「生成AI」でビジネスに“革命”? 仕事に役立つのか実際に使ってみた

» 2023年03月15日 10時00分 公開
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 「Windows 95の登場に匹敵する出来事だ!」――あるITベンダーの熟練マーケターが興奮を隠せないでいる。何かというと、2022年後半から急速に市場が広がっている「ジェネレーティブAI」(生成AI)についてだ。

 その成長はすさまじく「昨日できなかったことが今日はできる」ような状態にある。基盤にあるのは17年に発表されたAIの深層学習モデル「Transformer」だ。そして22年12月、米AI研究企業のOpenAIがテキスト生成型のチャットbot「ChatGPT」を発表。わずか1週間で100万ユーザーを獲得、2カ月足らずでアクティブユーザー数が1億を超えた。これは「Instagram」「TikTok」を超える史上最速のペースだった。

 こうしたジェネレーティブAI市場は今後10年で数倍にも数十倍にも拡大するという予測もある。ここ数カ月で世界の潮目が変わりつつある。指をくわえて見ていると、あっという間に追い付けなくなりそうだ。

 この流れは日本企業にどのような好機をもたらすのか。今後ジェネレーティブAIは応用期に突入し、それを活用した新サービスが数多く生まれると想定される。

 そこで筆者は、日本企業の今後のジェネレーティブAI活用に向けたヒントを得るべく、ChatGPTを実際に使ってジェネレーティブAIの力を推し量ることにした。果たして、ジェネレーティブAIはビジネスにどれほどの革命をもたらすのか。

ネット革命が始まった95年。AIでも同じことが起きる?

 AIを巡る現在の状況は、ネット元年の95年に似ている――冒頭で登場したマーケターはこう話す。当時、Windows 95の発売や「Internet Explorer」の登場でインターネットが急速に普及した。同年7月に「Amazon.com」が書籍のオンライン販売を開始。Webサイトが爆発的に増える中、96年1月には「Google」が胎動を始める。インターネットの普及がビジネスの勢力図を変える転機になった。

 AI分野の状況も似ている。22年12月にChatGPTが公開された後、翌年2月には米Microsoftが検索エンジン「Bing」にChatGPT関連技術を取り入れたAIを搭載した。これ以外に、契約書の確認など法務にAIを取り入れたサービスの開始が相次ぐなど、これまで人間の仕事といわれてきた士業や対面サービス業、オフィス業務でも“AIサービスのネット販売”がますます加速していくと予測される。

ChatGPTに聞いてみる
「企業への影響は?」「ビジネスで1位になるには?」

 ジェネレーティブAIの能力を知るには、実際に使ってみることが一番だ。そこで今回は、ChatGPTを使いながらAIの今後を考えてみる。

 ChatGPTは、入力した命令や質問文に自然な文章で返答するのが特長だ。企画書のアイデア考案や文章の添削、キャリア相談まで使い方は無限大に広がっている。今回は、ChatGPTを「コンサルタント役」に見立てて、企業のAI活用について聞いてみた。

――あなたはITに詳しいプロの企業コンサルタントです。 ジェネレーティブAIの進歩が企業のビジネスにどのような影響があるのか、200文字程度で簡潔に教えてください。

ジェネレーティブAIを活用することで、製品開発や顧客サービス、業務効率化など、多岐にわたるビジネス上の課題に対して新たな解決策を提供することが可能となります。企業は、この技術を適切に活用することで、競争力を獲得することができます。

 ChatGPTは、ジェネレーティブAIがビジネス課題の解決や企業の競争力獲得につながると回答した。実際、製品開発時のクリエイティブな提案やプロトタイプの検討に役立ったり、顧客からの問い合わせにチャットbotで答えたりといった用途を想定できる。200文字程度なら適切な回答だろう。

photo ChatGPTが回答する様子

――ビジネスに役立つとのことですが、経営者はどのようなアクションをすべきですか。200文字程度でまとめてください。

ジェネレーティブAIに関する知識を習得し、ビジネスプロセスの自動化、データ分析の活用、ビジネスモデルの見直しなどの具体的な計画を策定する必要があります。これにより、ジェネレーティブAIを活用するための準備を整え、競争力のあるビジネスを構築することができます。

 まずジェネレーティブAIについて正しく知った上で、事業計画を策定するという的確なアドバイスだ。事業の方向性や組織の仕組み、必要なITシステムの導入などは経営者の関与が欠かせない。

――日本企業がジェネレーティブAIを使って世界1位を目指す場合、ビジネス展開の中長期的なプロセスを詳しく教えてください。その際、時系列に沿って「何年後に何をすればどのような効果があるか」を記載してください。

  1. 現状の課題を洗い出し、必要な技術や人材を確保する(1-2年)
  2. 実証実験やプロトタイプの開発を行い、利用分野を特定する(2-3年)
  3. 業務プロセスの改善やサービスの提供開始(3-5年)
  4. 海外展開やグローバル展開(5年以上)

 利用分野の特定が2〜3年後、グローバル展開が5年後というのは遅すぎると思われるが、プロセスの中身自体は説得力があるように見える。

photo ジェネレーティブAI活用の中長期的なプロセスをChatGPTに聞いた

――ジェネレーティブAIを活用する上で、企業はどのようなIT環境を用意する必要がありますか。200文字ほどで端的に教えてください。

高性能なコンピュータやグラフィックカードを備えた高速なITインフラが必要です。また、大量のデータを扱うためのデータストレージシステムも必要です。さらに、セキュリティ対策として、データの暗号化やアクセス制限などのセキュリティ対策を講じる必要があります。

