよう検討を進めている。

photo NECが量子コンピューティング技術で取り組む分野(クリックで拡大)

 最適化問題を解く上で、NECの技術や経験とSX-Aurora TSUBASAというベクトルマシンのスペックは大きな力になる。NECはNEC Vector Annealingサービスをはじめとして、顧客のニーズに応じたさまざまなサービスを提供している。最適化問題を解くことで自社の課題解決や業務改善につなげたいと考える読者は、NECを頼ってみてはいかがだろうか。

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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia NEWS編集部/掲載内容有効期限:2022年3月31日

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