「DXを実現する最後の機会」 生成AIは日本企業の“危機”をどう救う? “いま知りたい”活用ポイントを徹底解説

» 2023年08月24日 10時00分 公開
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 ChatGPTなどの生成AIが話題になって1年がたとうとしている現在、すでにDXの成否や事業の競争力を左右するテクノロジーになりつつある。しかし多くの企業が、生成AIの価値を最大限生かせているとはいえない。背景にある、業務利用というハードルの高さや経営層の関与が足りないといった課題をどう乗り越えていけばいいのか。

 生成AIの活用と企業の課題解決を後押しすべく、AIブームの中心にいるエヌビディアとキオクシア、デル・テクノロジーズの3社が集まってオンラインセミナーを開催した。今回は「生成AI時代到来 〜グローバル競争を勝ち抜くAI開発基盤の必要性〜」(2023年7月18日開催)と題されたセミナーのレポートを通して、日本における生成AIの活用を加速させるヒントを探す。

ChatGPTの衝撃は“iPhoneレベル” 生成AIの経済利益は「日本のGDP並み」

photo エヌビディアの平畠浩司氏

 「ChatGPTは、iPhoneが登場したときと同じくらいのインパクトがあり、今後広がっていくという期待から、メディアでは『iPhoneモーメント』という言葉が使われています」――こう話すのはエヌビディアの平畠浩司氏(エンタープライズ事業本部 事業開発マネージャー)だ。

 平畠氏は講演内で複数のレポートを示し、「生成AIの経済的な影響についてさまざまなレポートが出ています。規模感でいうと日本のGDPとほぼ同じインパクトだといわれています」と説明する。IT業界はもちろん、製造業や小売、化学などさまざまな領域に影響を及ぼすとされている。

 その一方で、日本における生成AIの開発は先進企業には追い付いておらず、一部企業が開発を進めている状況だ。

 平畠氏はAIに関する研究出版物数の推移を、OECD加盟国による研究機関「OECD.AI」のデータで示した。日本は、1990年には米国と英国に次いで第3位だった。しかしその後、徐々に順位を落としていき2021年には第6位になってしまう。対して急成長したのが中国だった。こうした状況に、平畠氏は危機感を覚えると話す。

 「生成AIの経済的インパクトが日本のGDPと同じくらいといわれる中、日本と海外の取り組み状況に差があると、5〜10年後にどのような結果になるか怖さがあります」(平畠氏)

photo AI研究における日本の競争力(平畠氏の資料より)

経産省「真のDXを実現する最後の機会」 生成AIでイノベーションを起こすには?

 平畠氏のような危機感は政府も持っている。経済産業省が23年5月に公表した「半導体・デジタル産業戦略」では、生成AIの登場に触れながら「我が国産業全体として真のDXを実現する最後の機会であり、(中略)この流れに取り残されることは死活問題」と表現している。

 では、企業は生成AIをどう活用すればいいのか。平畠氏は他社と差別化するためには何かしらの領域に特化した生成AIが必要になると話す。特化の方向性は次の3つだ。

  1. 既存モデルに自社の独自データを学習させる
  2. 既存モデルを再学習するなどして微調整(ファインチューニング)する
  3. 特定の用途を想定した小規模なAIモデルを作る

 エヌビディアではこうした生成AIモデルの開発や構築、調整を支援するサービス「NVIDIA NeMO Framework」を提供している。事前学習済みモデルを組み込んだ学習・推論フレームワークで、モデルのカスタマイズにも対応しているため、生成AIの活用に踏み出す役に立つと平畠氏は説明した。

“正しい出力結果”を生成 「記憶検索型AI」の強みとは?

 いざ生成AIを活用しようとすると、いくつか課題が出てくる。事実ではない誤った出力結果を生成してしまう点、生成AIの推論過程がブラックボックス化して誤った理由を解析できない点、知識の拡張が難しく、新たな情報を学習させるには再学習のコストや過去に覚えた知識を失う可能性があるといった点だ。

photo キオクシアの出口淳氏

 そこで「記憶検索型AI」を提案するのがキオクシアだ。学習時の計算性能を上げるだけでなく、情報蓄積量を増すことでAIの進化を推し進める考え方だ。全ての情報をAIに事前学習させるのではなく、フラッシュメモリや外部ストレージなどの外部記憶装置に情報を保存しておき、人間の指示内容に応じて外部記憶装置内を検索・参照して出力結果を生成する仕組みだ。いわば辞書引きやいい意味でのカンニングで、この仕組みが有利な場合が多いとキオクシアの出口淳氏(メモリ技術研究所 システム技術研究開発センター システムコア技術開発第二部 IP技術第三担当 グループ長)は説明する。

