検索
ニュース

累積赤字59億円のエコ配、”自転車操業”なのに期待される理由「NOKIZAL」決算ピックアップ

日本全国の企業情報を取り扱うアプリ「NOKIZAL」の“中の人”が、気になる企業業績をピックアップしてご紹介します。

Share
Tweet
LINE
Hatena

(編集部注)本記事は、執筆時に公開されていた決算公告に基づいたものです。

 エコ配(東京都港区)が10月13日、官報に掲載した2017年6月期(16年7月〜17年6月)決算公告によれば、売上高は29億8900万円(前年同期は30億6800万円)、経常損失は5億3600万円の赤字(同7億5700万円の赤字)、累積の利益や損失の指標となる利益剰余金は59億2700万円の赤字(同53億5000万円の赤字)だった。

photo

 エコ配は2007年設立。自転車を使用した低価格の小型荷物宅配便「エコ配」を提供している。創業から15年ごろまでは、荷物の年間取り扱い数が1000万個を突破するなど規模を拡大。12年には10億円を調達し、15年中には上場を目指していたが、その後は失速。15年9月にアスクルが16億円で子会社化した。

photo
エコ配の公式サイトより

ここがポイント

 今期の決算でも、5億円の赤字に加えて累積赤字が59億円、流動比率が37%とここ数年は100%を下回っているエコ配。普通なら相当厳しい経営状態ですが、度々の大規模調達で乗り切って経営を続けるという、まさに“自転車配送で自転車操業”状態です。

 特に目に付くのが粗利率(売上高総利益率)の低さ。今期の売上高約30億円に対して、粗利1600万円は0.5%なので相当低いですが、昨年までは粗利自体が赤字状態でした。小売に例えるなら、100円で仕入れたものを90円で売っているイメージなので、本来は商売として成り立っていない状態です。

 とはいえ、人件費やガソリン代の影響で、利益率が低くなるのは運輸業全体の傾向。業界首位のヤマトホールディングスですら、デリバリー事業単体では1兆円以上を売り上げて利益は400億円を切るという感覚です。2017年は未払い残業代問題の一時金支払いで利益を落としています。

 このように“薄利多売”の業界ではありますが、やはりエコ配の利益率は低く、粗利がマイナスだと“多売”するほど赤字が膨らむわけで、赤字が累積するのもうなずけます。

photo

 一方、利益率の推移自体を見ると、アスクルの傘下に入ってからは改善が進み、今期はようやく粗利がプラスにこぎ着けたという印象もあります。もちろん、ここに5億円の販管費が乗るので、依然その分赤字なわけですが。このまま利益率の改善を進めつつ、グループ企業の「Yahoo!ショッピング」や「LOHACO」の伸び、「IYフレッシュ」のような新しい取り組みのニーズを吸収し、取扱高を伸ばせれば何とか収益化も見えてくるか、という感じでしょうか。

それでも期待される「エコ配」の魅力

 エコ配の事業そのものは、実はジャパンブリッジ(13年破産)が04年に開始した「250エクスプレス」というサービスを継承して始まったものです。13年〜14年には短期間ですが、楽天も出資していました。

 つまり、赤字体質で何度も資金をショートさせながらも、その都度新しいオーナーから資金を獲得して売上30億円まで伸ばしてきたわけです。それでも期待されている魅力とは何なのでしょうか。

 それは、自転車配送の「エコ配」もまた、昨今の“物流のラストワンマイル問題”を解決する際のキー、あるいはピースになる可能性を捨てきれないということなのだと思います。

 ラストワンマイル問題は、すでにコンビニ配送宅配ロッカー時間帯指定縮小のような現状の延長路線から、シェアリングエコノミー、ドローンやロボットによる新しい配送方法まで、さまざまな分野からのアプローチが行われています。

 最終的にどういった方法が主流となるのか、いくつかの方法が組み合わされるのか。報道があったヤマト運輸とAmazon.comの運賃値上げ合意のような落としどころになるのか、まだ分かりません。

 ただ、そうした流れが決まったとき、エコ配にも狙えるポジションがあるのでしょうか。あるいは「結局のところ、機械と燃料の効率に人力は勝てない」――という結論に陥るのか、ラストワンマイル問題と一緒に注目していきたいところです。

エコ配の過去業績、他の企業情報は「NOKIZAL」で確認できます

photo

《サービス紹介》

NOKIZAL」は就活生から社会人まで、無料・登録不要で使える日本最大級の企業情報活用アプリです。4万社以上の業績情報に加え、メールやカレンダー、各企業や関連情報サービスへの外部連携も充実しており、企業情報収集をサポートします。帝国データバンクが保有する100万社以上の企業調査情報も追加利用可能です。

《著者紹介》

平野健児。新卒でWeb広告営業を経験後、Webを中心とした新規事業の立ち上げ請負業務で独立。WebサイトM&Aの「SiteStock」や無料家計簿アプリ「ReceReco」他、多数の新規事業の立ち上げ、運営に携わる。現在は株式会社Plainworksを創業し「NOKIZAL」を運営中。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る