「スマートフォンはまだ早い」 au、メール無料と“全方位端末”で春商戦へ
au新モデルは基本機能を充実させた堅実なラインアップで、シニア層や子どもを含めた幅広い層を狙う。メール無料の「ガンガンメール」で料金面でも攻勢をかけ、春商戦でシェア拡大を目指す。
「最需要期に向かってきっちりした端末を出していく」――KDDIの小野寺正社長は10月19日に開いた2009年秋冬、10年春モデルの狙いをこう述べた。
新モデルは13機種で、12Mピクセルカメラを搭載したハイエンド機や、薄型ワンセグ機、シニア・子ども用端末まで、幅広いラインアップ。スマートフォンはないものの、「ユーザーのカテゴリー別に訴求できる端末をそろえた」と小野寺社長は胸を張る。
基本使用料などの合計が最低月額1095円で、メールを送受信相手にかかわらず無料で利用できる「ガンガンメール」も投入し、「auはメールが無料」とPR。「端末と料金、サービスがそろった」と小野寺正社長は自信をみせる。
ハイエンドからシニア、子ども向けまで
新機種は、12Mピクセルカメラを搭載した「EXILIMケータイ CA003」「AQUOS SHOT SH003」といったフラッグシップ機、8Mカメラを搭載した「EXILIMケータイ CA004」などミドルレンジ、ワンセグ対応スライド携帯として世界最薄の「SA001」など薄型モデル、au初の7色展開の「SH005」、シニア層向け「簡単ケータイ K004」、セコムと連動した防犯ブザー付き子ども向け「mamorino」などをそろえた。
今年夏以降のau端末は、夏モデルの“読書ケータイ”「biblio」(ビブリオ)、「iida」ブランドのロボット付きコンセプト機など、個性的な端末が目立ったが、来春に向けての新モデルは基本機能を追求したベーシックなラインアップで、“2年縛り”が解けるNTTドコモユーザーからの乗り換え需要取り込みを狙う。シニア向けや子ども向けは「まだ開拓し切れていない分野」ととらえており、簡単ケータイや「mamorino」で需要を開拓していく。
スマートフォン、「日本では未知数」
夏商戦はiPhone一人勝ちともいわれ、スマートフォンに注目が集まっているが、同社のスマートフォンは「E30HT」1機種のみで、新モデルにもスマートフォンがない。
小野寺社長は、「iPhoneはそれなりに出たことは承知しているが、台数としてはまだまだ。日本人はテンキー入力に慣れており、スマートフォンが日本でどこまで使われるかは検証が必要」と考えており、本格投入は時期尚早という見方だ。
スマートフォンは、特に法人向け端末として今度も研究していくが、まずは通常の端末の充実を優先。iPhoneには「独自性のある高機能な端末で対抗していく」という。
「メールがタダ」 料金でも攻勢
料金面でも攻勢をかける。メール無料をうたう「ガンガンメール」で、au=安いというイメージを再構築。CMでは土屋アンナさんが、笑福亭鶴瓶さんの巨大な顔画像の前で、「相手が誰でも関係ない、ガンガンメールしてタダ!」とロック調で歌い、メール無料のイメージを強く印象付けていく。
5月には「指定通話定額」「ダブル定額スーパーライト」を発表するなど、料金の思い切った引き下げに取り組んできた。「数年前までauは、デザインと料金の安さが売りだったが、他社が料金を引き下げてきた。すぐに追いかけることも可能だったが、それでは埋没する。端末がそろうまで料金引き下げは待っていた」――今年になって料金面で攻勢をかけた理由を、小野寺社長はこう話す。
サービス面では、動画・楽曲配信サービス「LISMO」に新たに電子書籍を追加。「オンガク、エイゾウ、ホン、LISMO」とPR。コンテンツ販売の拡充につなげていく考えだ。強みの絵文字も強化。一部機種では3000種類に拡充したほか、デコレーション絵文字も通常の絵文字と同様な操作性で使えるようにしている。
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