成長しない市場では戦わない──シャープ、液晶パネルはモバイルと大型に集中
シャープは液晶事業でスマートフォン/タブレット向けの中小型と、50〜70インチクラスの大型に集中する方針。「CGシリコン」「IGZO」によるモバイル向け高精細パネルを亀山工場でも生産する。
シャープの片山幹雄社長は6月3日、経営方針説明会で、今後の液晶事業はスマートフォン/タブレット向けの中小型と、50〜70インチクラスの大型に集中する方針を明らかにした。これまでテレビ用パネルを生産してきた亀山工場(三重県亀山市)はモバイル向け中小型パネル生産にシフトしていく。
「30〜40インチで韓国メーカーに勝ったとしても、韓国メーカーも赤字。誰ももうからなくなった。成長しない市場で戦うことはありえない」。40インチ以下の液晶テレビは急速にコモディティ(日用品)化。台数の伸びが鈍化しており、在庫のだぶつきで価格が下落。パイを奪い合った結果、Samsung ElectronicsやLGなど大手各社とも収益が悪化している。
一方でスマートフォン/タブレットは今後も高い成長が見込まれ、シャープが得意とする高精細パネルの需要も高まると予測。300ppi以上の高精細パネルが可能な「CGシリコン」技術や、高精細かつ低消費電力化が可能な「IGZO」技術を武器に、モバイル端末市場に注力していく。
CGシリコン液晶はスマートフォン向け小型パネルに適用する。従来の天理工場(奈良県天理市)と三重第3工場(三重県多気町)の増産に加え、亀山第1工場でも来年度から生産を開始する計画。IGZO液晶はタブレット向け中型パネルに適用し、今年後半から亀山第2工場で生産を開始する。
亀山工場を中小型に振り向ける一方、40インチ以下のテレビ用パネル生産は縮小。この結果、2011年度の液晶パネル販売全体に占める中小型の割合は、前年度の35%から50%以上に高まる見通しだ。
50インチ以上の大型パネルにも注力。堺工場(大阪府堺市)が対応する第10世代ガラス基板から60インチパネルが8枚とれる効率性を武器に、大型テレビのほかデジタルサイネージ、電子黒板などの新市場を開拓していく。
普及帯のテレビ用パネルは、提携している台湾の奇美電子などからの調達拡大でまかなっていく考えだ。奇美電子の親会社・鴻海精密工業との提携交渉を進めているという報道もあるが、片山社長は現時点での明言を避けた。
片山社長は「液晶事業はシャープのオンリーワン技術をベースに成長率の高い分野にシフトし、コモディティ分野からは脱却を図ることで収益の向上を図っていく」と述べた。
液晶工場の操業停止など響き最終益7割減見通し
シャープは同日、未定としていた2011年度(2012年3月期)の連結業績予想を公表した。売上高は前期比よこばいの3兆500億円だが、営業利益は22.9%増の970億円を見込む。一方で中小型シフトによる構造改革費用や液晶工場の操業停止などを損失計上し、最終利益は約7割減の60億円にとどまる見通しだ。
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