約3年のコロナ禍を経て、社会のあらゆる場面で「リモート」がキーワードになった。感染症対策として浸透した非対面や非接触の取り組みは、いまやニューノーマルとして定着しつつある。
企業がそろって導入したリモートワークが分かりやすい例だ。事業部の会議もバックオフィスの管理業務も遠隔で対応したケースが多い。小売店ではセルフレジが普及し、無人店舗なども登場している。非接触の観点で進んだ取り組みだが、人手不足の影響もあり、業務の効率化や省人化といった効果を享受する企業も増えている。
今後、こうした非接触や非対面のビジネスが対面形式に後戻りするケースは少ないだろう。リモートワークからIoT機器の遠隔操作まで企業は将来のビジネス展開を見据えてリモート体制に本腰を入れる必要がある。
では、具体的に何に取り組めばいいのか。今回、20年前から遠隔操作ソリューションを取り扱うIT企業のスリーワンシステムズ(東京都中央区)の担当者を取材した。同社が提供する「Impero Connect」(旧名称:Netop Remote Control)は聞き慣れない製品だが、実は鉄道業界や製造業界をはじめ医療や金融など幅広い分野の身近な場所で採用されている。その実績から、来る“リモート全盛期”への備え方を聞いた。
非対面サービスやリモート対応が普及した場面について、ユーザー視点で考えてみよう。大人がリモートワークをするように、子どもたちもリモート授業を受けるようになった。ネット注文した料理を配送するフードデリバリーも普及し、最近ではファミリーレストランで配膳ロボットが活躍している他、セルフレジのおかげでレジの待ち時間を短縮できるようになった。
コロナ禍や人手不足などを背景に、便利な社会への進化が止まらない。そこでビジネスをリモート対応にする、つまりサービスや製品、業務を遠隔操作できるようにすることが企業にとって大切だとスリーワンシステムズの阿子島力氏(ITソリューション部)は話す。
「労働者が減少する中で、これからますます省人化や無人化が進むでしょう。店舗対応でも施設の監視でも、遠隔操作に対応することでビジネスの好機や利益を逃さず手にできます。分かりやすいのは人件費の削減ですね。1人で複数拠点を担当する、現場に行かず作業するような対応が可能になり、時間と経費を削減できます」(阿子島氏)
しかし、問題は遠隔対応の進め方だ。無人店舗ではサービス品質が低下してユーザーの満足度や利便性が下がるかもしれないし、遠隔地にある決済端末をメンテナンスするのはコストがかかる。人手不足なのだから、管理やメンテナンスに人手をかけるわけにはいかない。
そこで、遠隔操作ソリューションであるImpero Connectを例に遠隔対応の方法やメリットなど実例を交えて紹介していく。同製品はmacOSやWindows、Android、Linuxなどの他にレジ用のPOS端末向けOS「Toshiba 4690」などに幅広く対応している。対象機器にソフトウェアをインストールすれば、リモートコントロールや画面共有、ファイル転送、インベントリ(保有データ)表示といった遠隔操作が可能だ。別タイプとして展開している「Impero Connect OnDemand」は、機器にインストールせずインターネット経由でPCを操作できる。ヘルプデスクやコールセンターの他、サポートデスク支援などの幅広い分野で活用されている。
Impero Connectのユースケースとして代表的なのが、鉄道の駅構内にある券売機や精算機だ。スタッフと会話できるボタン付き券売機を見たことがあるかもしれない。そこにImpero Connectが組み込まれており、券売機の操作に困ったら管理側が購入画面を遠隔で見ながら操作をサポートしている。広大な鉄道ネットワークと膨大な数の券売機を大勢の乗客が使う状況に、鉄道各社は遠隔で対応している。
「弊社調べですが、国内ではほぼ全ての鉄道会社に採用いただいています。システム名が表に出ることは少ないですが、縁の下の力持ちですね」(阿子島氏)
この導入企業の多さには理由がある。鉄道業界はImpero Connectが旧名称のNetop Remote Controlだったころから導入が進んでいた大きな実績がある。そのため評判が口コミで業界に広がり現在に至る。ある鉄道会社が券売機などに組み込み、その機械を作ったメーカーが採用し、別の鉄道会社や関連企業に広まっていくという具合だ。
鉄道業界以外でも、遠隔操作のメリットは多い。Impero Connectの場合はATMや無人レジといった金融、小売業界で活躍したり、営業担当が持ち歩くビジネスPCやタブレットに不具合があった際に本社の情報システム部門が遠隔でサポートしたりする活用例がある。
