「この世界にARの魔法をかける」 Nianticが開発者と共に歩む未来 次世代のAR技術「Lightship VPS」の役割は?

» 2022年07月22日 10時00分 公開
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 「私たちが暮らすこの世界に、ARの魔法をかける」――こんな心躍るメッセージを発したのは、Nianticの河合敬一氏(Chief Product Officer)だ。日本で初開催となるNianticのデベロッパー向けイベント「Lightship Summit Tokyo 2022」(2022年6月24日)で、同社はARの現在地を一歩先に進める技術を紹介した。そして開発者たちに「一緒に未来を考えよう」と呼びかけた。

 Nianticは『Ingress』『Pokemon GO』といった、ARと位置情報を活用して現実世界を拡張するコンテンツを生み出してきた。そこで培ったノウハウや技術を生かし、AR開発者向けプラットフォーム「Lightship」を提供している。そして22年5月、Nianticの技術を進化させ、ARの新境地を開拓する技術「Lightship VPS」をリリースした。

 サンフランシスコで開催した「Lightship Summit」のメイントピックであるLightship VPSを、日本の開発者にお披露目する場が今回のイベントだ。このイベントレポートでは、Lightship VPSで何ができるのか、開発者にどのようなメリットがあるのかといった内容を掘り下げて、Nianticが目指すARの姿を描き出していく。

photo 壇上で講演するNianticの河合敬一氏(Chief Product Officer)

AR活用の先端を走るNiantic 新たなLightship VPSとは

 日本におけるARは09年リリースの「セカイカメラ」をきっかけに、GPSとカメラを内蔵し、フィーチャーフォンに比べて画面が大きいスマートフォンの利点を生かした機能として普及していった。

 そして13年、GPSを使ったリアルタイム陣取りゲームの『Ingress』が世界的にヒットした。続く『Pokemon GO』(16年)は、現実世界でポケモンをゲットできるとして国民的なブームになった。『Pikmin Bloom』(21年)では、ピクミンが身近に存在すると思わせるようなAR機能が話題を呼んだ。

測位の誤差は数cm Lightship VPSで「リアルワールド・メタバース」を実現

 ARの魅力を多くの人に届けてきたNianticが新たに提供するLightship VPSは、現実世界にデジタルを重ね合わせて彩るコンテンツ、すなわち「リアルワールド・メタバース」(現実世界でのメタバース)を実現するためのサービスだ。

 VPSは「Visual Positioning System」を指す。VPSを使えば、スマホのカメラで写した景色を基に、位置情報を正確に測定できる。動作するのは「ウェイスポット」(Wayspot)と呼ばれる対象の地点だ。現実世界にあるランドマークなどを写した映像をコンピュータに取り込み、3Dマップ上で「この位置ではこう見える」といった情報を算出して現在地や向きを割り出す。

 GPSだと屋内やビルが多い都心で位置がずれたり、身体の向きが間違ったりすることも多い。しかしLightship VPSは誤差が数cmという精度で測位をし、数秒もかけずに任意の場所にARコンテンツを表示できる。

 「Lightship VPSは、Nianticが長年研究してきたARの新しい地平を開くものです。リアルの世界とデジタルの世界の重ね合わせを実現できるもので、一つ前に進んだと思える技術です」(河合氏)

狙った位置にARコンテンツを表示 東京など日本の主要都市に対応

 次世代のAR体験を構築できるLightship VPSの特長は、測位と方位判定の精度の高さだ。これを生かして「どこに何があるか」「どの角度から見ているのか」といった情報をリンクすることで、狙い通りの位置に数cmの誤差でARコンテンツを表示できる。

 これにより、現実世界を歩きながらカメラをかざせば、AR機能で“リアルの補完”が可能になる。観光案内サービスを例に考えてみよう。ある銅像を説明する場合、従来のGPS情報を使った解説はおおよその位置に紹介文をARで表示していた。Lightship VPSを使えば、銅像の「目」「口」「手」など細かな部分にテキストや映像、CGなどを重ねて表示できる。

photo Nianticのトーリー・スミス氏(Senior Product Manager)

