PC用プロセッサの販売をめぐり、Intelの日本法人・インテルが国内PCメーカーに対しAMD製CPUを採用しないよう働きかけ、損害をこうむったとして、AMDの日本法人・日本AMDは6月30日、インテルに合計5500万ドル(約60億円)の損害賠償を求める訴訟2件を起こした。
訴訟は東京高裁と東京地裁に1件ずつ起こし、損害賠償請求額は訴訟2件を合計して5500万ドルとした。
高裁訴訟は独占禁止法に基づき提訴した。日本AMDの主張では、公正取引委員会が排除勧告したインテルの独禁法違反行為により、AMDは東芝、ソニー、日立製作所との取り引きを失なった上、NECと富士通との取引量も激減し、深刻な損害を受けた。インテルが排除勧告を応諾したため提訴したとしている。
地裁訴訟では、インテルによる営業妨害行為で生じた損害について、民法の不法行為法(709条)に基づき損害賠償を求めている。
インテルによる営業妨害行為だとして、日本AMDが訴状で挙げたのは以下の通り。
(1)国内PCメーカーに対し、資金提供などを条件にPCの製品カタログやWebサイトからAMD製プロセッサ搭載モデルを削除するよう指示した。
(2)AMDの新製品発表会に参加を予定していた顧客に対し圧力をかけ、参加を辞退させた。
(3)AMDと顧客の共同プロモーションイベント用に製造されたAMD製プロセッサ新製品を搭載したPCを、イベント直前に全台買い取り、インテル製プロセッサを搭載したPCに入れ替えさせた。この際、インテル製プロセッサ搭載PC全台を無償提供し、さらに宣伝費用を支給するなどした。
日本AMDは同日午後都内で会見。吉澤俊介取締役は「インテルが行っている世界的規模で独占的地位の乱用行為の阻止と逸失利益の回復が目的」とコメントした。
米AMDは6月28日、インテルが米独禁法に違反しているとして連邦地裁に提訴した。日本訴訟は「本社法務部の判断」だとしている。
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