西日本最大級のデータセンターに潜入! “巨大な箱”の内部を徹底レポート 訪ねて分かった「うどん県」に建てた理由ITmediaスタディーツアー

» 2022年11月07日 10時00分 公開
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 いま、データセンターが熱い。といってもサーバーの排熱の話ではない。ビジネスを成長させる切り札として注目が集まっている。サーバーやネットワーク機器といったITインフラや重要なデータの保管場所として、自社で整備するよりも低コストで拡張性を確保できる。さらにオンプレ環境で発生した非常時のバックアップ先としても有効な上に、機器の管理を専門家に任せれば運用コストを低減できるなど、ユーザー企業のメリットは大きい。

 このように企業のビジネスを支えるデータセンターだが、やはり自社のIT資産を外部に預けることに不安を覚える人もいる。「自社のIT資産を守れるのか」という懸念だ。だからこそデータセンターにはセキュリティ上の安全性や物理的な堅牢性、設備やシステムの冗長性が求められる。

 当然対策はしているだろうが、本当に安全なのだろうか。“巨大な箱”の内部を知っている人は少ない。どのような対策をしているのか、誰もがイメージするようなサーバーラックが並ぶ空間は実在するのか。どうしても知りたい。すると詳細な場所を伏せるという条件で、とあるデータセンターに“潜入”できることになった。今回はその模様をレポートする。

データセンターの場所が“うどん県”でなければならない理由

 今回訪ねたのは、STNet(香川県高松市)が運営するデータセンター「Powerico」(パワリコ)だ。2013年に西日本最大級のデータセンターを香川県高松市に開設し、19年に新棟を増築している。具体的な住所は安全上の理由で明かせないが、高松空港やJR高松駅から車で20〜30分ほどとアクセスは申し分ない。

 ちなみにJR高松駅周辺には飲食店や宿泊施設が多いので不便さは感じない。もちろん、うどん店も選び放題だ。Powerico訪問前に一杯味わったところ、ダシのおいしさに驚いた。毎日食べても飽きない味だ。ここにデータセンターを建てたのもうなずける。

 冗談はさておき、“うどん県”こと香川県という立地がデータセンターの堅牢性を支えている。自然災害のリスクが低いため、BCP(事業継続計画)の観点で有効だ。気象庁の「震度データベース」によると過去100年間に震度6以上の地震はゼロ回、震度5弱以上は3回にとどまる。半径100km圏内に活火山はなく、津波についても海抜約14.5mの土地かつ瀬戸内海の特徴から心配は無い。さらに旧高松空港の滑走路跡地を活用しているため、地盤も安定している。

photo Powericoの外観。まさに“THE データセンター”といった風貌だ

 そんな地理的優位性を頭に入れつつ、Powerico新棟のエントランスに足を踏み入れた。受付で入館票を書いてICカード型の入館証を受け取り、同時に生体認証の登録もした。なお入館証があっても館内を自由に移動できず、サーバールームまで7段階のセキュリティチェックがある。STNetの従業員にも来館者とほぼ同等のチェックをする徹底ぶりだ。

 入館手続きを経て最初に案内されたのは、壁も椅子も真っ白な部屋だった。遊園地のアトラクション感がありワクワクして座っていると、Powericoの概要を説明する映像が流れた。施設内部を進んでいくと、ここで見た映像の伏線を回収できる仕掛けだ。

photo 全面真っ白で驚いた

建物の地下に眠る免震ピット 分厚い積層ゴムがセンターを守る

 映像を見終わったところで、いよいよ内部に潜入だ! 潜入といいつつ、セキュリティゲートで厳しいチェックを受ける。金属探知機は、空港の保安検査よりも厳しいようで、ベルトや革靴の金具にも反応して警告音が鳴る。そしてスマートフォンなどは基本的に持ち込めず、PCといった作業機材も事前申請が必要だ。

 ここから館内を進むと行く先々に扉があり、その度に入館時に受け取ったICカードをタッチしなければ入れない。通路は白を基調にしていて、さながらSF映画に出てくる宇宙船か、スパイの秘密基地そのものでテンションがあがる。

 まず向かったのは、建物免震階だ。低い天井に身をかがめながら階段を降りると、分厚い高減衰積層ゴムと黄色いオイルダンパーが目に入った。建物に伝わる地震の揺れを積層ゴムで緩和し、ダンパーで揺れを吸収する。Powericoの基礎免震構造は、震度7クラスの地震でもサーバーフロアの水平応答加速度を200gal以下に低減する。要するに、サーバーや電源などの設備に影響がない揺れに抑制できる仕組みだ。

photo Powericoを支える免震設備は、写真だとサイズ感をうまく伝えられない

 また地下には“ヤシマ作戦”か!? と思うほど太いケーブルが走っている。これは電源設備につながる高圧ケーブルだ。ケーブルは余裕を持った長さにし、タイヤ付きの台車に乗せることで、大きな揺れによる断線を防いでいる。

photo 太いケーブルが蛇のように横たわっていた

電源供給は2系統 自家発電設備は72時間の連続運転が可能

 続いて電源設備を見学した。Powericoでは香川県内2カ所の異なる変電所から電力の供給を受けることで、本線と予備線の2系統を確保している。さらに非常時には巨大な無停電電源装置(UPS)が予備電源として機能するN+2の冗長構成を採っている。

 加えてPowericoでは、N+1構成の非常用自家発電設備を備えており、無給油でも72時間の連続運転が可能だ。

 ちなみに、Powericoの設備は日本データセンター協会が定める信頼性の基準「データセンターファシリティスタンダード」(JDCC FS)の最高位「ティア4」に準拠している。そして電源の冗長性や可用性については、ティア4の基準(今回の場合は24時間稼働)を超える用意がある。

厳重なセキュリティ対策の先、サーバールームに潜入!