 こうしたAR表示を可能にしたのは、Nianticが独自に作った3Dマップだ。同社のスキャン部隊や有志のユーザーが世界中で数百万の地点をスキャンして作り上げ、現在も更新を続けている。Googleストリートビューのように自動車に搭載したセンサーでデータを集めるのではなく、道路から見えない場所を含む幅広い場所のスキャンデータを集めた。これはARのための3Dマップを作るというNianticの構想に基づいていると、Lightship VPSの開発を率いたトーリー・スミス氏(Senior Product Manager)は話す。

 Lightship VPSはサンフランシスコやシアトル、ニューヨーク、ロンドンといった各国の都市に対応している。日本では東京、大阪、京都、名古屋の一部地域で提供をスタートし、22年中に政令指定都市の主要部をカバーする予定だ。

Lightship VPSの実力は? 試して分かった可能性

 Lightship VPSを活用したARコンテンツの開発はすでに進んでいる。5月の正式リリース前にAR開発キット「Lightship ARDK」のユーザー向けにベータ版を提供しており、100を超える開発者がさまざまなARコンテンツを生み出している。イベントではそれらのデモンストレーションを用意していた。

 まずは漫画「ワンピース」に登場するチョッパーを使ったスマホアプリ「集英社XR」を体験した。アプリを開いてカメラをウェイスポットに向けると、チョッパーが現れて、周囲を歩き回る。重要なのはARマーカーを読み込んでいるのではなく、位置情報に合わせて表示している点だ。スマホを違う場所に向けたり移動したりした後に、もう一度チョッパーの方向にカメラを向けると、寸分の狂いなく同じ位置にチョッパーがいた。Lightship VPSの精度をしっかり体感できた。

photo 集英社XRを試す様子。ウェイスポットの公衆電話型オブジェにスマホを向けると、チョッパーが現れる(クリックで拡大)

 次に試した「Magic Flashlight」は、邪悪な霊に取りつかれたウェイスポットを浄化するゲームだ。スマホで周囲を写しながらアイテムを探し回る。アイテムの位置がずれないので、複数人がそれぞれのスマホを見ながら「ここにアイテムがあったよ!」と声を掛け合って楽しめる。

 アーティストグループのRhizomatiksが開発した「Sequenscape」は、ウェイスポットの周囲に幾何学的なオブジェクトを表示するARコンテンツだった。各オブジェクトから音が鳴る仕組みで、ウェイスポットからの距離によって音が変わる。音色やリズムの設定を変更でき、その設定を周囲の人のSequenscapeと同期してセッションをしているような雰囲気だった。

photo Sequenscapeを試す様子(クリックで拡大)

 ソニーは、新型イヤフォン「LinkBuds」を活用した「FIND SOUND FAIRES」を展示していた。聞こえてくる音を頼りに、スマホをその方向に向けて妖精を探すゲームだ。振動板の中央に穴が空いたイヤフォンの特長を生かし、周囲の環境音を聞きながらプレイできる点はARと親和性が高い。

手軽に高精度なARコンテンツを開発できる エンジニアも絶賛

 デモンストレーションを通して、ユーザー目線ではLightship VPSの魅力をたっぷり味わった。では開発者は、Lightship VPSの可能性をどう考えているのだろうか。

photo デザイニウムの秦優氏(取締役)

 悪霊を払うMagic Flashlightを開発したデザイニウム(福島県会津若松市)は、ARDKの開発に関して高く評価されている。同社の秦優氏(取締役)は、利点として精度の高さを挙げた。ARは表示するコンテンツが少しでもずれると没入感を削いでしまうが、Lightship VPSは誤差が限りなく少ないためARの表示位置をピンポイントに絞れると絶賛する。

photo Magic Flashlightのイメージ。草を表現したAR描写を、オブジェの土台にそろって表示できる(クリックで拡大)

 さらにランドマークなどを独自にスキャンしてウェイスポットを追加し、簡単に3Dマップを作れることが優れていると秦氏は話す。ウェイスポットの追加は現在ベータ版の専用アプリ「Niantic Wayfarer」を使う。スキャンの精度を確認したり、場所にひも付いたコンテンツを共有したりする仕組みも整っており、手軽にARコンテンツを開発できる。