 例えば21年に作られた文章生成AIに「現在の英国王は誰か」と聞くと、エリザベス2世と答える。これはAIが学習した情報が21年時点のものだからだ。しかし「現在の」と聞いているので、22年9月に即位したチャールズ3世と答えてほしい。そこで記憶検索型AIの出番だ。AIを再学習するのではなく、外部記憶装置に最新のニュースや文書などを保存しておき、その内容を参照することで正確な回答を出せる。情報のアップデートが可能になる他、回答の基になった情報源を明示できる点が特長だ。

 「社内の情報を外部ストレージに蓄積するようなケースが増えるはずです。今後、検索対象が大規模化することが確実な中で、ストレージも次世代AIのキーデバイスの一つになるでしょう」(出口氏)

photo 記憶検索型AIの利用イメージ(出口氏の講演資料より)

生成AIのカギは開発インフラ どのような環境が必要か?

photo デル・テクノロジーズの増月孝信氏

 「生成AIは開発インフラが重要です。世界的に高性能GPUの争奪戦が始まっている中、日本は来年度の予算で投資を検討しているような段階です。スタートラインが遅れたら国内での展開がもっと遅れることを危惧しています」――こう話すのはデル・テクノロジーズの増月孝信氏(DCWソリューション本部 シニア・ビジネス開発マネージャー AI Specialist/CTO Ambassador)だ。

 では生成AIに求められるインフラとは何か。そもそもニーズが高い生成AIは汎用的なモデルよりも自社の事業に合った専門的なモデルだ。さらに学習データが最新情報ではない場合、自社のビジネスサイクルに適用できないため自社でコントロールできるAIが必要になる。

 こうしたニーズを満たすために、エヌビディアとデル・テクノロジーズが発表したサービスが「Project Helix(=Dell Validated Design for Generative AI with NVIDIA)」だ。拡張性のある生成AIを自社でコントロールできる環境をフルスタックで提供する。事前学習済みモデルを基に各社のニーズや専門性に応じてカスタマイズする仕組みで、開発時間の短縮や専門分野への特化を可能にした。

 そして学習・推論を行うGPU間で大量のデータを転送するには適切なネットワークも欠かせない。さまざまなワークロードが混在するパブリッククラウドのGPUインスタンスでは性能を十二分に発揮できない場合もあり、データ転送コストや学習にセキュリティの高いデータを活用する点なども考慮すると、効率よく生成AIを使うには最新テクノロジーをオンプレミスの環境に用意するのがいいと増月氏は話す。

photo 生成AIの開発工程。Project Helixでは「事前学習済みモデル」からスタートするためコスト負担を軽減できる(増月氏の講演資料より)

「経営層の関与が重要」「AIは道具」 3社が語るAI活用のポイント

 ここまで3社の講演で、生成AIのビジネス活用がいかに重要か伝わっただろう。ここからはITmedia NEWS編集部の編集記者・荒岡瑛一郎が司会を務め、パネルディスカッション形式で具体的にどう活用すればいいのか議論した。

photo 左からITmedia NEWS編集部の荒岡、エヌビディアの平畠氏、キオクシアの出口氏、デル・テクノロジーズの増月氏

――日本企業のDXや生成AIの活用が進まない背景の一つに、経営層の関与が足りないという指摘があります。エヌビディアの平畠さんは、この点をどうご覧になっていますか。

平畠氏(エヌビディア) 生成AI時代に、DXの遅れが改めて指摘されている状況だと考えています。そもそもDXはトランスフォーメーション、つまり事業の変革を掲げているのに、経営層の関与がなくて実現できるのか疑問です。経営層の関与がないと小規模な予算の中でやりたいことを妥協したり、社内の承認プロセスに時間がかかったりして結局トランスフォーメーションにたどり着かないことがあります。