――GPUなどを備えた高性能で高速なITインフラが必要とのことですが、サーバとワークステーションの使い分けがあれば教えてください。

サーバは多くの人がアクセスするようなアプリケーションや、データを集中管理する際に使用されます。ワークステーションは、一人のユーザーが専用で使用する場合に適しています。GPUが搭載された高性能なワークステーションは、研究者やデータサイエンティストがデータを分析するために使用されます。一方、GPUが搭載されたサーバは、深層学習などの機械学習アルゴリズムの高速な処理を実行するために使用されます。

 ジェネレーティブAIを活用するには高性能なコンピューティング環境が欠かせない。GPUを搭載したサーバとワークステーションの使い分けについてもアドバイスをもらえた。また情報セキュリティやデータの取り扱いについても触れている点は評価できる。

photo ITインフラに関するChatGPTの回答

“ジェネレーティブAI戦国時代”に突入か 編集部内で話し合ってみた

 ChatGPTを実際に使ってみると、かなりクオリティーが高いと分かる。この体験を基に、ジェネレーティブAIの活用について編集部内で話し合ってみた。参加したのは次の3人だ。

キーチITmedia NEWSの編集長。

ツキーAI専門コーナー「AI+」を担当。トレンドを追わせたら右に出る者はいない。

オカ企業の取材などを手掛ける若手記者。ビジネス視点を武器にする。


オカ 実際にChatGPTを使ってみると、ジェネレーティブAIの性能に驚きますね。今回は曖昧な質問でしたが、適切な回答でした。もっと具体的な質問にして会話を重ねていけば、より有益な情報を得られそうです。この技術を自社製品やサービスに生かして付加価値を付けられれば、好機を得られるかもしれませんね。

ツキー すでに活用は始まっており、ChatGPTがまたたく間に普及するなど読者の関心が高い分野です。米Metaなどが参入するという話もあります。“チャットAI戦国時代”に突入するのではないかと予想しています。

キーチ 日本でも大規模言語モデルの開発事例はあるものの、なかなか注目はされていないですね。

オカ あまり日本企業のビジネスパーソンには現在の潮流が刺さっていないのでしょうか。

キーチ そんなことはありません。国内の大手IT企業の代表が「会食のときChatGPTの使い方について聞かれる」といった旨を投稿しています。ジェネレーティブAI自体は響いているものの、海外勢の強さが目立っている状況ではないでしょうか。

大規模モデルの自社開発が鍵に? 日本企業が進む道は

オカ 海外勢が強いとはいえ、その学習モデルを使ったり、API連携でAIサービスを導入したりできますよね。とはいえ、そう簡単な話ではないと。

ツキー 学習素材の透明性を疑う声がありますね。自然言語の場合は、例えば出力されるプログラミングのコードが誰かのコードのライセンスを犯す恐れが指摘されています。クリエイティブが簡単になる以上、その学習元の権利関係も重要視する必要があるでしょう。

キーチ 情報セキュリティ面での懸念もあります。APIで連携したAIサービスに入力した内容が、海外のサーバに送られる可能性があり、機微な情報を扱うのは危険です。一方で国内の学習モデルを使おうにも、自社に適した内容やクオリティーとは限りません。そこで新たな選択肢として挙がったのが、自前での大規模言語モデルの学習や利用です。

ツキー AI研究者の松尾豊教授(東京大学)も、「大規模言語モデルを自ら開発することが日本の戦略の一つ」と提言(※)しています。

※自民党「AIの進化と実装に関するプロジェクトチーム」の第2回会合で、松尾教授が提出した資料「AIの進化と日本の戦略」より。

オカ しかし、それには相当な計算リソースが必要ですよね。

キーチ 学習には膨大な計算リソースが必要です。学習済みモデルの実行ならそれほど大きなマシンパワーは必要としないのですが。

ツキー 膨大な計算リソースをいかに確保するかという課題を乗り越えたのがChatGPTや画像生成AIなどいま話題になっているサービスなのかなと。

 松尾教授も、前述の提言の中で「数百億円あれば同じようなものは作れる。今後のインパクトの大きさを考えれば、この戦いに参入するチケットとしては安い」としていました。

キーチ その規模でなくても、日本企業でもAI向けにGPUサーバへの大規模投資を行う企業が出てきています。

オカ 確かにそうですね。自社で導入すれば、大規模な学習データを使う際のデータ転送コストを低く抑えられるメリットがあります。また、社内データを使った学習やAIで合金の設計などを導く“合金AI”のような研究・開発に関する機密データを扱う場合、情報セキュリティの観点で有効ですね。

キーチ また小規模向けには、シングルGPUで大規模言語モデルを実行できる技術「FlexGen」も登場してきていますし、幅広い企業がAIを活用できる土壌が整いつつあります。日本から「独自の学習モデルで戦う」という動きが今後どんどん出てくるとうれしいですね!

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「AIをビジネスで活用する」──そう言い表すのは簡単です。しかし、組織にとって本当に価値のあるアクションへ落とし込むには、考えるべきことがあまりに多すぎます。誰に相談すればいいのか、どうすれば成果を生み出せるのか。「Dell de AI “デル邂逅(であい)”」は、そんな悩みを持つ企業や組織にポジティブな出会いや思いもよらぬうれしい発見──「Serendipity(セレンディピティ)」が生まれることを目指した情報発信ポータルhttps://www.itmedia.co.jp/news/special/bz211007/です。


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