“AI検索”で埋もれた社内データを楽々発見 業務効率化に挑むパーソルキャリア 「ナレッジマイニング」に寄せる期待

» 2022年03月18日 10時00分 公開
[PR/ITmedia]
PR

 今、自社内に蓄積されたナレッジを生かして、新しい価値を創出する取り組みに企業の期待が高まっている。これまで未活用だった過去の文書や資料、従業員の企画やアイデア、個人のノウハウをうまく活用することで、会社の資源にしたり業務効率化につなげたりできる。

 転職サービス「doda」を提供する人材サービス大手のパーソルキャリアも、ナレッジの活用に注力している企業だ。同社は“AI検索”を使って社内情報を活用する「ナレッジマイニング」で、これまで数カ月かかっていた社内の稟議(りんぎ)や新規企画の審議をスピードアップする取り組みを進めている。その仕組みの基礎はなんと3日間で築き上げた。

 ナレッジマイニングの利点は何か。なぜ3日間で基礎的な開発を行えたのか。パーソルキャリアを取材して見えてきたのは社内の資産を最大限に活用する理想的な取り組みだった。

毎月100件のコンプライアンス相談 過去事例の検索が業務負担に

 パーソルキャリアが手掛ける人材サービス業は顧客の機微な情報や個人情報を扱うため、法令や社会的規範、社内規定の順守といったコンプライアンス面に細心の配慮を払っている。そのため、事業部門が立案した新規企画を法務面や情報セキュリティ面から審議するフローが確立している。

photo パーソルキャリアの奥村祐司氏(コーポレート本部 コンプライアンス推進部 情報セキュリティG エキスパート)

 コンプライアンス部門に寄せられる相談件数は毎月約100件に上る。迅速に回答できるものもあれば、審議に半年〜1年かかる案件もある。「審議完了までの平均的な目安は3カ月以内ですが、案件数に対して人手が追い付いておらず日々膨大な審議業務をこなす必要があります」――こう顔を曇らせるのは、案件管理を担当するパーソルキャリアの奥村祐司氏(コーポレート本部 コンプライアンス推進部 情報セキュリティG エキスパート)。

 審議では過去の類似事例を調査して判断の材料にすることが多い。しかし参照すべき情報はファイルサーバに保存した「Word」「Excel」などのOfficeファイル、メールのやりとり、ファイル共有ツール「Microsoft SharePoint」といった具合に広範囲に及ぶ。3カ所にまたがった情報を検索するため、審議担当者は非効率な作業を強いられていた。

“AI検索”のナレッジマイニング 全文検索との違いは?

photo パーソルキャリアの柿田一氏(テクノロジー本部 デジタルテクノロジー統括部 デジタルソリューション部 リードエンジニア)

 こうした非効率な作業をテクノロジーの力で改善するため、担当者が欲する情報を効率よく検索する仕組みを構築するプロジェクトが動き出した。ここでナレッジマイニングの活用を推進したのが、パーソルキャリアの柿田一氏(テクノロジー本部 デジタルテクノロジー統括部 デジタルソリューション部 リードエンジニア)だった。

 ナレッジマイニングは、AIを活用した検索機能を指す。膨大な量のファイルやデジタルコンテンツをAIで学習して、必要なデータや関連性の高いファイルを素早く効率的に検索可能にする。これにより、社内に埋もれていたデータをナレッジとして活用できるだけでなく、情報同士のつながりを分析することも可能だ。

 一般的な全文検索は検索ワードに一致したかどうか順不同で判定する上、同じファイルのバージョン違いも全て表示することがある。一方でナレッジマイニングは最新バージョンのファイルを上位にする、関連度順で表示するといった使い勝手の良さが特長だ。「例えば『機械学習』と検索した時、全文検索なら『機械』『学習』など単語の一部だけヒットしたファイルも表示してしまいます。『機械学習について書かれたファイルを探したい』という検索者の意図は、全文検索では実現できません。これがAIを生かしたナレッジマイニングの強みです」(柿田氏)

「検索システム開発は内製したい」 そこでハッカソンが最適な理由

 ナレッジマイニングの仕組みづくりを検討していた柿田氏が、Microsoftのクラウド検索サービス「Azure Cognitive Search」を見つけて採用を決めた。検索対象がOfficeファイルやOutlookなどMicrosoft製品中心だった点もAzure Cognitive Searchを選んだ理由の一つだ。

 使うサービスが決まったところで、Azure Cognitive Searchの知見を持つオルターブース(福岡県福岡市)にナレッジマイニング開発を相談。ただしシステム開発は内製にこだわった。「会社として内製での開発力強化に舵を切っており、コストを抑えつつ短期間で使い始められるクラウドのメリットを最大限に享受するためにも、外注は当初から選択肢にはありませんでした。さらに今回は作って終わりではなく、AIの精度向上など開発後の運用も必要なので、社内にノウハウを残す意味でも内製を重視しました」(柿田氏)

 オルターブースは内製を軌道に乗せる手法としてMicrosoftが推進するハッカソンプログラム「Azure Light-up」を提案。Azure Light-upは実際にAzureを触りながら、最短3日間でモックアップ作成やPoC実施まで到達できる。

photo オルターブースの松村優大氏(業務執行役員 / Chief Technical Architect)

 「内製化というテーマがあったので、通常のシステム開発のようにわれわれで構築した完成物を顧客に渡す方法は除外しました。パーソルキャリアのエンジニアと共に開発を進めることで、Azureのスキルを身に付けながら開発、実装、運用のステップを踏めると考えました。この目的にはAzure Light-upが最適でした」――こう振り返るのは、オルターブースの松村優大氏(業務執行役員 / Chief Technical Architect)。

