勝率2.6倍――AIで“勝てる広告”を生むサイバーエージェント GPU基盤を“あえて自社開発” そのワケは?

» 2023年01月31日 10時00分 公開
[PR/ITmedia]
PR

 製造現場から小売店舗に至るまで、AIがあらゆるビジネスの現場に進出している。AIが特別なものではなくなったいま、企業が考えるべきは「AIを何に使うか」ではなく「AIをどう動かすか」というインフラについてだ。

 興味深い例に、IT大手のサイバーエージェントがある。同社は仕組みが複雑化するインターネット広告事業にAIを活用し、効果などの数値をAIで分析してマーケティングの精度を高めようとしている。その本気度を示すかのように、2019年に設置した「AI事業本部」でAIやデータサイエンス領域をより強化し続けている。

photo サイバーエージェントの高橋大輔氏(グループIT推進本部CIU, Solution Architect)

 「もはやアドテクノロジー(広告技術)を人間の頭で考えるのは難しい状況になっています。人間が想像しなかったものを生み出す、またその手助けになることをAIに期待しています」――こう話すのはサイバーエージェントで機械学習基盤の管理を手掛ける高橋大輔氏(グループIT推進本部CIU, Solution Architect)だ。


 AI活用を積極的に進める同社は、その基盤になるインフラ運用でも先進的な戦略を採っている。今回はサイバーエージェントのAI活用の最前線から、そのノウハウをお届けする。

photo 取材したサイバーエージェントのインフラ運用を担うメンバー

勝率2.6倍 “勝てる広告”を作る「極予測AI」

 サイバーエージェントがインターネット広告事業領域で開発したのが「極予測AI」(キワミヨソクAI)だ。広告の配信効果をAIで予測することで、画像や文章といった広告クリエイティブの制作を支援する。目指すのは「他広告に勝てる広告クリエイティブ」を高確率で作り出すことだ。

 従来の広告クリエイティブは、クリエイターのセンスと経験に頼って制作していた。しかし属人的な体制では、品質を維持しながら大量に制作するのには作る限界があり、事業としての拡大も難しいという課題があった。そこで、これまでサイバーエージェントが配信してきた広告クリエイティブと配信実績のデータに基づく極予測AIで、より効果的なクリエイティブ制作を支援する体制を構築した。

 極予測AIで広告の効果予測値を算出し、効果を期待できる広告クリエイティブのみ配信する。具体的には、既に配信中のクリエイティブのうち効果が最大(効果値が1位)のものに対して、効果予測値が上回った新規クリエイティブのみを広告主に納品し、配信する仕組みだ。

photo 極予測AIのイメージ(提供:サイバーエージェント)

 この極予測AIは、クリエイターが作ったクリエイティブと既存の広告をAIで比較して、より良い素材の選択と効果予測をすることで、最も効果が高いクリエイティブの制作を支援する。

 極予測AIを使って制作した広告クリエイティブは、従来のプロセスで制作したものよりも効果勝率(※)が2.6倍高いという結果が出た。この精度に自信を持っているため、サイバーエージェントでは広告の効果を確認できたときだけ報酬を得る成果報酬型にしている。

※配信中の広告のうち、効果が第1位のクリエイティブに対する効果勝率を表したもの。

 ある健康食品の広告では約2カ月の検証期間の結果として、既存クリエイティブに対してコンバージョン率(CVR:目的の達成割合)が約170%改善した実績もある(事例の詳細はこちら)。

AIの研究の論文インパクト国内4位 スムーズな開発を支えるインフラチーム

 極予測AIにとどまらず、サイバーエージェントはさらなるAI活用に向けて研究開発に取り組んでいる。同社の研究組織「AI Lab」と連携して、自然言語処理技術を使った広告テキストの自動生成や、いまより効果的な広告配信アルゴリズムの開発などを進めている。

 このAI Labは、AI分野の論文のインパクトを示すランキング「AI Research Ranking 2022」の1部門「AI研究をリードする企業トップ100」で国内4位、世界49位という高い評価(※)を得ている。技術力の高さを示すものだ。

※先端技術を扱う企業に出資する米国のVCファンドThundermark Capitalが毎年公表している。今回のランキングは22年版のもの。

photo サイバーエージェントの知念洋樹氏(グループIT推進本部CIU Platform Div, ハードウェアエンジニア)

 「このようにサイバーエージェント内でAI活用が重要なテーマになっているだけに、その活動を支える機械学習インフラの重要性も日々増しています。AI関連のサービスを作る人や事業部の担当者が、インフラを気にせずストレスなく仕事に取り組めるようにするのが大切だと考えています」――こう話すのはサイバーエージェントの知念洋樹氏(グループIT推進本部CIU Platform Div, ハードウェアエンジニア)だ。