「遠隔操作は人が入りづらい場所で特に活躍します。容易に出入りできないクリーンルーム内にある半導体製造装置のモニタリングや、サーバルーム内の管理などにImpero Connectを使っていただいています」(阿子島氏)
その他にもビルの監視カメラを遠隔操作する、ホテルの自動チェックイン管理に導入する、薬局の薬剤師に代わって処方箋データを遠隔で代理入力するなど例を挙げるときりがない。ある病院では、医師が持つタブレットで検査機器の検査結果を見られるようにしたことで業務を効率化できた。
このように遠隔操作することで省人化や業務の効率化を図れる。こうした多数の実績を積み上げてきたImpero Connectは、遠隔対応の強い味方といえよう。
Impero Connectがここまで支持される理由として、レスポンスの速さと接続の安定性を挙げられる。例えば設計業務に使うCAD(コンピュータ支援設計)製品の遠隔サポート用に導入した企業がある。サポート時、つまり異常時などCADが重い状態でも遠隔操作できるというわけだ。挙動の軽さ、ストレスフリーな利用につながっている。また安定性という点でも、一度接続すれば切れにくいのが特長だと阿子島氏は胸を張る。
Impero Connectを使う場合、遠隔操作される側をホスト、遠隔操作する側をゲストという。券売機を遠隔操作する場合は券売機がホスト、係員が使うサポート用端末がゲストだ。Impero ConnectとImpero Connect OnDemandはどちらも、1対1の接続だけでなく、「多対多」のマルチセッションに対応している。1台の機器を複数人で監視したり、ホストをさらに遠隔操作するなど何層かに重ねて運用したりできる。リモートワーク中にチーム内で画面共有してマーカーを引くような使い方も可能で、さまざまなシーンに対応できる。
遠隔操作は便利で使いやすいが、気になるのが情報セキュリティだ。遠隔接続のすきを狙ったサイバー攻撃の例は枚挙にいとまがない。その点、Impero Connectは4段階のセキュリティ対策を取り入れて安全性を確保している。
第1段階のホスト/ゲスト間通信では、暗号化アルゴリズム「AES」を使った通信内容の盗聴防止や、3種類の暗号化技術を使った動的鍵交換システムによるなりすまし防止などの対策で通信回線を保護している。
第2段階ではID管理やIPアドレスによるアクセス制限といったアクセス管理を行う。ホスト側に近い第3段階ではユーザーごとに操作可能な範囲や権限を管理でき、第4段階では操作ログをテキストや動画で残すことで不正な操作への対処が可能になる。
「情報セキュリティは特に力を入れています。それをさまざまな場面でアピールしているため、欧米の軍事部門や金融関係など堅牢な環境を構築したいお客さまからの引き合いが多いです。またセキュリティ対策をすると挙動が重くなる場合もありますが、Impero Connectにはそうした問題はありません。私が確認したところ、他の類似ソリューションよりも動作が軽く速かったです」(阿子島氏)
Impero Connectはもともと海外の製品だ。しかし日本で使いやすいようにしてスリーワンシステムズが提供している。同社の努力は提供バージョンへの対応に表れている。
約20年前、Impero Connectが旧名称のNetop Remote Controlだったころから提供しているため、長年使い続けている顧客も多くいる。また機器AはImpero Connectで、機器BはNetop Remote Controlというように異なるバージョンを併用しているケースもある。両バージョンの互換性はもちろんのこと、日本だけ特例で古いバージョンも使えるようにしている。このように顧客のニーズにしっかり応えることで、さまざまな業界内で高いシェアを誇るまでになった。
「リモート需要は今後ますます増加するでしょう。Impero Connectはさまざまな場面に対応できるので、弊社から『この使い方どうですか』とご提案するだけでなく、私たちが想定していない使い方をぜひ教えていただきたいです」(阿子島氏)
一般的なビジネスPCから、複雑な組み込み系システムまで多様なシーンに対応できるImpero Connectは、そうしたビジネス変革を後押しする。製品版の機能を体験できる無料版もあるので、まずは使ってその有用性を確認してみてはいかがだろうか。スリーワンシステムズに相談すれば、今後のビジネスをより広げられるだろう。
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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia NEWS編集部/掲載内容有効期限:2023年4月20日