Azure Light-upを実施 3日間で多くの成果

 こうして、Azure Light-upの実施が決定。事前に松村氏が課題整理やゴールの設定、開発環境の準備を行い、2021年12月22日から3日間の日程で開催した。参加者はパーソルキャリアのエンジニア3人とオルターブースの4人。リモート環境での実施も可能で、今回も一部はリモートで行った。

 Azure Light-upでは4つのゴールを設定して開発にチャンレンジした。

  1. オンプレミスのサーバ上にあるファイルを横断的に検索して、過去事例から必要な情報を取得する
  2. 過去の類似事例の担当者名を検索可能にする
  3. 検索結果の表示時の利便性向上(表記揺れの自動検出、複数のバージョンがある場合に備えた日付でのソート機能)
  4. パーソルキャリアの社員のみ利用可能にするための認証基盤の構築

 3日間のAzure Light-upを通して4つのゴールを無事に達成。開発したのは、オンプレミスのサーバ内にあるファイルと、SharePoint Onlineで管理しているコンプライアンス申請書を検索するシステムだ。より使いやすいシステムにするため、今後はゴール3の利便性向上を追求していく。

検索対象はオンプレミスのサーバ内 クラウドサービスで検索する方法

 システム構築に当たって、まずオンプレミスのサーバ上にある検索対象のファイルを、クラウドストレージ「Azure Blob Storage」に登録してインデックスを作成し、クラウドサービスで検索可能な状態にした。利用者はAzureのコンテンツ配信サービス「Azure Front Door」を介してAzure Cognitive Searchを使い検索する。VPN経由で自宅からの接続にも対応。利用者の検索操作は「Azure Log Analytics」で履歴を蓄積して、今後のアップデートに生かす。

 このシステムで注目すべき点がユーザー認証だ。情報セキュリティやプライバシー保護の観点からコンプライアンス部門の担当者以外のアクセスを制限したい。そこで、従業員の「Microsoft 365」アカウントを活用して、ID管理サービス「Azure Active Directory」を取り入れることでユーザー認証を可能にした。

photo 開発した検索システムの構成(クリックで拡大)

正式な実装はまだ それでも期待は膨らむ

 今回開発したシステムはまだ正式な実装前だが、パーソルキャリアの期待は大きい。従来のように検索にヒットした順で表示するのではなく、関連性や優先度順に並べられるだけでも作業を効率化できると奥村氏は喜ぶ。今まではファイルの保存先別に検索をしていたが、1つの検索ボックスに集約したことで生産性も向上すると柿田氏は話す。

 Azure Cognitive Searchは検索対象を幅広く設定できる。新しくナレッジ共有データベースを作らずとも、既存の仕組みのまま横断的かつ網羅的に検索できるようになる点もメリットだ。検索システムを使いながらチューニングすることで検索精度を向上できるため、さらなる効率化も期待できる。

 開発時の肝だったAzure Light-upとオルターブースの支援についても、柿田氏は「最高の体験だった」と評価する。実際にAzureを触りながら試行錯誤できるため、座学の勉強会と比べて知識やスキルが身に付く速度が違う。「エンジニアは自分の手を動かしてものづくりをしたいと思っています。オルターブースは、そういった“エンジニアマインド”をくすぐる説明や誘導がうまかったので、楽しみながら3日間取り組めました」(柿田氏)

※オルターブースが提供するLight-upについてはこちらで詳しく紹介しています。

photo Azure Light-upの最中、参加者全員でトラブルシューティングに挑む様子

“頭の中の情報”を拾い上げる仕組みづくりを目指す

 Azureを活用して検索システムを開発した柿田氏に、Azureの評価を10段階で聞くと即答で「10」と返ってきた。「使いやすさは身を持って分かっているので、この時点で評価は『8』です。残りは実際に使って欲しい情報が上位に表示されれば、最終的な評価は『10』になります」(柿田氏)

 マルチクラウドを掲げるパーソルキャリアでは、クラウドサービスのいい部分をきちんと評価して、今後の活用を検討していく。Microsoftにも“ワクワクするようなサービス”の開発を期待していると柿田氏は話す。

 今回の開発プロジェクトを振り返って、この成功を足掛かりにして今後も新しいテクノロジーを活用した課題解決を進めていきたいと奥村氏は話す。AIを活用したナレッジマイニングの可能性を徹底的に追求したいと語る柿田氏は、企画立案者が描くマインドマップの画像を検索対象にして、個人の頭の中で考えていることも情報として拾い上げる仕組みを考えている。成功すれば、画期的な企画の考案や新しいコラボレーションの実現といった化学反応を誘発できると見込む。

 パーソルキャリアの場合は検索業務の効率化がメインだったが、ナレッジマイニングを活用すれば社内の情報を一括検索して業務に生かす、埋もれていた情報を会社の資産として再活用するといった使い方も可能。こうしたナレッジマイニングのメリットを享受する上で、Azure Cognitive Searchは大きな助けになる。

 社内のファイル管理や検索にかかる手間を減らしたい、蓄積した過去の資料や情報を活用したいと考えているが、その方法が分からなかった人はナレッジマイニングに注目するといいだろう。実際にシステムを開発するとなれば、オルターブースやMicrosoftが課題に合わせて必要な支援をしてくれる。まずはMicrosoftに相談してはいかがだろうか。

photo 左からパーソルキャリアの柿田氏、奥村氏、オルターブースの松村氏

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.


提供:日本マイクロソフト株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia NEWS編集部/掲載内容有効期限:2022年3月27日