 「私たちインフラ運営チームは、全体の費用対効果を考えながら、事業部の要望やサービス開発チームの利用形態に適したインフラ構築を心掛けています。最近ではパブリッククラウドを使う中で見えてきたさまざま課題の解決策として、オンプレミスの環境を積極的に活用するケースも増えてきています。インフラを使うユーザーの目線に立ち、ユーザーにとって使い勝手の良い基盤を提供できるよう心掛けています」(知念氏)

顕在化したクラウドのコスト問題 オンプレが持つメリットとは?

photo サイバーエージェントの漆田瑞樹氏(グループIT推進本部CIU Dev Div, Software Engineer)

 では、パブリッククラウドで顕在化した課題とは何だろうか。1つ目は、ここ最近の為替変動などの影響を受けて、運用費用が高騰している問題だ。2つ目は、機械学習には欠かせないGPUの在庫不足で、サイバーエージェントの場合は1つのプロジェクトで数百台のGPUを使うこともある。しかしそのレベルのGPUリソースをクラウドですぐに用意するのは難しい場合もあると、同社の漆田瑞樹氏(グループIT推進本部CIU Dev Div, Software Engineer)はいう。


 さらに3つ目として、最新のGPUを使いたい場合、クラウドサービスとして提供されるまでに時間がかかることも多い。また4つ目に、ライブラリのカスタマイズ性やプライベートクラウドとの連携といった運用面の柔軟性が高い点がある。

 「オンプレミスであれば、弊社のビジネスに合わせてエンジニアが自由にカスタマイズできます。こうしたパブリッククラウド特有の課題に直面したことで、GPU基盤をオンプレミスで構築するに至りました」(漆田氏)

 当然、オンプレミスは初期費用がかかる。しかし減価償却の期間にあたる3〜5年スパンで考えると、サイバーエージェントの使い方としてはクラウドより費用面で有利だと高橋氏は説明する。GPUサーバなどを置くデータセンターの費用や基盤開発に携わるスタッフの人件費など全要素を含めて試算しても、コスト面でメリットがある。

オンプレの選択肢も現実的に 重要なのはコストパフォーマンス

 オンプレミスでGPU基盤を整えたサイバーエージェントが重視したのが、GPU基盤のコストパフォーマンスだった。

 「20年秋にコンピューティングリソースの枯渇が表面化し始め、GPUの増設を検討しました。GPUはなかなか高額な投資になるので、稼働率を上げてコストパフォーマンスを追求する必要があります」(高橋氏)

「Dell PowerEdge XE8545」を選択 事前検証を無料で実施

 そこでサイバーエージェントが選んだのは、デル・テクノロジーズのGPUサーバ「Dell PowerEdge XE8545」(以下、PowerEdge XE8545)だった。米NVIDIAが実施する機械学習やデータ分析を対象にしたテストに合格し、厳しい設計要件を満たしたシステムであることを示す「NVIDIA-Certified Systems」の認証も取得している。

 さまざまなベンダーの機器を検討した結果、性能やコストパフォーマンスの観点でPowerEdge XE8545が優れていた。稼働率を上げるためのきめ細かい保守サービスもあり、総合的な見地から導入を決めた。トラブル発生時にワンストップで対応してくれる体制も評価した。

 さらに導入に際しては、デル・テクノロジーズが運営するAIの専門施設「AI Experience Zone」(東京都千代田区 大手町)を活用した。ここでは、AIの効果やGPUサーバの性能を無料で事前検証できる。

 「事前検証をするにも、機器の用意や電源の確保などコストがかかります。それを無料で試せる上に、デル・テクノロジーズの担当者に相談もできます。本格導入の前に私たちのAIで性能を検証できたのでとても助かりました。コロナ禍ということもあり、リモートでGPUを含むシステム全体の稼働状況を監視するサーバ管理ツール『iDRAC』(integrated Dell Remote Access Controller:アイドラック)の有用性も含めて検証できました」(知念氏)

理論値で約46%のコスト削減を実現

 サイバーエージェントでは22年春からPowerEdge XE8545を本格導入し、22年12月現在で合計9台を使っている。現在使っているリソース分をパブリッククラウドで構成した場合に比べて、約46%のコスト削減につながった。社内からも効率性や使い勝手について好評だ。

 今後さらなるデル・テクノロジーズ製サーバの増設を検討しており、現状の1.5〜2倍ほどのコスト削減効果を見込んでいる。

AI開発を加速 デル・テクノロジーズに期待すること

 インフラ運用からサービス開発に至るまで、AI活用に注力するサイバーエージェントは、今後も速度を落とさずにAI活用を進めていく。例えば、AIモデルの大規模化が進んで1台のサーバでは足りないケースもあり、マルチノードでの分散学習の実現に取り組むことを検討している。