――改めてDXの遅れが指摘されているということでした。裏を返せば、経営層がしっかり指揮を取って生成AIを活用すれば再起を図れるのではないでしょうか。では、生成AIを使う意義についてデル・テクノロジーズの増月さんはいかがお考えですか。

増月氏(デル・テクノロジーズ) 生成AIを“道具”として積極的に使うべきです。過去にもインターネットやPCが登場したことで人々の生活や仕事が豊かになる経験がありました。生成AIもそれに続くテクノロジーだと考えています。例えば当社の場合は、生成AIを使う際の承認プロセスを社内の誰でも見られるようにすることで「あの部署がこう使うなら、自分の業務にも生かせそうだ」と活用が広がっています。

――AIというと“すごいテクノロジー”を導入すると考えがちですが、道具と言われると活用せざるを得ないという認識になりやすいですね。それではAIの活用方法の一つである記憶検索型AIは、現場でどう生かせるのでしょうか。キオクシアの出口さん、ご紹介ください。

出口氏(キオクシア) 記憶検索型AIはデータを即時活用できるようになります。従来型AIは一定期間の学習が必要です。しかしその期間にも社内の文書や、製造業の場合は工場のデータなどが日々生み出されているので、その学習期間に生まれた情報には対応できなくなります。そこで常時生まれるデータを外部に保存して、学習済みモデルと組み合わせることでデータをすぐに使えるので、現場のリアルタイムな業務をサポートできます。

――日々生まれるデータを活用する方法としての記憶検索型AIということでした。最後に、今後企業がAIを活用して課題解決やDXを進めていくためアドバイスをいただけますか。

平畠氏(エヌビディア) やる気次第です。根性論ではなく、これまで検討の時間が長くて物事が進まない状況が多いので、AIについては強い覚悟で「やる」と決めることが重要です。そこに経営層が参画することが重要で、そうでもしないと進まないと感じています。

 さらに昨今の生成AIは事前学習済みモデルがたくさん公開されているので、今日にでも始める土台は整っています。すでにAI開発をスタートしているなら、いかに早く大規模に進めるかに焦点を当てて取り組んでいただきたいです。これからという企業は、すぐに「AI活用の取り組み方」を検索して、明日には何かアクションを起こしていただきたいです。

出口氏(キオクシア) 日本で生成AIの活用や技術開発が普及すればDXに適した生成AIや活用例がどんどん出てくるでしょう。欧米に追い付き追い抜くこともできると考えています。

増月氏(デル・テクノロジーズ) 生成AIは便利なツールです。「AIで仕事がなくなる」ではなく働き方改革と捉えるのがいいかもしれません。そして生成AIのモデルは技術的に限界に行き着いているかもしれません。学習モデルが巨大になり学習・推論コストが増す状況を見ると、人間の脳でいう「忘れること」を覚えさせるテクノロジーが次に盛り上がると個人的には考えています。

――DXや事業の変革に役立つ生成AIの活用を、明日にでも始めることが大切ですね。活用が広がれば、きっと日本企業全体がさらに進化できるでしょう。生成AIの活用に対する危機感と期待を感じられる時間でした。本日はありがとうございました。

 今回のセミナーは、生成AIを活用する際に必ずチェックしたい基本的な考え方から、経営層の説得に使える客観的なデータ、AI開発インフラの情報など参考になる情報が盛りだくさんだった。こちらでアーカイブ配信をしているので、各社の講演内容をじっくり確認してはいかがだろうか。

生成AIの活用方法をオンデマンド配信でチェック!

 生成AIが自社のDXや事業戦略にどう役立つのか、AIを活用して競争力を高めるにはどうすればいいのか、具体的な活用方法とは――生成AIのビジネス活用についてもっと知りたい方は、こちらのページからオンデマンド配信をご覧ください。3社の講演とパネルディスカッションを全てご覧いただけます。

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生成AI開発の先進企業 その開発基盤をチェック

 日本でも、生成AIの開発を積極的に進める先進企業が登場しています。そんな先進企業をお迎えし、生成AIの開発基盤について解説するイベントを開催します。2023年10月13日(金)の「Dell Technologies Forum」のセッションをぜひご覧ください。こちらからご登録いただけます。

  • 日程:2023年10月13日(金)
  • 時間:16:00〜16:30のブレイクアウトセッション
  • 会場:ANAインターコンチネンタルホテル東京(オンライン配信あり)
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