「非モテSNS」のえがちゃん起業 「エイプリルフールネタじゃありません」
「非モテSNS」のえがちゃんが脱サラし、起業した(※注:エイプリルフールのネタではありません)。
「エイプリルフールのネタじゃないですよ!」――「非モテSNS」を運営する永上裕之さん(えがみ・ひろゆき、愛称・えがちゃん、23歳)が脱サラし、Webサービスを企画・運営する「株式会社ホットココア」を4月1日付けで設立した。「僕っぽいと思って」と、わざわざこの日に登記した。
「出来上がったばかりなんです」とうれしそうにココア色の名刺を差し出すえがちゃんは、高校生のころから起業を夢見ていた。
資本金は200万円。社員は2人。「非モテSNS」などこれまで作ったサービスは個人で運営を続け、新会社では「ココロがホっとするサービス」を新たに開発・提供する計画だ。FacebookやTwitterのように世界で使われるサービスの提供を目指している。
「ぼくは頭のネジが1個ずれているので、いけるんじゃないかな」とえがちゃんはニヤリ。妙に自信満々なわけを探ってみた。
個人でWebサービスを運営する限界
企業のようにお金はかけられないが、企画力なら負けないという思いで、IT企業の営業マンのかたわら、Twitterライクなミニブログ「pimote」や、“自宅警備員”向けの「ニート村SNS」などWebサービスを個人で開発してきた。
2008年11月は「非モテSNS」をスタート。オープンソースの「OpenPNE」を使い、コストを抑えて構築した。モテない人だけが集まり、傷をなめあうというコンセプトで、mixiやGREEなどとは異なる楽しさを提案し、4万会員を集めている。
規模が大きくなるにつれ、趣味で運営してくことに限界を感じるように。ユーザーが増えてもサーバを増強するお金がなかったり、仕事で忙しいためにユーザーからの問い合わせにすぐに返信できなかったりすることが悔しかったという。
「もっとたくさんのお金や人の知恵、時間をかけて、会社としてWebサービスに取り組めば、さらにすごいことができるんじゃないか」と、起業を意識するようになった。
“社長業”へのあこがれ
非モテSNSの運営スタッフは20人。全員がボランティアだ。これまでに150人採用し、130人が辞めていった。運営スタッフ全員とコミュニケーションをとるのは大変だったとえがちゃんは振り返る。
高校時代に苦い経験がある。ネットラジオポータルを始めたものの、運営仲間10人と役割分担などでもめて失敗したのだ。
そのため非モテSNSでは、顧客管理システム「Salesforce CRM」を使って、スタッフがSNSの投稿内容を管理する仕組みを構築したり、メーリングリストでスタッフ同士が情報共有したりと、スムーズに運営できるよう工夫。個人ではなく組織で動くことのやりがいに気づいたという。
新しい機能や企画を発表するたびに、運営スタッフと一緒にPCの前でユーザーからの反響を確認し、喜び合えることもうれしかった。経営者として、人材育成や組織作りを学んでいきたい――社長業へのあこがれが強くなり、この3月、会社を辞めた。
社員はえがちゃんを含め2人。右腕となるもう1人は、えがちゃんが以前勤めていたリクルート時代の同僚だ。Webサイトの開発面のほとんどを任せ、えがちゃん自身は社長業に集中する計画という。
IT業界を盛り上げたい
新会社では、自社サービスに掲載する広告と、Webサービスに関するコンサルティングなどで収益を得る方針。「低空飛行でも会社がつぶれさえしなければいいので、ヒットするまでできるだけたくさんのサービスを出していきたい」という。
第1弾は、7月ごろに公開予定の「エニィメール」(仮)。詳細はまだ公開できないが、ユーザー同士がメールを使ってTwitterのように気軽にコミュニケーションできるようにするという。5年以内に100万会員の獲得が目標だ。
資本金の200万円のうち、100万円は両親が貸してくれた。起業を両親に伝えると、起業を夢見てきたえがちゃんのために、内緒で貯金していたことを明かされたという。「親が定年を迎える3年後に10倍にして返したい」と意気込む。
非モテSNSなどえがちゃんがこれまでに作ったサービスは個人で運営を続ける。新会社に引き継げば「収益を追求しないといけなくなる」ため。特に非モテSNSは、採算を度外視してでも、ユーザーの方を向いて運営して面白くしていきたいという。
「IT業界を盛り上げたいと思っているんです」――“非モテのネ申”を名乗ってみたり、童貞だと公言したりと、これまでやりたい放題(!?)だったえがちゃんだが、真剣な顔でこう話す。
「個人サイトをやっていても遊びの延長上でしかない。IT業界を盛り上げるため、ちゃんと会社として評価を得たい。ホットココアはすごい真面目にやりたいんです」
ひと皮むけたえがちゃんに注目だ。
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