 AI関係で挑戦を続けるサイバーエージェントでは、開発に携わる人材の募集にも力を入れている。Kubernetesといったコンテナ技術やインフラ環境を扱えるエンジニア、AIやデータサイエンスの知識がある人材などを迎え入れている。また学生向けにインターンシップやハッカソンを開催するなど、若手も積極的に受け入れていると漆田氏は呼びかける。

 同社の活動を支えるデル・テクノロジーズへの期待も大きい。「1つのAIプロジェクトで『手始めに200TB欲しい』といった社内ユーザーからの要望も往々にしてあり、ストレージ拡張について今後の提案に期待したいです。また以前、多くの企業で半導体不足で納品の遅延が起きた時期にも、デル・テクノロジーズは迅速に製品を手配してくれました。引き続きそうした手厚いサポートを提供していただきたいです」(知念氏)

 デジタルマーケティング領域でAIを活用し、進化を続けているサイバーエージェント。同社は、AI技術の発展によってさらに大きな変革にチャレンジし、ビジネス課題の解決だけでなく学術的貢献も目指して、今後も研究開発や産学連携への取り組みを続けていく。

「Dell de AI(でるであい)」からのおすすめ記事一覧

Dell de AI(でるであい)とは──


dell-deai

「AIをビジネスで活用する」──そう言い表すのは簡単です。しかし、組織にとって本当に価値のあるアクションへ落とし込むには、考えるべきことがあまりに多すぎます。誰に相談すればいいのか、どうすれば成果を生み出せるのか。「Dell de AI “デル邂逅(であい)”」は、そんな悩みを持つ企業や組織にポジティブな出会いや思いもよらぬうれしい発見──「Serendipity(セレンディピティ)」が生まれることを目指した情報発信ポータルhttps://www.itmedia.co.jp/news/special/bz211007/です。


おすすめ(1)AI導入時の課題を解決するには


AI活用をもっと身近に メリットを気軽に体験できる“専門施設”がある! デル・テクノロジーズが使い勝手を紹介


「AIを使えない企業は衰退する」――勝機はAI活用にアリ 明大教授が訴える“知っておくべきこと”とは?


AIの動作環境、「サーバ」採用が約30% 調査で見えた、GPUサーバが役立つ訳 導入・更改時の懸念を払うには?


AI活用のハードルを一気に下げる、AutoMLツール最前線


AIは“特別な投資”ではない 「知見も人材もない」企業が自社導入に成功するコツは? データサイエンティストに聞く


「AIでデータを英知に変える」 450超の施策でDX推進 大手IT企業のノウハウは? “AIスペシャリスト”が明かす


おすすめ(2)「統計学が最強の学問である」著者が語るデータ活用


【前編】
DX時代のデータ活用に役立つツール 「統計学が最強の学問である」著者が起業して開発に至った背景に迫る

【後編】
データ分析にAIを使うメリットを解説 “データサイエンティストいらず”の専用ツールを活用事例と一緒に紹介


おすすめ(3)事例で知るAI活用の最新事情


8つのAI導入サービスを紹介 製造業向け、オフィス業務効率化、DX推進など ビジネス活用のメリットも併せて解説

AIやDXは事業サイクルを加速させる武器だ――松尾豊教授が語る 企業のAI活用を後押しするセミナーを徹底レポート

「乗り遅れると大変なことに」 AIの大変革期、一般企業はどうすればいい? AI活用のヒントを6社に学ぶ

DXにAIを生かすには? “AI基盤の鉄板構成”で手軽に成果を享受する方法

AIで心疾患を見つけ出せ――医療現場のAI活用、その現状を追う AIは「勉強熱心で優秀な研修医」になるのか

“人知を超えたAI”はビジネスに不適切 「説明可能なAI」が求められるワケ 機械学習の“グランドマスター”が解説

化粧品の商品開発にAI活用、データ分析を自動化 材料開発を加速する「マテリアルズ・インフォマティクス」を解説

建設業界向けAIサービス 図面のデジタル化で設計業務を効率化 構造計画研究所の専用ツールとは

「AIは即戦力だ」 人材不足の製造業、“職人の経験”頼りの現場をAIは救えるか 専門知識なしでAI開発する方法とは?

数分かかる検査作業を3秒以下に AI活用で工事現場の安全確認を迅速化 速さのカギは「仮想GPU基盤」にあり

1秒の遅延が損失に――クラウド中央処理の課題3つ 解決策は「エッジAI」 システム構築のポイントは?

勝率2.6倍――AIで“勝てる広告”を生むサイバーエージェント GPU基盤を“あえて自社開発” そのワケは?


おすすめ(4)人間とAIの未来を知るには


これは、私が夢で見た「人間とAIの未来」の“ちょっと不思議”なお話

AIの“カンブリア爆発期”? 2022年を編集長と振り返る この先、AIはどう進化するのか考えた


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.


提供:デル・テクノロジーズ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia NEWS編集部/掲載内容有効期限:2023年2月13日