「企業にロボット導入の目的を尋ねると、『イノベーション』と答える人がいる。それは誤解だ。結局のところ、その目的はビジネスにすぎない。だから、コストが下がるか、売り上げが上がるか――それだけだ」
7月20〜21日に東京都港区で開催されている「SoftBank World 2017」で、ソフトバンクロボティクス事業推進本部 本部長の吉田健一さんは、企業向けPepper(「Pepper for Biz」)の導入についてこう述べる。
企業向けPepperが発売されたのは、2015年10月。約2年弱がたとうとしているが、この期間で見えてきたことがある。それは「ロボットの導入目的は人の代替である」ということだ。
「われわれがラッキーなのは、どの業界も人手不足だということ。もう時給1500円を出してもアルバイトすら雇えない時代。よく『ロボットに仕事が奪われる』という話をされるが、日本では人手が足りずロボットにでも人手を補ってもらいたいという状況。これは、世界でみても日本でしかない例。仕事を奪われるうんぬんではなく、人を雇えないという現実がすでに起こっているのだ」(吉田さん)
吉田さんは、現在「ロボットに置き換えられる仕事」とされている7つの項目(飲食小売り、清掃、警備、運輸、建設、介護、農業)を掲げて続ける。
「ロボットが一番難しいのは、モノをつかむという行為。人間でいう、手の部分だ。それをするには、モノの位置を正確に認識し、モノの形や素材を把握し、どれくらいの強さで持てばつぶれないかという計算を、人間は瞬時に行っている。この部分をロボットでやろうとすると、もう5年くらいはかかりそうだ。しかし、ヒューマンエンゲージメントといわれる『接客』や、人間の足に当たる『モビリティ』はもう実現できる。特に、小売り、ホテル、病院、教育では、既に数字として表れている」(吉田さん)
ソフトバンクグループはこれまで、Pepperを主役に置いた「Pepper World」というイベントを開催してきたが、今年11月にはPepperだけではない「ロボットワールド(仮称)」というイベントを実施予定とのこと。吉田さんはこの2年弱で感じたことを、反発を恐れずこう話す――「計算して、ロボットを導入した方がコストが安ければ導入すればいいし、そうじゃなければやめればいい。ロボットの導入目的は人の代替なのだから」。
(太田智美)
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