なぜiPadなの?──KORG iELECTRIBE開発秘話を聞いてきた(3/3 ページ)
iPad発売と同時にリリースされ、絶賛を浴びている「KORG iELECTRIBE」。大手メーカーとして初めて「楽器プラットフォームとしてのiPad」に参入したコルグの担当者が開発秘話を明かしてくれた。
入れたもの、入れなかったもの
機能的には十分で、操作しがいのあるマシンなので、演奏の成果をDAWに持っていったりしたいという要求は当然出てくる。例えばIntuaのAudioCopy/Pasteなど、出力したWAVをほかのアプリと共有する技術を採用する可能性について聞いてみた。
井上氏はファイル共有の実現方法を「いくつか検討しています。(Intuaのように)アプリ間通信というのも面白いけれど、iPadにはファイル共有機能がついているので、単純にiTunesベースでやってしまってもいいかなと。どういう形でということは確定してはいないのですが、期待して欲しいですね」と話している。
今後のバージョンアップに期待しよう。
さらに、iPadらしい機能である加速度センサーへの対応をしなかった理由についても聞いた。操作系をシンプルにするという理由からだろうか。
「それもありますが、iPadを振っている姿がどうにもカッコよくないなあと思ったので、あえて入れなかったんです。でも今後面白い使い方を思いついたら突然入ってくるかもしれないですね」(井上氏)
楽器プラットフォームとしてのiPad
iELECTRIBEの次に何をやるか、まだ決まっていないという。ELECTRIBEの別モデル、例えばサンプラーやシンセ、アルペジエイターを付けたもの、いろいろと要望は上がっている。iELECTRIBEのシリーズ化は今は「やるかも」程度だが、iPadというプラットフォームでさらに何かやりたい気持ちはあるようだ。
iPadのようなタッチデバイスをコルグ自身でだすという考えについて、佐藤氏は「価格が……(笑)この値段でこれ(iPad)を出せるというのは画期的なこと。このデバイスが新しい市場を開いてくれるかもしれない」とコメント。
福田氏も「これまで楽器とユーザーとの間にあった距離感を一気に縮めてくれるデバイスになる。アプリはすぐ買えるし、価格もリーズナブル。しかも、瞬時に起動できて、どこでも演奏できる」と続ける。
「ハードとソフトの楽器はどう共存していくのか。ハード楽器はなくなるんじゃないかという方もいますが、ぼくらはそうは考えてなくて、ハードはハードの、ソフトはソフトの良さがある。用途もそれぞれに合ったものがある。だからこれはソフトがいいね、これはハードがいいね、と自然にバランスしていくと思っています。これ(iELECTRIBE)はソフトならではのよさがでていると思います」(佐藤氏)
800DV、MS-50、SQ-10、PS-3300……ソフトウェアとして復活してほしいコルグの名機はたくさんある。現行の人気コンパクトシンセであるKAOSSILATORをと望む声も多い。
今度リリースするiPad楽器も「このためにiPadを買う」キラーアプリとなるだろうか? 楽器メーカーの本気を再び見せてほしい。
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