あの「Winny事件」を映画化する企画が進んでいる。クラウドファンディングサイト「CAMPFIRE」で、脚本の開発費を調達中だ。
Winny事件とは、P2Pファイル共有ソフト「Winny」を開発した技術者の金子勇さんが著作権法違反ほう助容疑で逮捕・起訴された事件。「自ら著作権侵害していなくても、ソフトを開発しただけで逮捕されるのは不当では」「開発者の萎縮につながる」などと議論を呼んだ。11年に最高裁で無罪が確定。金子さんは13年7月、42歳の若さで死去した。
事件の映画化は、古橋智史さん(Web企業・スマートキャンプ社長)が企画。古橋さんは、Winny開発者の金子氏が逮捕され、7年にもわたる裁判にかけられた一方で、同時期に米国で楽曲ファイル共有ソフト「Napster」を開発したショーン・パーカー氏は逮捕されず、Facebookの初代CEOになるなどその後も活躍したことを挙げ、「Winny事件を映画にすることで、日本が世界に誇る技術や人にフォーカスを当て、挑戦者を応援出来る環境を作りたい」としている。
作品は、Facebookを題材にした映画「ソーシャル・ネットワーク」のようなイメージで、Winnyを取り巻く環境・人間模様をスタイリッシュな映像にしたいという。まずは脚本の完成を目指しつつ、映画製作での仮想通貨の利用や、P2P技術に立脚した配信などにもチャレンジしたいとしている。
CAMPFIREでは、目標額の10万0000円に対して、2月6日現在、既に42万2500円が集まっている。支援の募集は2月27日まで。同企画は、このほど開かれた映画企画のイベント「CAMPFIRE映画祭」で、グランプリを受賞している。
【訂正:2018年2月6日午後0時55分 初出時、金子氏の享年を43歳と記載していましたが、正しくは42歳でした。おわびして訂正いたします】
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