「データという金脈を掘り当てた」 三井物産が挑むデータ活用を追う! PoCの結果は「経営陣も注目のインパクト」

» 2022年05月31日 10時00分 公開
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 企業はいま“VUCA時代”の真っ只中にいる。AIなどテクノロジーの進歩や環境問題、国際情勢の動向といった急激な変化を前に、世の中の変動性(Volatility)、不確実性(Uncertainty)、複雑性(Complexity)、曖昧性(Ambiguity)が増した。こうした状況でも企業が成長を続けようにも、従来のやり方は通用しない。

 この課題は企業規模の大小に関係なく、きちんと向き合う必要がある。こうした考えで早くから行動したのが、大手総合商社の三井物産だ。経験知に基づいた業務から一転し、データに基づく業務とそれを指揮するデータドリブン経営に舵を切った。

 同社はDX(デジタルトランスフォーメーション)を掲げた「DX総合戦略」を推進する上で欠かせないデータ分析基盤の構築をテーマにPoCを実施。現在は“データ分析の民主化”を実現すべく数々の課題を乗り越えながら社内の横展開や人材育成に奔走している。

 今回は、三井物産がなぜデータ活用に踏み切ったのか、その狙いと取り組みを深掘りする。同社のDXを推進するデジタル総合戦略部のメンバーと、データ分析基盤の構築をサポートしたMicrosoftのメンバーに取材した。

成長を続けるためのDX 三井物産のリソースをフル活用して推進する

 三井物産は、その前身である旧三井物産の時代から活躍している総合商社だ。事業ポートフォリオを見ると、金属資源やエネルギー関連ビジネスの利益貢献が盤石な経営基盤を支えていると分かる。その一方でこのポートフォリオがDXを進める最大の理由でもある。

* 旧三井物産(1876年設立)は1947年に解散しているため、現在の三井物産とは法人格が異なる。

photo 三井物産の鈴村良太氏(デジタル総合戦略部データドリブン経営戦略室長)

「VUCAの時代を迎えた現在、これまで中核といわれていた事業分野に加え、他の分野への取り組みも加速させる必要があります。そうした取り組みを下支えする重要な要素の一つがDXです。デジタルを使ってビジネスそのものに革新をもたらすことを目指してDX総合戦略を策定しました」――三井物産の考えを説明するのは鈴村良太氏(デジタル総合戦略部データドリブン経営戦略室長)だ。

 こうした危機感に背中を押され、同社は早くからDXに取り組んだ。2017年5月には他の商社に先んじて最高デジタル責任者(CDO:Chief Digital Officer)を設置。2020年4月に最高情報責任者(CIO:Chief Information Officer)と統合してCDIOにした。さらに、全社の体制を見直してデジタル関係の部署を整理・統合し、DXを進めやすい布陣を組んだ。そしてDX総合戦略を策定し、現在進行系で取り組んでいる。

 DX総合戦略の最大のポイントは、ビジネスモデルの変革といった新しい価値の創出を目指している点だ。それを実現するために三井物産のリソースをフル活用する。商品知識や営業力、ビジネスの知見、物流機能、法務、人事、プロジェクトマネジメントといった総合商社特有のオペレーションテクノロジー(OT:Operation Technology)とデジタル技術の融合でDX推進を狙う。

photo 三井物産の柳澤透氏(デジタル総合戦略部ユーザーエクスペリエンス改革室兼データドリブン経営戦略室室長補佐)

 さらに、三井物産は500社超の関係会社を含めると幅広い事業領域を網羅しているため、この強みを生かしてあらゆる分野でDXに関する知見を活用し、DXを推進できると三井物産の柳澤透氏(デジタル総合戦略部ユーザーエクスペリエンス改革室兼データドリブン経営戦略室室長補佐)は話す。


photo 三井物産が進めるDX総合戦略(クリックで拡大)

データドリブン経営への転換 企業文化としてのDXの定着を目指す

 DXを進める三井物産は、その一環でデータドリブン経営への転換を図っている。そこで掲げたのが次の4つの「Vision」(ビジョン)だ。

  1. データによる迅速かつ正確な意思決定
  2. データの共有・活用によるプロセス改善
  3. データは見るものではなく使うもの
  4. データは会社の資産(脱・データの私蔵)

