「我々は明確に加害者」 ベネッセ原田社長が改めて謝罪 再発防止策と補償について説明
ベネッセHDの原田会長が個人情報漏えいに関する再発防止策や補償について説明。「1日も早い信頼回復に務める」と話した。
ベネッセホールディングス(ベネッセHD)は7月17日、傘下のベネッセコーポレーションから大量の個人情報が流出した件で、関連会社の業務委託先SEの逮捕を受け、経緯や再発防止策を説明した。ベネッセHDの原田泳幸会長兼社長は「深くお詫びするとともに、1日も早い信頼回復に務めたい」と謝罪した。
不正競争防止法違反(営業秘密の複製)で警視庁に逮捕されたSEの男(39)は、ベネッセグループの情報処理子会社「シンフォーム」が業務委託していた企業の元社員。同企業は関連業務に2012年4月から関わっており、男は開発の中心的な役割を担うベテランで、シンフォーム東京支社の多摩事業所(多摩市)でデータベースの開発・保守に従事していた。
業務委託先のSEが顧客データベースに直接アクセスできる権限を持っていたことについては「システムの運用体制の見直しも必要だが、責任感や倫理観の共有が足りていなかったことも大きな問題」と考えているという。
判明している約760万件以外の別ルートの流出の可能性は「現在のところ確認していない」(ベネッセコーポレーションの小林仁社長)。問い合わせは現在までに5万件ほど寄せられており、サービス解約の希望も数千件規模に上っているという。
「ご迷惑とご心配をかけている加害者であることは明確」
原田会長は記者会見で、「顧客に子どもが多く、特にデリケート機密情報を抱えている企業として、事の重大さは十分に認識しており、改めて深くお詫びするとともに信頼回復に全力で務めたい。お客様の声を真摯に受け止め、2次被害を防ぐためあらゆる手段を持って全力を尽くす」と謝罪した。
購入したデータを削除したジャストシステムを批判したこともあったが、「お客様にご迷惑とご心配をかけている加害者であることは明確」と認め、情報管理体制の見直しや、社員や関係各社のスタッフも含めた意識改革などに取り組んでいく考えを示した。
再発防止策として、弁護士や外部の専門家を交えた「個人情報漏えい事故調査委員会」を原田会長兼社長付けの諮問機関として15日に発足。事実関係を解明し、警察の捜査にも積極的に協力する。
顧客への対応としては、(1)「お客様本部」(仮称)の発足、(2)金銭的補償――の2つを進める。「お客様本部」は不審なDMや電話あった場合に情報提供する窓口として開設し、不正に取得した名簿が使われていることが分かった場合は、発信者に対し利用停止と提出を呼びかける。今後ベネッセコーポレーションから送る全ての郵便物には、同意を得て取得した情報を利用していることを封筒に明記する。
金銭補償の原資として200億円を準備し、お詫びの品や金券で対応する予定。流出人数の規模が確定次第、過去の類似案件も勘案して保障の内容は決めるという。
経営陣の責任を問われると「まずは原因の徹底究明と真摯なお客様対応で信頼回復に取り組むことが最優先。6月に就任したばかりで過去の事案ではあるものの、今後の対応は私の責任」(原田会長)とした。
関連記事
- ベネッセ、情報流出のお詫び対応に200億円準備
ベネッセから大量の顧客情報が流出した問題で、ベネッセはお詫び対応として200億円を準備していることを明らかにした。 - ベネッセ情報流出、派遣SEを逮捕 顧客データ複製の疑い
ベネッセの情報流出問題で、警視庁は不正競争防止法違反の疑いで外部業者のSEの男(39)を逮捕した。 - ベネッセ情報流出、ジャストシステムに販売した業者がコメント 「不正情報含む認識なかった」
ベネッセの顧客情報流出で、ジャストシステムに個人情報を販売した業者がコメント。データは他社から購入したもので「不正な流出情報が含まれている認識は全くなかった」という。 - ベネッセ流出、SEの派遣社員を立件へ 「名簿がカネになると思った」 関与認める
ベネッセ顧客情報が大量流出問題で、DBを管理する下請け業者の派遣SEの男が流出に関与した疑いが強まった。任意の事情聴取に「名簿がお金になると思った」と、持ち出したことを認めたという。 - ベネッセ原田社長、ジャストシステムを批判 「一方的なデータ削除は原因究明を難しくする」
ベネッセHDの原田社長は、ジャストシステムによる購入データの削除を「原因究明を難しくする」と批判。関係先に対し情報開示と捜査への協力を求めている。 - ジャストシステム、購入した個人情報257万件を削除 「出所が明らかになっていない状況で購入」
ベネッセの個人情報流出問題で、ジャストシステムは名簿業者から購入した個人情報257万件を削除。「企業としての道義的責任」としている。 - ジャストシステム、「流出情報と認識して利用した事実ない」 ベネッセ顧客情報流出問題
ベネッセから流出した個人情報を使ってDMを送ったと指摘されているジャストシステムは「流出した情報と認識した上で利用した事実は一切ない」とコメントした。 - 「子供の名簿」はカネになる 20倍で転売の価値 法規制なく名簿業者野放し
ベネッセの個人情報漏えい問題で、子供の名簿が「宝の山」として取引されていることが明らかに。1件1円で買い取り、20円ほどで転売できるという。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.