 さて、ついに心臓部のサーバールームに潜入する。と仰々しく書いたが、もちろんトム・クルーズのように天井に張り付いて潜入するなどできない。そんな体力もないが、そもそもサーバールームの手前には共連れ防止用の2枚扉があるからだ。共連れとは、保安検査や進入制限エリアに正規の利用者が入るのに乗じて、不正に進入する手口を指す。

  ICカードで認証して1枚目の扉を通ると、天井の画像センサーで人の入場を検知し、足元のレーザーセンサーで位置と大きさを判定する。入場者が1人だと確認したら1枚目の扉が閉じ、サーバールームに続く2枚目の扉が開く仕組みで不正はできない。

photo 今回は特別に2枚扉を同時に開けてもらった

 セキュリティ対策はこれで終わりではない。2枚扉を通過後、入館証と受付で登録した生体認証を合わせて本人確認をする必要がある。こうしていくつものセキュリティチェックをくぐり抜けて、ようやくサーバールームに入室できた。250ラック分の棚が並ぶ圧巻の光景だ。Powerico新棟のサーバールームは250ラックを収容するスペースが計4部屋ある。合計で1000ラックの大容量だ。

 サーバーラックは、空調設備から流れる冷たい空気を床下から取り込んでラックの前面に送り(コールドアイル)、サーバーの排熱はラック背面から放出する(ホットアイル)。前後で空間を区切ることで空気が混ざらず、効率的に冷却できる。温湿度はセンサーで管理している。

 ここで注目したいのが「8分の1ラック」の存在だ。ラックを貸し出すハウジングサービスの場合、一般的には1ラックまたは2分の1ラック単位で貸し出すことが多い。しかしPowericoでは、4分の1や8分の1という小さな単位も用意している。実際に見ると1Uサーバーとルーターが収まるようなサイズ感だ。小規模からデータセンターを使えるようにすることで、中小企業のニーズに応えている。

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photo サーバールームと聞いてイメージする様子そのものだった(ぼかし加工は編集部によるもの)

カフェテリアでLANケーブルを売っている訳

 もしサーバールームでメンテナンス作業をするなら、テーブルや椅子を借りられる。また新規システムの構築やサービスローンチ直前の重い作業を複数人で手掛ける際は、Wi-Fi付きの「ワーキングルーム」を借りられる。会議室のような部屋で、サーバールームからLANケーブルを延伸して作業可能だ。1週間や1カ月といった長期利用もでき、“根を詰める作業”にぴったりだ。ワーキングルームは複数用意しているが、ゴールデンウィークやお盆、年末年始などメンテナンス作業が集中する時期には予約が殺到するほど需要がある。

photo ワーキングルームの様子。許可を得て作業の様子を見せてもらった

 このワーキングルームでは飲食できないが、施設内に併設のカフェテリアで食事や休憩を取れる。なんとマッサージチェアも完備と至れり尽くせりだ。自動販売機にはコーヒーやお茶、菓子類、そして――ん? LANケーブルにケーブルタイまで売っている!? そうそう、疲れたエンジニアにはLANケーブル……ってそんなわけない。作業中に「ケーブルを忘れた」「ケーブルが足りなかった」という事態に陥っても即解決できる気遣いだ。

photo カフェテリアはとても明るい印象だ

Powericoの深層部、サービスの中枢は“うどんルーム”!?

 ここまでPowericoの堅牢性やセキュリティ対策を見てきた。最後に、同施設の中枢に当たる監視室をのぞいた。その名も“うどんルーム”である! 耳を疑うような名前だが、聞き間違いではない。「UDON Room」(Ultimate Data OperatioN Room)だ。香川県にある白い施設で、専門知識がある職人が提供するコシのある高品質なサービスにぴったりの名前で思わず笑みがこぼれる。

 UDON Roomでは、100人超の技術者が交代制で24時間365日データセンターの保守管理や運用を手掛けている。2交代制でのギリギリの体制ではなく、一部3交代制にすることで人員面でも冗長性を確保した。

 正面の12面モニターには監視カメラの映像が流れている他、入退室や空調、電源も一元的に管理している。技術者の机上にはパトランプがあり、サーバー異常があれば即応可能だ。さらに遠隔のSTNet本社ともオンラインで映像や情報を共有しており、緊急時には共同で対策に取り組める。

photo これがUDON Roomの内部だ!

Powericoは潜入せずとも見学OK

 Powericoへの潜入はUDON Roomで幕を閉じ、再びセキュリティゲートを通ってエントランス部分に帰還した。データセンターとは箱を用意すれば終わりではない。顧客の重要なIT資産を預かる以上、不審者の侵入はもちろんシステムを止めることなど絶対にできない。Powericoではいかなる事態が起きても対処できるよう設計された施設であると実感した。

 本記事は潜入レポートだったが、実は潜入せずともPowericoの見学を広く受け入れている。ぜひその目でデータセンターの面白さとPowericoの徹底した取り組みを見てほしい。施設も従業員も信頼でき、企業のIT資産をしっかり守る姿勢を感じ取れるだろう。

 さて、うどんでも食べて帰りますか。

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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia NEWS編集部/掲載内容有効期限:2022年11月25日