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「ひと皮むけた」──そんな2004年だったかな(1/3 ページ)

衝撃だったり、参入したり、立ち上がったり──前年とはうってかわって多彩な話題に注目が集まった2004年を振り返ろう。

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 「まだ終わらんよ」と総括した昨年から一変し、明暗さまざまな話題に注目が集まった2004年という年。米国でも「一時代の終わり」を実感したように、古びたトレンドは飼っていたドッグイヤーに手をかまれ、主役は交代した。出口を探し続けていた時期は終わり、長いトンネルを抜けると、気が付けば私たちは脱皮していた──ようにも思える2004年を振り返った。

やっぱりWinnyの衝撃

 今年はやはりWinnyの衝撃だ。P2Pファイル共有ソフトの開発者が著作権法違反ほう助で逮捕・起訴される事態となり、ネット界ではさまざまな議論が巻き起こった。ITmedia Newsの年間アクセスランキングでもWinny関連記事が目立つ。「キンタマ」騒動など、いまだWinnyネタは尽きない。

 「実はWinnyユーザーはあまり減っていない」とも言われるが、P2Pユーザーへの風当たりは強まっている。日本レコード協会と加盟社はP2Pユーザーの情報開示を請求し一部を除きISPも開示に応じた

狙われる個人情報

 個人情報保護法の本格施行を2005年4月に控えながら、大手企業からの個人情報漏えいが相次いだ。Yahoo!BBユーザー約452万人分の情報流出で厳しい批判を浴びたソフトバンクBBはADSLユーザーの獲得ペースが落ち、ジャパネットたかたは通販事業の一時停止を余儀なくされた。信用情報を含むクレジットカード情報が漏れたケースもあり、情報漏えい対策は企業トップが取り組むべき最重要課題になってきた。が、情報を漏えいされてしまったユーザーはなすすべもない。

 情報漏えいに絡み、コンピューターソフトウェア著作権協会(ACCS)のWebサイトに不正にアクセスしたとして元京都大学研究員が逮捕、起訴された事件に注目が集まった。元研究員は無罪を主張して真っ向から争っている。編集部は公開された公判についてはすべて傍聴してきたが、今のところ検察側が攻めあぐねている印象を受けている。

 それを使えば素晴らしく便利な未来が待っているというRFIDタグも含め、実用性やセールストーク優先でセキュリティ問題は先送りする傾向にあるIT業界の課題は山積み。今後は“物わかりのいい”ユーザーばかりではないことを肝に銘じる必要があろう。

ころころ笑っていようね

 2004年のネット界を席巻したのはBlogだろう。大手ポータルが続々とサービスをスタートして一気に火がついた。専門的な話題に特化したものから「彼氏を作る」女子大生までバラエティに富み、情報収集の場としても読み物としても定着した。

 ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)の本格的な立ち上がりも見逃せない。最大手の「mixi」はねずみ算的に会員数が拡大し、「依存症」というユーザーも現れた。個人が運営していた「GREE」法人化に踏み切る

 相次ぐ台風に見舞われた国内に追い打ちをかけるように起きた新潟県中越地震では、はてながポイントによる義援金を呼び掛けるなど、ネットユーザーの草の根的な支援が広がった。中越地震では固定電話、携帯電話とも不通になったが、携帯電話向け伝言板が活躍。だが伝言板にはキャリアの壁も指摘され、KDDIとツーカーが来年1月に始める伝言板では、NTTドコモとの連携が実現している。年末に悲惨な被害をもたらしたスマトラ島沖地震では、世界のBlogユーザーも立ち上がった

 2004年、取材を続けて感じたのはネット界に台頭してきた新世代だ。ネットバブル崩壊後の荒野から産まれたある種の達観とでも言うべきか。ある雑誌が「負け組ではなく『笑い組』」と指摘した気分のように、ギラギラせず気負わずに現在と向き合い今を楽しむ姿勢がネットの活動を支えているように思う。

狙われている?恐るべき?子どもたち

 長崎県佐世保市で起きた女児殺害事件をきっかけに、子どものネットモラル論議も巻き起こった。大手メディアの“ネットは怖い”論に対し反発するネットユーザーの声も高かったが、問題となった事件からネットを簡単に引き算して考えるのが難しいように思うのが大方の印象だろう。それはおそらく、ネットに憎悪を増幅させる力を感じているユーザーそれぞれの実感に基づいている。

 実際、小学生のネット利用は想像以上に進んでいる。通るべき段階を飛び越していきなり大人の社会に放り込まれる子どもたちに“自己責任”を問うことはできない。各地で開かれたネットモラル教室は必ずしも子どもの人気は高くないが(“勉強”が楽しくないのは当然だ)、今は地道な取り組みを積み重ねるしかない。

まだまだWebブラウザは熱いようだ

 数々の脆弱性が明らかにされながら、Microsoftは「最新のInternet ExplorerはXPへの有料アップグレードで」と宣言。同社は「XPへの需要を刺激するためにセキュリティ問題を利用しているとの見方を否定した」というが、同様の方針を自動車メーカーが明らかにすれば世間は黙ってはいまい。

 その後登場したFirefoxは、IEの世界制覇後としては最大級の成果をあげつつある。New York Timesに「Spread Firefox」広告が掲載された時点で、ダウンロード数は1100万を超えた。Operaは携帯電話への進出も果たし、とうに枯れた話題と思われたWebブラウザ分野の動きも今年は活発だった。

 IT企業ではSalesforce.comと並び2004年最大級のIPOを果たしたGoogle。MSNが新エンジンを公開し、これにGoogleもデータベース拡大で対抗するなど、まだまだ検索大手の競争も熱い。国内ではGoogleニュースが9月にスタートし、1カ月で100万人を集めた。Googleは東京にラボを設け、創業者2人がそろって来日した。

 一時は「エイプリルフールネタ」と報道の訂正騒ぎにもなった容量1Gバイトの「Gmail」。IPO資金をこれに使うのか、との見方もあったが、Google独自のファイルシステムを活用し、実は1人当たりのコストは1ドルもかかっていないとの観測もある。日本でも「livedoor ギガメーラー」を開始するなど、無料メールサービスの大容量化に火がついた。

 検索大手の新たな戦場はデスクトップ検索になりそうだが、使い道がまだピンと来ないユーザーも多いだろう。大いなる可能性も秘めつつ、まだこれからのサービスだ。

ガリバーNTTを揺さぶるソフトバンク

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