GoogleのDaydreamビリーバーはHoloLensロックスターに対抗できるか?:Googleさん
Microsoftの“HoloLensの父“、アレックス・キップマンさんほどにはキャラ立ちしていませんが、クレイ・ベイバーさんは、その永遠のライバルとして注目しておくべき、GoogleのVR/ARの明日を担う若きリーダーです。その人物像を紹介しましょう。
「de:code 2017」で来日した“HoloLensの父”、アレックス・キップマンさん(37)はインパクトありましたね。なんだかロックスターみたいでした。
おっと、この連載は「Googleさん」なのでした。今日は、MicrosoftにHoloLensのキップマンさんあれば、GoogleにはDaydreamのベイバーさんありき、ということで、キップマンさんと比べるとなんだか田舎の秀才高校生みたい(失礼な!)な、GoogleのVR責任者、クレイ・ベイバーさん(35)の話です。
この2人、見た目は対照的ですが、共通点も結構あります。新卒で今の会社に入社したし、最初はキップマンさんはVisual Studio、ベイバーさんはアプリ関連と、今と全然関係ない部署にいたのに、好きが高じてそれぞれVR/ARの父になりました。
ベイバーさん、例の“20%の自由時間”でずっとVRに取り組んでいて、2013年にはOculus Riftの社内エバンジェリストのようにキャンパスのあちこちでデモして歩いていたそうな。それがスンダー・ピチャイCEOの目に留まり、フルタイムでVRの仕事をすることになりました。
Google I/O 2014の基調講演の最後にピチャイさんがダンボール製VRツール「Cardboard」を発表したときには、どこまで本気なんだろうかと思いましたが、ベイバーさんとしては大真面目。高品質なVRを実現するにはまだ時間がかかるけれど、最終的には誰もが楽しめるものにしたいと考える彼は、そのとっかかりとして安価に体験できるCardboardを普及させようとしたんでした。
ベイバーさんは長期的な視野でVR/ARを見ています。今年のGoogle I/Oの前日に公開したMediumの投稿で、「今のGoogleのVR/AR端末はどんなにがんばっても所詮スマートフォン向けパーツで作ったもので、言ってみれば自転車や自動車用の部品で飛行機を製造するようなもの」だと語り「向う数年中に土台からにVR/AR向けに設計し、もっといい端末を作ります」と説明しています。
Google I/Oの基調講演で、VR(Daydream)とAR(Tango)を別々に紹介したことに違和感があった(MicrosoftはVRとARを一緒にしたようなMRとしてHoloLensを位置付けてる)んですが、ベイバーさんとしてはARをヘッドセットで、というのは技術的にまだ早いと考えているのかもしれません(Google Glassの顛末を見ていたでしょうし)。GoogleのARは、今の段階ではスマートフォンの画面に表示するものです。基調講演では、Tango搭載を使った「Google Expeditions」の紹介でスマートフォンを自撮り棒の先につけて教室に出現させた活火山などを見る生徒たちの動画が流れ、「これ、HoloLensでやった方がよさそうだなぁ」と思ったのですが、生徒たちはとても興奮してました。
ベイバーさんは、VRとARを別物だと考えているわけではありません。「VRとARは競合するものではなく、1つのスペクトラム上の2つの点」であり、「VRはあなたをどこにでも連れて行ってくれるもの。ARはなんでもあなたのところに持ってきてくれるもの」と説明しています。そして、MicrosoftがMRと呼ぶこのスペクトラムのことを「immersive computing(没入型コンピューティング)」と呼んでいます。
ちなみにキップマンさんも「VRとARは別々のコンセプトではない。単に“ラベル”であり、MRの世界を別々の視点で見ているだけ。MRは全てを含んでおり、MRこそがコンピューティングの将来である」と語っています。
ベイバーさん率いるVR/ARチームが夢を実現できるといいなぁ。キップマンさんはかっこいいですが、ベイバーさんみたいな真面目そうな人も応援したくなります。プライベートでは高校に入学して初デートした相手と結婚し、趣味は写真や写真のような絵を描いたりおもしろアート作品(リンカーンの顔がついてるペニーコインで描くリンカーンの肖像画とか)を作ること、というところがまた、好感度高いです。
そんなわけで、日本でいつ発売されるかもまだ分かりませんが、スタンドアロンなDaydreamヘッドセットは買おうと思います。
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