“世界を作る”新しい方法「Omniverse」 クリエイターがツールも距離も超え協業 NVIDIAとアドビに聞くコンテンツ制作の現在地

» 2023年04月24日 10時00分 公開
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 技術の進歩はすさまじく、いまや“新たな世界を作る”ことすら可能になった――といっても仮想空間での話だが。そんな世界の創造主はクリエイターやデザイナーだ。3DCGという魔法を使ってさまざまなクリエイティブを生み出していけるようになった。

 これまでのコンテンツはテキストや写真、動画が主流で、企業のコンテンツマーケティングもデジタルパンフレットや動画に落ち着いていた。しかし直近数年でメタバースのような仮想空間でのコミュニケーションが一般に受け入れられ、3DCG空間を彩るアイテムやアバター衣装などのニーズが高まった。またEコマースやオンラインイベントのようなデジタル上の企業活動がコロナ禍で急拡大したことで、3DCGの需要が一層高まっている。

 3DCGの活躍に期待が高まる一方で、制作を担うクリエイターやデザイナーらは米Adobe製品を筆頭にした専用ツールを使いこなして質の高いコンテンツを効率的に作ることが求められる。そこで米NVIDIAはクリエイター向けプラットフォーム「Omniverse」の提供を2021年に始めた。各種ツールとの連携やファイルの互換性を高め、シームレスな連携やリアルタイムのレビューを可能にした画期的なサービスだ。

 これから3DCG制作の現場はどう変わっていくのか。クリエイターから高い支持を得るアドビと、制作現場の改革に踏み出したNVIDIAの見据えるコンテンツ制作の姿はどのようなものか。両社が登壇したセミナーから探っていく。

顧客接点はコンテンツ 品質が顧客体験を左右する

 今後12カ月で投資を増やす予定の対象テクノロジーは何か。そんな問いから始まったのがアドビのセッションだ。同社調査ではカスタマーエクスペリエンスに代表される顧客体験やエンゲージメント向上への投資が最多だった。そこで顧客とダイレクトにつながることができるコンテンツの品質をいかに上げていくかが重要だと、アドビの熊田正道氏は説明する。

photo アドビの熊田正道氏(エンタープライズ製品戦略部 Senior 3D Strategic Business Development Manager)

 近年の市場では、オンラインを通じて製品やサービスの魅力を伝えるコンテンツが売り上げを左右する傾向が強くなっている。顧客に刺さる魅了的なコンテンツを制作することが重要だが、マーケティングチームとコンテンツ制作チームの間でスキルのギャップがあり、この課題や市場背景から「3Dビジュアライゼーション」に注目が集まっていると熊田氏は解説する。

製品を忠実に再現 3Dビジュアライゼーションとは

 3Dビジュアライゼーションとは、製品の見た目やサイズ感を3DCGで忠実に再現することを指す。製品開発時のサンプル作成から販売時の製品説明まで幅広く活用でき、表現を現実に近づけるほど没入感が高まると熊田氏はいう。

 すでに導入が進んでいるメタバースなどのエンターテインメント領域に加えて、導入が加速しているアパレル業では衣装サンプルを作ったり、製造業ではプロダクトデザインに役立てたりしている他、WebマーケティングやEコマースでも使われている。

 この3Dビジュアライゼーションがもたらす効果は「Eコマースの収益増加」「開発・製造工程のコスト削減」の2つだ。実際に成果を挙げており、アドビの顧客であるコンサルティング会社の米Deloitte Digitalは「商品をARで見た消費者は購入する確率が11倍になる」とした。また家具専門ECサイトを手掛ける米Wayfairは、ECサイト内に掲載していた写真を3Dモデルに置き換えることで制作コストが10分の1になった。家具の移動時間を短縮でき、多様なバージョンを用意できるのが3Dビジュアライゼーションの強みだ。さらに二酸化炭素の排出を抑えられるため、サステナビリティの観点からも有用だ。

3DCG制作を一元化アドビの強み全部盛りソフト

 3Dビジュアライゼーションのメリットを享受している企業が使っているのが、アドビの3Dソリューション「Adobe Substance 3D Collection」だ。3Dモデルを作り、基になった物体の写真から3Dマテリアルやテクスチャを取り出して貼り付け、レンダリングするまでの一連のアプリケーションを1つに統合している。アドビならではの使いやすいUI設計に加えて、AI機能で3Dデザインプロセスを合理化したことで作業を効率的に進められるソフトウェアだ。

 さらに同社は、Adobe Substance 3D Collection向けに数千のマテリアルやモデル、照明などを収録したアセットライブラリを提供している。そしてAdobe Substance 3D Collection単体で完結ではなく、アパレルやプロダクトデザインなど各分野の専門ツールと連携できる拡張プラグインがある。これらを活用することで、より高品質な3DCGコンテンツを素早く制作できるのだ。

photo Adobe Substance 3D Collectionの機能の一部(提供:アドビ)

Amazonが活用 3Dビジュアライゼーションのメリットは?