 「4つのVisionを基にしたデータドリブン経営の知見を培った従業員を、次世代型の経営人材として輩出してDXを企業文化として定着させることを最終的なゴールにしています」(鈴村氏)

 このVisionを体現すべく、一部の現場では20年からデータの可視化や活用を後押しする「Microsoft Power BI」を導入し、いまでは毎月およそ数百のダッシュボードが作成または更新されており、データの共有・活用が着実に進んでいる。

 現場でデータ活用に着手する従業員が増える中、本格的なデータ分析を担う人材教育にも力を入れている。20年4月には全社員必須の研修「Mitsui DX Academy」を始めた。

約6カ月間のPoCを実施 「経営陣も注目するほどのインパクト」

 データドリブン経営を実践するには、データ分析基盤の構築が不可欠だ。三井物産は事業部が持つ各種課題の解決を検討する中で、Microsoftの内製化支援プログラム「Data Hack」の採用を決めた。実現可能性や効果の検証に加え、人材育成や内製化に役立てるのが狙いだ。

photo Data Hackの目的(クリックで拡大)

 PoCでは実際に事業テーマを1つ選定して、Microsoft Azure上のデータ分析サービスである「Azure Synapse Analytics」や機械学習プラットフォーム「Azure Machine Learning」を使って効果を検証した。選んだ事業テーマは、Mitsui DX Academyを受講した事業部の従業員が出した「このテーマでAIを活用できないか」という相談が基になった。人材育成の効果が早くも出始めていると柳澤氏は語る。

 今回のData Hackの工程はデータ準備、基礎集計、データ加工、モデル作成・評価、分析結果の可視化・解釈という流れだ。最初にテーマを決めて背景や目的を整理し、データ分析の結果をどのようにビジネスに生かすか事業部の担当者と議論をして現実的なレベルに落とし込んでいった。その後、関係部署と連携してPoCで使うデータ集めを進めた。

photo Data Hackの各工程でMicrosoftのサービス(クリックで拡大)
photo 入村隼斗氏(デジタル総合戦略部DX第二室兼DX人材開発室)

 データ分析の要であるデータの収集は、Data Hack開始後も続いた。Microsoftのアドバイスを受けながらデータを加えつつ、Power BIで基礎集計をしてデータの傾向をつかんだと三井物産の入村隼斗氏(デジタル総合戦略部DX第二室兼DX人材開発室)は説明する。

 Data Hack終了後、まだ予測モデルの精度を高める余地が残っているためデータの追加や調整を続けているが、その成果は絶大だ。「経営陣も注目するほどのインパクトがありました」(鈴村氏)


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photo Data Hackで実施した取り組みの詳細(クリックで拡大)

データ分析とビジネスの知見が化学反応を起こした

 AIモデルの作成や評価段階では、サポートしたMicrosoftの担当者も目からウロコが落ちることの連続だったと話す。

photo Microsoftの望月美由紀氏(カスタマーサクセス事業本部 データ&クラウドAIアーキテクト統括本部 シニアクラウドソリューションアーキテクト)

 「ビジネス経験の豊かな事業部の担当者でも気付かなかったことが、データから浮き彫りになり、今後の現場投入に期待が膨らみました。現場の担当者は部分的にデータを確認している場合も多く、時系列で見たり別の情報と掛け合わせたりすると違うものが見えてきます。データ分析で分かったことを事業部側に伝え、それを現場の担当者が解釈する工程が印象的でした。データ分析とビジネスの知見が合体して化学反応を起こした瞬間です」――こう振り返るのはMicrosoftの望月美由紀氏(カスタマーサクセス事業本部 データ&クラウドAIアーキテクト統括本部 シニアクラウドソリューションアーキテクト)だ。

PoCで「自社に眠るデータという金脈を掘り当てた」

 PoCでデータ分析をする中でさまざまな気付きも生まれた。一つは、私蔵されていたデータを活用することで、新たな価値を発見できると分かったことだ。「自社の内部に眠るデータという金脈を掘り当てたような感覚です」(柳澤氏)

photo Microsoftの永田祥平氏(クラウドソリューションアーキテクト)

