「蛇口をひねれば水が出るようにUberを」 カラニックCEOの描く“相乗り”ビジネスの未来:Dreamforce 2015
サンフランシスコに生まれ、世界70都市以上で配車サービスを展開する「Uber」。カラニックCEOはさらなる成長に向け、「水道のように誰でも当たり前に使う存在に」と目標を掲げる。
米Salesforce.comの年次イベント「Dreamforce 2015」(9月15〜18日、米サンフランシスコ)にUberのトラヴィス・カラニックCEOが登壇し、マーク・ベニオフCEOと対談した。カラニックCEOは「世界中どの都市でもUberを水道のように当たり前の存在に」という“水道哲学”を語った。
同じサンフランシスコを拠点に世界に展開する2社。国内外から16万人以上が参加するDreamforceの時期は「Uberの利用も多く、私たちにもパートナーにもうれしい時期」とカラニックCEOは笑う。
便利に、安く、驚きのあるドライブ
個人の車をタクシーのようにスマートフォンで呼び出せる配車サービスUberは2008年にスタート。世界70都市以上で展開しており、1分間あたりの利用数は数千回にのぼっているという。
カラニックCEOはUberの魅力と最も努力している点は「最も安く、最も効率的に移動できる信頼性」と話す。そのために、きちんとしたセレクションを通過したパートナー(ドライバー)をできるだけ確保するとともに、料金調整や需要予測のアルゴリズムなど技術的な面にも力を入れる。
「より速くピックアップするために最も重要なのは、リアルタイムに未来の需要を予測し続けること。15分後にニーズが増えそうな場所にいかにドライバーを流すか」(カラニックCEO)
新たなサービスを考える際に大事にしているのは利便性、低価格、“マジック”(驚き)の3点――と、昨年サンフランシスコで導入した、行き先が同じ方向のユーザーが複数人で1台に相乗りできるサービス「UberPOOL」を例に話す。ベニオフCEOも「相乗りで価格を抑えるだけでなく、人との出会いやコミュニケーションがあるのが新しく興味深い価値」と評価する。
Uberのビジネスモデルには既存のタクシー業界などからの反発の声も絶えないが、「むしろこれまでが売り手と買い手の関係が上手くいっていなかった」とここまで成長してきた成果を踏まえて言う。
ユーザーは自家用車を所有する維持費や駐車代より安く、必要な時にピンポイントに車を利用し、ドライバーは自分の空いた時間を有効に活用し、都市全体では交通渋滞を軽減しながら雇用を創出する――「もちろん常に解決しなくてはいけない問題は多い」としつつ、それぞれにとってニーズを満たすものであるビジネスであることを示し、“街を楽しむ”をコンセプトに、世界的なさらなる事業拡大を目指す。
Uberを「水道のように当たり前」に
2月にはカーネギーメロン大学と共同研究を始めるなど、自動運転技術にも興味を示す。事件や事故を防止する安全性、渋滞を減らす可能性に期待しているという。
既存のドライバーの仕事を奪う可能性もあるが――という問いには「技術革新の過渡期には常に問題が付き物だが、社会全体で見れば必ずプラスになるはず。産業革命の前後で労働生産性が大きく変わったように、ロボットや自動運転はいずれ受け入れられていくだろう。サービスはテクノロジーの一部であり、新しい技術に合わせた新しい考え方、やり方を常に探求し続けなくては」と自身のスタンスを語った。
「蛇口をひねったら水が出てくるのが当然で、シャワーを浴びる時間をあらかじめ計画する人がいないように、Uberがあること、使うことが当たり前の世界にしたい。ダウンタウンを走る車が全てUberの車になるのが目標」(カラニックCEO)
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