ヤマトで遂げる“データサイエンスの本懐” 約22億個の配送データを分析、そこから経営に貢献 その働き方をのぞく

» 2022年06月06日 10時00分 公開
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 「クロネコ」のマークを付けたトラックで街中を走り、荷物を届ける――そんなイメージがすぐ浮かぶほど、物流業界でトップクラスの地位を築いたヤマト運輸。同社はいま、データサイエンティストやエンジニアを仲間に加えようと積極的に動いている。

 これまで46年間「宅急便」を中心に事業を手掛けてきた同社はいま、次世代の物流企業に進化しようと奮闘している。そのために、取り扱ってきた大量の荷物と配送実績から生まれる膨大なデータの活用を進めている。データ基盤の整備やそれを使う人材の確保と育成、さらには現実世界をデジタル空間に再現し、シミュレーションするデジタルツインの構築も視野に入れている。

 データ活用に本腰を入れたヤマト運輸は、いま何に注力して、今後はどこを目指すのか。同社のデータ活用をけん引し、データ・ドリブン経営を推進するヤマト運輸の中林紀彦氏(執行役員 DX推進担当)と、2人のデータサイエンティストに話を聞いた。

【前編はこちら】

配送データ活用で、3カ月先の業務量を予測――ヤマト運輸が目指すDX 物流会社のイメージを覆す成果とは

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 ヤマト運輸は2021年度に、約22億個の荷物を取り扱った。その宅急便を支えるのが、約22万人の社員や約5万台の車両といった物理的な配送ネットワークだ。同社は、こうした経営資源から集めたデータを活用することで、データ・ドリブン経営を進める狙いだ。

 データ・ドリブン経営の中核が、新たに整備したデータ基盤「YDP」だ。繁忙期の配送を支えたり、最大3カ月先の需要を予測したりとすでに成果を上げている。前編では、その成果を深掘りする。


アナログな物流企業の在り方を、データの力で変える

 ヤマトグループは1919年にトラック4台で創業した。それが現在は約5万4000台の車両に増え、2021年度の取扱荷物量は約22億7000万個を記録した。会社の規模が大きくなり物理的な経営資源が多くなったことで、配送コストの削減や業務の効率化が急務だ。

 ヤマトグループは2020年1月に、中長期の経営のグランドデザインである経営構造改革プラン「YAMATO NEXT100」を打ち出した。3つの事業構造改革と3つの基盤構造改革を掲げ、目指すべき未来を描いた。「宅急便のDX(デジタルトランスフォーメーション)」「サステナビリティの取り組み」などの目標を掲げる中で、今回は「データ・ドリブン経営への転換」を明言している点に注目したい。

photo ヤマト運輸の中林紀彦氏(執行役員 DX推進担当)

 「データ・ドリブン経営で目指すのは、担当者の経験と勘による配送現場の業務を、データに基づいた客観的なオペレーションに変えることです」(中林氏)

 ヤマト運輸の配送データや経営資源から得られる情報を分析し、配送現場の業務改革や経営の意思決定に活用する。中小事業者も多い物流事業は、旧態依然としたアナログな企業が多い。しかし、だからこそデータやデジタルの力で企業の在り方そのものを大きく変えるポテンシャルを秘めている。

約22億個の荷物を配送 「データを生かさないともったいない」

 データ・ドリブン経営を進めるため、まずはデータ基盤の構築から始めた。これまで配送オペレーションを支えてきたデータ基盤はクラウドとの親和性が低く、現場から届く大量のデータを素早く分析したり、リアルタイム性を持たせたりするには力不足だった。さらに、ヤマト運輸が持っているデータは構造化したデータだけでも数百TB(テラバイト)に上るため、分析が間に合わず活用が進まない課題もあった。

photo ヤマト運輸の井口裕太郎氏(デジタル戦略推進部 デジタル開発運用6グループ)

 「2021年度は約22億個の荷物を取り扱っており、相当量のデータを保有しています。それを生かし、データ基盤を整えることが将来に役立つと考えています」――こう話すのは、データ基盤の開発や運用を手掛けるヤマト運輸の井口裕太郎氏(デジタル戦略推進部 デジタル開発運用6グループ)だ。

 こうした背景からヤマト運輸はデータ基盤「Yamato Digital Platform」(YDP:ヤマトデジタルプラットフォーム)を構築した。YDPは「Microsoft Azure」とデータ分析サービス「Azure Synapse Analytics」を土台にしている。Microsoft Azureを使ったことで、膨大なデータを滞りなく処理できた。

 データの分析結果はBIツールで可視化している。データサイエンティストなど専門知識を持つ人だけでなく、事業部門の担当者や配送現場でも活用できるようにすることで、組織全体の改革につなげる狙いだ。

データ基盤の構築に成功 「データ分析なしでは現場業務は回らない」の声も

photo ヤマト運輸の松本尚貴氏(デジタル戦略推進部 デジタル企画3グループ ミドルエキスパート)

 YDPはすでに成果を上げている。2021年度は300件以上の分析案件を実施したことで、基盤の完成度がさらに高まっている。さらにデータを使う事業部門の成熟度も上がっており、いまでは「データ分析なしでは現場業務は回らない」と話す人もいるとヤマト運輸の松本尚貴氏(デジタル戦略推進部 デジタル企画3グループ ミドルエキスパート)は説明する。

 具体的に取り組んだことでは、荷物の配送状況を30分ごとに更新し、可視化するダッシュボードを作成した。ほぼリアルタイムに配送状況を把握し、社員やトラックを再配置できるため、配送の効率化をできるようになった。