 もう一つは、分析結果を再検証できなくなると懸念していた、AI活用によるブラックボックス化が杞憂(きゆう)に終わったことだ。「Azure Machine Learning」にはAIモデルの予測にどの変数が影響を与えたのか、どのようなデータを軸に判断を出力したのか可視化できる機能があるとMicrosoftの永田祥平氏(クラウドソリューションアーキテクト)は紹介した。

プログラミング経験は不要 PoC参加者は目を見張る成長を遂げた

 大好評に終わったPoCだが、苦労したこともあった。今回参加した三井物産のメンバーはいずれもAzureの経験がなかったため、データの整理など簡単な作業にハードルを感じることもあった。しかしその壁はMicrosoftの丁寧な説明で克服できたと入村氏は話す。

 柳澤氏が評価したのはGUIで操作できる点だ。プログラミングの経験が無くてもデータを分析でき、Data Hack終了時にはメンバー全員が高い分析スキルを身に付けられたと誇らしげに話す。

photo Microsoftの岩淵健氏(クラウドソリューションアーキテクト)

 参加メンバーの成長を実感したのは当人たちだけでなく、Data Hackを引っ張ったMicrosoftもだった。Microsoft側が用意した課題やハードルを乗り越え、毎回予定より先の部分をレクチャーすることが多く、スキルの習得スピードに驚いたと岩淵健氏(クラウドソリューションアーキテクト)は明かした。

PoC参加メンバーが直面した、大組織でのアジャイル開発の難しさ

 今回Azure上に構築したデータ分析基盤は、アジャイル開発の可能性を検証するためにゼロから作ったData Hack用の基盤だ。現在はPoC参加メンバーを中心に、本格的な稼働と社内展開に向けて関係各所と調整を進めている。

 しかしスピード重視のアジャイル開発と、組織として品質を担保した運用を行うという2つのはざまでメンバーは難しさを感じていた。組織としての永続的な運用を考慮した場合、いち担当がクラウド上にシステムを構築して、運用を始めるわけにはいかない。すでにある社内の運用手順に合わせるために、運用担当部署に構築をお願いすることになる。

加えて、属人的な基盤運用からの脱却も難点だ。社内に広く導入する場合、分析基盤の使い方や格納するデータやリソースの命名規則などを定めた運用ルールが必要になる。今回のプロジェクトは初回ということで、既存の基盤運用ルールを確認しながら、データ活用の観点から使い勝手や分かりやすさも意識して新ルールを整備していったため時間がかかったが、今後のデータ活用作業の効率は各段に上がるだろうと入村氏は明かした。

専門的なナレッジのサポートを受けて内製化を進める

 データ分析基盤を含め、各種システムの内製化を見越してData Hackを選んだ三井物産は、Microsoftなど外部の専門的な知見を借りつつ、社内で自走可能なチームを育てる予定だ。

photo Microsoftの武田雅生氏(クラウドソリューションアーキテクト)

 それをサポートするMicrosoftとしても、主体はあくまで三井物産のメンバーという認識を持っている。従来のようにシステムベンダーに丸投げするのではなく、Data HackやMitsui DX Academyで学んだ従業員たちが同社のデータドリブン経営を引っ張るエンジンになるとMicrosoftの武田雅生氏(クラウドソリューションアーキテクト)は期待を寄せる。

 データドリブン経営を実現するには、確かなデータ分析基盤の構築と事業を担う人材の育成が重要だ。その先に見据えるものを鈴村氏に聞いた。「これまで三井物産は従業員の勘と経験と度胸で歩んできました。これらがないと成功できません。勘や経験に裏打ちされた判断をデータで裏付けるために、データの信頼度を上げて事業成功につなげることが私たちの仕事です」(鈴村氏)

 三井物産は歴史あるビジネスの変化を恐れず、現場の力とデータの力を融合して付加価値の高いビジネスを生み出す一歩目を踏み出した。その歩みを支えるのは、Data Hackで専門スキルを身に付けた人材と、Azureで構築したデータ分析基盤だ。今後の三井物産の発展に期待が高まる。

 そして、DXを進める上でその方法に悩んでいる人や、データ分析基盤を作りつつ社内にノウハウを蓄積したいと考えている人は、Microsoftに相談してみるといいだろう。Data Hackをはじめ、目的に合ったサポートを提供してくれる。

photo Data Hackを進めた三井物産のデジタル総合戦略部(左側3人)と、支援したMicrosoftのメンバー(右側4人)

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