 これらを活用しているEC大手の米Amazon.comは、各種製品の3Dアセットをストックしておくことで、新製品や新モデルのビジュアル生成にかかる時間が4分の1になった。さらにユーザーが家具のサイズや配置をARで試せるなど顧客体験の向上にも役立っている。

 こうした成果を踏まえて、3DCGの活用を検討してほしいと熊田氏は訴える。その際、従来の2Dコンテンツ制作フローに3Dを導入するにはAdobe Substance 3D Collectionが効果的な手段になるだろう。制作現場で使われているアドビ製品との互換性も高いため、これからの3DCG活用を支えてくれるはずだ。

3DCGは「複雑なチームスポーツ」 Omniverse Enterpriseが変えるワークフロー

 「3DCGの存在感が増す中で、産業活用が推奨されます。その制作現場は複雑なチームスポーツのようです」――こう語るのは、NVIDIAの田中秀明氏だ。

photo NVIDIAの田中秀明氏(エンタープライズマーケティング シニアマネージャー)

 3Dコンテンツの制作は世界各地にいるメンバーと連携することも多く、また国内でもテレワークが普及したことでクリエイターたちとクライアントら全員が一堂に会するのが難しくなった。加えて多種多様なアプリケーションを使うようになった結果、互換性の問題やファイル送受信の手間がある。

 そこでNVIDIAでは複雑化する3DCG制作のワークフローをまとめるプラットフォームとして「NVIDIA Omniverse Enterprise」を開発した。従来はクリエイターが3Dモデルを作り、プロジェクトリーダーが進捗を管理し、クライアントがレビューをする工程が別々に進んでいたため手間や無駄も多かった。NVIDIA Omniverse Enterpriseがワークフローの中心になることで、作業スペースを一元化できシンプルに管理できる。ここにさまざまなアプリケーションを接続することで作業効率を向上可能にした。

photo NVIDIA Omniverse Enterpriseの概要(提供:NVIDIA)

 中核となるサーバ「Omniverse Nucleus」はAdobe製品や「Blender」「Unreal Engine」といった3DCG制作に欠かせない120種類以上のソフトウェアを接続でき、ファイルの自動変換や遅延が少ないコラボレーションを実現。さらにグラフィックボード「NVIDIA RTX」シリーズの威力を生かしたレンダリング技術で、作った3DモデルをPCやVRゴーグルでリアルタイムに表示できる。こうした制作から仕上がりチェックまで一貫して対応することで、ワークフローの改善を実現した。

 この柔軟な連携を可能にしたのが3Dデータフォーマット「USD」(Universal Scene Description)だ。3Dアニメスタジオの米Pixarが開発したもので、メタバースなど次世代の3DCGコンテンツにおける標準フォーマットとして期待されている。すでに多数のソフトウェアがUSDを採用しており、これに対応することでデータ共有やツール連携の拡充を進めた。

photo Omniverse Nucleusを中心に、各種アセットと連携したりレンダリングしたりできる(提供:NVIDIA)

ドイツ鉄道がデジタルツイン構築 トラブル対応に活用

 NVIDIA Omniverse Enterpriseを活用できるのはどのような業種だろうか。答えは「ほぼ全ての産業」だ。エンターテインメントから学術分野のシミュレーションまで可能性は幅広い。本セミナーでは特に製造業にフォーカスして具体例の説明があった。例えば次のようなシーンで活躍する。

  • 建築設計や建物のレイアウト検討
  • 工場や倉庫など物流フローの検証
  • 機械や製品の組み立て作業シミュレーション
  • 自律搬送ロボットのトレーニングやデプロイ
  • 産業ロボットのトレーニング

 さらに現実世界を仮想空間上に再現する「デジタルツイン」を同プラットフォーム上に構築することで、シミュレーションの効率化やセンサー類から得られる情報の活用なども進められる。

 具体的な活用事例では、独Mercedes-Benzが新工場を建設する際に、産業ロボットの動線といったレイアウト検討にNVIDIA Omniverse Enterpriseを利用した。また搬送ロボットを使うAmazonの物流拠点「Amazon Robotics」では、ロボットを動かすAIのトレーニングや商品を合理的に仕分けられる倉庫レイアウト構築に向けたシミュレーションに役立てた。

 興味深いのがドイツ鉄道(Deutsche Bahn)の事例だ。鉄道網を丸ごと再現したデジタルツインを構築。駅のホームから線路に物が落ちたというトラブルや、大雪が降った状況をシミュレーションすることで円滑な列車運行を実現している。

クラウドサービス提供へ 3DCGのメリットを広げる

 3DCGやデジタルツインのビジネス導入を支えるNVIDIA Omniverse Enterpriseだが、田中氏はさらなるチャレンジを2つ掲げた。1つ目はクラウドサービス「NVIDIA Omniverse Cloud」だ。リアルタイムレンダリングなどをクラウドサーバで担うことで、ゲーミングPCやワークステーションのようなハイスペックPCでなくても3DCGのメリットを享受できる。

 2つ目がメタバースには欠かせないアバターをクラウド上で動かす技術「NVIDIA Omniverse ACE」(Avatar Cloud Engine)だ。3Dキャラクターを動かしたり口の動きをリアルに表現するインタラクティブなアバター開発を支援したりする。すでに早期アクセスを始めており、今後本格展開をする予定ということで夢が広がる。

「ちょっと試したいかも」に対応 SB C&Sが検証機を用意

photo SB C&Sの丸山香織氏(ICT事業本部 販売推進・技術本部 販売推進統括部 NVIDIA&AI事業推進室)

 アドビとNVIDIAから3DCGの可能性とコンテンツ制作の姿が提示された本セミナー。企画したのは、国内でIT流通を手掛けるSB C&Sだ。両社の製品も取り扱っており、同社の丸山香織氏は「登場した製品をトライアルしてみたいなど気になった方はお声掛けください」と話す。

 SB C&Sは国内外の先進テクノロジーを、国内企業向けに使いやすくして提供しているのが特長だ。NVIDIA Omniverse Enterpriseについても、リモート環境での検証や「NVIDIA RTX A6000」など検証用GPUの貸し出しを実施している。「いまAdobe製品を使っているが、Omniverse上でどうなるか試したい」といった人は気軽に相談してみると、得るものが大きいだろう。

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