 デザイニウムでは、Lightship VPSを使ったARコンテンツの開発基盤「AR VPS BUILDER for Lightship ARDK」を提供している。ゲームやイベント、広告などさまざまな分野のARコンテンツを、テンプレートを使って短時間で開発可能だ。

 「僕たちのような、昔からARを触っているエンジニアがARコンテンツを作るだけでは盛り上がりません。いろんな方にコンテンツを作ってもらい、AR業界全体が活気づけばいいと思っています」(秦氏)

カメラを向けた瞬間に、コンテンツを表示できる 処理速度の速さが魅力

photo ティーアンドエスの稲葉繁樹氏(取締役社長 エグゼクティブプロデューサー)

 集英社XRを手掛けたティーアンドエス(東京都渋谷区)の稲葉繁樹氏(取締役社長 エグゼクティブプロデューサー)は、スマホで完結できるLightship VPSに優位性を感じていると話す。従来のARやMR(複合現実)のような表現は、外部ディスプレイやMRヘッドセットなどが必要だった。しかしNianticの技術を使えば、スマホのみで済むので、作ったコンテンツをより多くの人に体験してもらえる。


photo ティーアンドエスの小山純市氏(第一開発部)

 エンジニアの小山純市氏(第一開発部)は処理の内容を紹介してくれた。これまでのARコンテンツは周囲のスキャニングに時間がかかったが、Lightship VPSはウェイスポットを写した瞬間にコンテンツを表示できるため、技術的にも表現上も素晴らしいと話す。

 さらにワンピースのチョッパーはかなり小さいキャラクター(人間の身長の2分の1程度)だが、地面を踏んで歩く表現をしっかり描写できるため存在感を演出できると小山さんは評価する。

photo ティーアンドエスの小手川将治氏(社長室事業開発本部 システムエンジニア)

 ARの開発を始めて1年未満という小手川将治氏(社長室事業開発本部 システムエンジニア)は開発しやすさをアピールした。Lightship ARDKの使い勝手がいいため、生まれたアイデアをすぐ実装できるためワクワクすると語った。

 ティーアンドエスが期待するのは「セマンティック・セグメンテーション」機能の精度向上だ。カメラで写した画像内の物体を空、地面、人といった具合に認識して分類する機能で、ARの表現の幅を広げられる。Nianticはここにも全力で取り組む姿勢を示している。

 デザイニウムの秦氏と同じく、稲葉氏が望むのもAR業界の活性化だ。「Lightship ARDKやVPSを使う人が増えるといいです。そうすれば、ARは文化として根付いていきます」(稲葉氏)

「ARの未来を一緒に考えていきたい」 Nianticの思い

 ARを広めたいという思いをNianticも共有している。より多くの人がARを体験できるようにと同社が用意したのは、WebブラウザだけでAR体験できる「WebAR」の開発プラットフォーム「8th Wall」との連携だ。WebARを活用すれば、専用のソフトウェアやアプリを使わずにARを楽しめる。

 試験的なARコンテンツの開発や本番環境への移行といった8th Wallの機能を、月額9.99ドルで利用できる(日本円にも対応)。さらに22年秋をめどに、8th WallにLightship VPSを組み込んだパブリックベータを実施できる見込みだ。

 Nianticは、Lightship VPSや8th WallによってARの表現と可能性を一気に広げた。今後、クオリティーの高いVRコンテンツが増えて、私たちの日常を拡張してくれるだろう。

 「開発者の皆さんと、ARの未来やリアルワールドとコンピューティングの未来を一緒に考えていきたいと思っています」――Nianticの河合氏は、イベントの最後をこう締めくくった。まずはLightship VPSを使ってみて、同社が描く未来に触れてほしい。そして次世代のARコンテンツを作り、一緒に未来を創り上げてみてはいかがだろうか。

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提供:Niantic International Limited
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia NEWS編集部/掲載内容有効期限:2022年8月5日