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なぜ、マストドンの「インスタンス」を立てるのかマストドン会議2

誰か教えてください……。

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 4月から流行し、今もなお盛り上がり続けている分散型SNS「Mastodon」(マストドン)。MastodonはオープンソースのSNSで、500文字までのテキストや画像をTwitterのように「トゥート」(投稿)できるWebサービスだ。

 Mastodonの大きな特徴は、Mastodonを構築するためのソフトがオープンソースで公開されていること。そのため、ユーザー自身が独自の「インスタンス」を立てることもできる(関連記事)。

 現在ユーザーが多いインスタンスは、@nullkalさんが運営する「mstdn.jp」、pixivが運営する「pawoo.net」、ドワンゴが運営する「friends.nico」など。@nullkalさんは、個人でサーバを立て、運用・管理していたことでも知られる(関連記事)。

 ところで、ITmedia NEWS編集部の長老が「マストドンつまみ食い日記」という連載を始め、毎日気が狂ったようにMastodonの記事を書いているのだが、その先輩にSlackでMastodonについていろいろ質問していると「つか、インスタンスたてろー」と飛んできた。――へ?


「Mastodon」(マストドン)インスタンス

 マストドンブーム到来以来、企業はもちろん、個人でインスタンスを立てる人もちらほらと出てきているが、筆者はさっぱり分からない。インスタンスを立てればお金がかかるし、毎日のように運用・管理しなければならない。一度始めてしまったら、ユーザーが少数でもいる限り、飽きたからって「やーめた」とはしたくないし、そもそも個人情報を取り扱うのが面倒くさい。考えるだけでお腹いっぱいだ。

 なぜそんなインスタンスを立てたがるのか。角川アスキー総合研究所主催の「マストドン会議2」に来ていた人たちに話を聞いてみた。

 1人目は、藤井裕二さん。彼は、3Dプリンタで作る普段着などのプロダクトを開発している。彼は、Masto.hostを使ってインスタンスを立てた1人だ(関連記事)。

 「月600円だし、Masto.hostを使ってみたかった。管理画面見てみたかったし。これは趣味で、メリットがあるないではない。今インスタンスを立てている人は、やらなきゃと思ってやっているんじゃないかな。はやりそう、とか、ビジネスになりそう、とか、そういう人がいない、今のこの感じがいいよね。ムーブメントだから、それでもやりたい人だけやればいい」(藤井裕二さん)

 2人目は、巨大インスタンスの主@nullkalさんを捕まえた。


「Mastodon」(マストドン)インスタンス
(左)@nullkalさん、(右)筆者

 「Mastodonというサービスを知って、はじめはGNU socialっぽいなと消極的だった。しかし、調べていくとMastodonはGNU social基盤だったし、自宅サーバを有効活用したいと思ってインスタンスを立てた。『mstdn.jp』のドメインは『あ、とれるじゃん!』くらいのノリで取ったもの。やってみたい願望があって、勉強がてらに立てた。人が来てくれると、ローカルタイムラインが面白いし。既存のインスタンスで満足できるなら、無理に立てなくてもいいと思う」(@nullkalさん)

 3人目は、mstdn.jpのサーバとして選ばれたことでも知られるさくらインターネットの社員、大喜多利哉さん。

 「直接ヒアリングをしたことがないから分からないけれど、エンジニアは技術的な好奇心から立てている人が多いように思う。実際、Linuxでサーバを構築するのが初めてで、自分もインスタンスを立てたいという人からの問い合わせが多い。Twitterみたいなものを自分で作れるらしいぞ、面白いぞ、って感じなのかな?」(大喜多利哉さん)

 4人目は、「friends.nico」を運用しているドワンゴのまさらっき(山田将輝)さん。

 「ほしいインスタンスが存在しないから作る。楽しいから作る。久しぶりにインターネットに現れた大きい波で、企業が所有してるものじゃない原初的なインターネットの姿がここにある。今のMastodonは、インターネットが始まったころに似ているんじゃないかな。企業としては、まだもうかるフェーズではないけど、プラスアルファの投資をしている感じ。CGM(Consumer Generated Media)の会社は今、コミュニケーションをTwitterに奪われていて、コンテンツプラットフォームは倉庫のような状態。倉庫になるとユーザーといい関係が作れなくなる。できるだけユーザーとの距離を近くしていくことで、プラットフォームが荒れることを防げたりもする。個人の場合は、無理して『でかい』インスタンス目指さなくていいんじゃないかな。大量ユーザー抱えるでかいインスタンスは企業に任せろみたいな感じで」(まさらっき:山田将輝さん)

 最後に、イベント主催者でもある角川アスキー総合研究所の遠藤諭さんに話を聞いた。

 「インスタンスを立てることは、場を提供してあげるということ。つまるところ、おもてなしの心である」(遠藤諭さん)

 5人の話を聞いて、「インスタンスを立てる」ということを自分なりに整理してみた。

Mastodonインスタンス心得

  • 立てたければ立てるべし、自分の心に問え
  • 損得を考えるな、やりたければやれ
  • おもてなしの心を持て
  • 波が来たから波に乗る、それでいいじゃないか

 Mastodonのインスタンスを立てるのに、特に論理だった理由はなかった。そこにボールがあるから蹴る。そこにお酒があるから飲む。それだけのことだ。インタビューを終えたころ、気付けばハイボールを5缶空けていた。

太田智美

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