 さらに、社員やトラックの手配も効率化した。従来は担当者の経験と勘などを基に、1カ月先の業務量を予測して手配していた。それがYDPを活用することで、過去の取扱荷物量や大手EC事業者のセール情報などを基に機械学習を行い、最大3カ月先の業務量を予測して経営資源を最適配置できるようになった。

 事業部門からの反応は上々だ。予測モデルを使うことで、1カ月先の人員手配や繁忙期の対応といった手間を省けたため、現場の担当者がYDPやBIツールを喜んで使っていると松本氏は明かす。

デジタル人材が活躍できる組織体制を作る

 こうしたヤマト運輸の改革を担うのが、データサイエンティストやエンジニアたちだ。データ・ドリブン経営は、データ基盤だけでは成立しない。デジタル基盤を運用し、分析結果を解釈して事業部門と一緒に改革を進める組織体制が不可欠だ。そこで同社は、デジタル人材のスキルを生かせる4階層の体制に変更した。

 第1に、データ基盤の設計や運用を担うチームがデータ・ドリブン経営の下地を固める。第2に、データマネジメントチームがグループ各社からデータを集め、整理して基盤に格納する。さらに事業部門の要望に応じて必要なデータを探したり、アドバイスしたりするデータコンシェルジュの役割も担っている。第3に、ガバナンスチームが全体の監督や情報セキュリティを手掛ける。そして第4に、クラウド活用を推進するCCoE(Cloud Center of Excellence)チームが部門横断でデータ活用の支援や推進を担当している。

 4階層のチーム編成から分かるように、ヤマト運輸はデジタル人材と事業部門の関係を密接に絡めることでデータ・ドリブン経営の深化を進めている。経営層がDXやデータ活用を掲げて終わりではなく、デジタル人材が生み出した価値を現場まで浸透させる仕組みを構築しているわけだ。

データサイエンティストが「事業部の下請け」にはならない

 事業部門とデジタル人材のつながりを強化したことで、事業部門の先にある顧客企業や利用者との距離も縮まったと中林氏は考えている。実際に、井口氏はデータ基盤の構築を進める中で、顧客企業に近づいたように感じたと話す。一般的には社内で完結する業務だが、ヤマト運輸では社外を見通しながら働ける。

 事業部門に入り込み、業務量の予測モデルやダッシュボードの作成を手掛ける松本氏も、自身の活躍を実感していると喜びを表す。「事業部門の下請けになるのではなく、良い提案をすれば取り入れてくれます。私の業務が現場のオペレーションに役立っている実感を持てました」(松本氏)

 経営視点では、デジタル人材の能力を最大限に生かすため、フラットな組織作りを意識していると中林氏は説明する。例えばチャットツールを使って、同僚だけでなく上司や部下との気軽な意見交換や、他部署との連携を促進している。またテレワークを導入して柔軟な働き方を後押ししている。

クラウドの最新動向をキャッチアップ 「イケてる環境」で働く

 デジタル人材が仕事に喜びを感じるのは、事業部門の役に立っているという実感だけではない。松本氏や井口氏が口をそろえて評価するのが、技術的な興味関心や成長欲を満たせる点だ。始動したばかりのYAMATO NEXT100に参画して、ヤマト運輸が持つ膨大なデータを活用できる機会はめったにない。

 仕事をする中で、日本マイクロソフトの持つ知見を学べる点も特長だ。YDPではデータ分析や予測モデルの作成などに機械学習を使っており、機械学習の開発と運用を効率的に進めるための「MLOps」とMicrosoft Synapse Analyticsを掛け合わせた特殊な環境を用意した。国内外で前例が少ない挑戦的な取り組みだったが、日本マイクロソフトが米Microsoftと連携してノウハウをヤマト運輸側に伝えた。

 日本マイクロソフトがヤマト運輸に入り込み、しっかりとした支援体制を取っているため、何か疑問があればすぐに詳細についての解説を聞ける。未踏分野への挑戦を技術面でサポートしてくれる環境があると井口氏は胸を張る。

 「AzureやMicrosoft製品に関する勉強会も頻繁に開いてもらっていて、最新動向をキャッチアップできます。また日々アップデートされるクラウドサービスをすぐ試せるなど、『イケてる環境』で常にスキルを磨ける職場だと思います」(中林氏)

ヤマト運輸がデジタル人材に寄せる期待に応える

 物流事業を手掛ける非IT企業だったヤマト運輸がデジタル人材を募集する背景には、次世代の物流企業に生まれ変わろうとする挑戦があった。中林氏や松本氏、井口氏らデータサイエンティストやエンジニアが同社を高く評価するように、ヤマト運輸も彼らに期待している。

 その期待に答えるべく、中林氏が次に挑戦するのはデジタルツインの構築だ。荷物の配送を担うセールスドライバー、車両、拠点から収集したデータを基に、現実世界と同じ条件で最適な配送ルートや業務の効率化をシミュレーションして、それを現場業務や経営改革に生かす。また松本氏は、社内だけでなく委託先など社外にもデータ活用を広げたいと考えている。さらに井口氏は、現在は30分ごとのデータ更新の頻度を上げ、リアルタイムに近づけることを目指している。

 Microsoftの先進的なクラウド環境を用意し、データサイエンティストらのチャレンジを応援できるのは、同社の体力と組織全体の理解があるからだ。ヤマト運輸の挑戦に参加したい、自身のスキルを生かしたい、知見を深めたいと考えている読者はぜひ、ヤマト運輸の扉をたたいてほしい。きっと満足できる環境で働けるはずだ。

photo 中央がヤマト運輸の中林紀彦氏(執行役員 DX推進担当)、右が井口裕太郎氏(デジタル戦略推進部 デジタル開発運用6グループ)、左が松本尚貴氏(デジタル戦略推進部 デジタル企画3グループ ミドルエキスパート)

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