「905i、ここまで売れるとは思わなかった」──ドコモ・中村社長
905iは200万台以上を売り上げ、一部機種では品薄が続いている。「正直、ここまで売れると思っていなかった」とドコモの中村社長。「iPhoneには興味がある」とも語った。
「正直、ここまで売れると思わなかった。売れ行きを読み誤り、品薄でご迷惑をおかけしている」――NTTドコモの中村維夫社長は1月28日の決算会見の席で、「905i」の好調ぶりを語った。人気の「P905i」「N905i」は特に品薄。「2月前半ごろまで品の手当てがつかない」(中村社長)状態だ。
905iは昨年11月、新販売方式導入とともに発売した端末だ。各端末が「すべての機能を標準搭載した」(中村社長)“全部入り”だった上、割賦販売(バリューコース)を選べば頭金無料で購入できる――といったことから予想を上回る売れ行きを見せ、販売数は12月半ばまでに100万台、今年1月半ばまでに200万台を突破した。
発売日に中村社長は都内の大手家電量販店で発売記念セレモニーに参加。「店頭にあんなにお客さんが並んでくれたのはずいぶん久しぶりでは。うれしかった」と感慨深げに振り返る。
ただ905iが収益や純増数に与えた影響は「微妙」(坪内和人執行役員)だ。「台数は思ったよりも出たが、手数料もあり、新規契約よりも機種変更に傾いている。収益や純増数にどう影響するかは、長い目で見る必要がある」(坪内執行役員)
iPhoneには「興味がある」
中村社長は「iPhoneに興味がある」と話す。「3G携帯を発売してから5〜6年。2G並みに薄く小さくし、機能も充実して完成型に近づいてきた。今後は使い勝手やデザインにウエイトがシフトしてくるだろう。使い勝手やデザインに優れた“iPhone的”なもの”を、日本も世界も追いかけるのでは」
「15の春」と「ホワイト学割」
春商戦は「705iとあわせて、905iが潤沢に出るだろう」と予想する。「われわれは『15の春』と呼んでいるのだが、中学生が高校生になる時が(新規契約の)山」(中村社長)
ただ気になるのは、ソフトバンクモバイルが発表した学生向けの割引プラン「ホワイト学割」だ。「春商戦へのインパクトはそれなりにあると思う。競争は厳しくなるだろう」(中村社長)
同社も同日、22歳以下のユーザーが新規契約する際などに、端末代金から1万500円割り引く期間限定のキャンペーンを発表した。ただこれは「例年の3月期対応」(中村社長)で、ホワイト学割対抗という位置付けではないようだ。
ソフトバンクが発表したティファニーブランドの1000万円の端末については「ユーザーの趣味が多様化している中、われわれもブランドとコラボレーションした端末は考えているが、そこまでのもの(高額商品)は考えていない」と話した。
グローバル端末で海外展開を積極化?
海外市場も視野に入れる。「国内の携帯電話契約数が1億を超え、今後も絶対数が増えると思えない。大きく方向変えるべき時だろう。グローバルに通用するベースの上にiモードを載せていくなど、海外に合わせられるように変える必要がある。時間はかかるだろうが」
代理店は「売り場」から「サポート拠点」へ
市場の飽和による新規加入者の減少や割賦販売方式の導入で、販売代理店の役割も変わっていくという。
販売奨励金を中心にした以前の販売方式は、代理店側が値引き原資をある程度自由に配分。特定の機種を一気に値下げして売る――といったことも可能だった。だが新販売方式では割賦販売が主軸。「端末価格の自由度がなくなり、荒稼ぎはできない代わりに、きちんと売ってユーザーとつながっているところがもうかる仕組みになる」(坪内執行役員)
中村社長は「従来の代理店は『売ってナンボ』だったが、これからは売るだけでなく、アフターサポートやユーザーの相談を受ける場になっていくだろう。大きな代理店と量販店、ドコモショップが残っていくだろう」(中村社長)と話した。
未成年者のフィルタリングは
未成年へのフィルタリングサービス原則導入は2月から始める。同社が指定したサイトのみ閲覧できる「キッズiモードフィルタ」を、まずは導入していく方針だ。
「青少年にとっての影響をどう考えるかが最初にあるべきところ。キッズiモードフィルタは若干厳しいやり方だが、出会い系などへのアクセスを制限する緊急避難的な形だ」(中村社長)
キッズiモードフィルタは、学校の連絡掲示板や社会のコミュニティーサイトなど、危険性のないサイトにもアクセスできなくなる。問題のないサイトをホワイトリストに追加できる仕組みも「急いで開発したい」(中村社長)とした。
Skypeは「大きな問題」
Skypeのようにインターネット経由で無料で通話できるサービスについては「すべての通信事業者にとって大きな問題。どういう形の防衛策が必要か、考えなくてはいけない。まだ名案はない」と話した。
減収減益も「想定通り」
2007年4〜12月期の連結決算(米国会計基準)は、売上高が3兆5220億円(前年同期比2.1%減:うち携帯電話事業からの売り上げは同3.1%減の3兆605億円)、営業利益は6250億円(同7.7%減)、税引き前利益は6807億円(同7.6%減)、純利益は3765億円(同6.7%減)。
割引プランが想定以上に人気で減収減益となったが、売上高は通年目標の80.1%を達成し、「想定通りの進ちょく」(中村社長)。10〜12月期(第3四半期)に限ってみると、新販売モデル導入に伴う販売奨励金削減や端末原価の削減などで営業費用が減り、営業利益は前年同期比32.1%増の2236億円に伸びた。
音声ARPU(加入者1人当たりの売上高)は減少が続いているが、「パケホーダイ」加入者増でパケットARPUは増加基調。3QのARPUは6290円と前年同期比5.7%減ったが、パケットARPUは2200円と同9.5%増えた。
3Qの解約率は0.74%で「期待通りに下がっている。さらに低下するだろう」(中村社長)。今後はネットワークをさらに拡充するほか、長期利用者向けの優遇プランなども検討する。「既存のユーザーをさらに大事にしていきたい」(中村社長)
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