「実は反対派だった」 屋根修理の3代目が“ドローン点検”にアツくなるワケ
ドローンで屋根を点検する方法を普及・啓発する「日本屋根ドローン協会」が発足。屋根のリフォームを手掛ける「石川商会」の社長でもある石川理事は「もともと反対派だった」というが、今ではドローン点検に“アツく”なっている1人だ。その裏には“客の反応”があった。
屋根の点検にドローンを活用する方法を、業者向けに普及・啓発する「日本屋根ドローン協会」(東京都港区)が3月1日に発足した。ドローンの運用方法を周知させ、作業員が屋根に上る手間や、落下リスク、作業時間を減らす狙い。石川弘樹代表理事(石川商店 社長)は「実はもともと反対派だった」が、今ではドローン点検に“アツく”なっている1人だ。
屋根が見える安心感
石川さんは、屋根のリフォームや瓦の修理などを手掛ける石川商店(品川区)の3代目。初めはドローンの使用に懐疑的だったが、試しに使ったところ、依頼してきた客の反応に驚いたという。ドローンを飛ばし、撮影した写真や動画を共有しながら状態を説明したところ、客からは「これがうちの屋根なのか」「これなら一目瞭然」という言葉が。石川さんは「ショックだった」と振り返る。
「伝えきれていなかった」。点検の際、これまでは自ら屋根に上がり、スマートフォンなどで撮影し、降りた後で屋根の状態を説明していた。一方ドローンは、ほぼリアルタイムで状況を報告でき、軒先など人間の手が届きにくい場所も細かく撮影できるという。
屋根工事は、客から作業状況が見えづらく「何をされるか分からない」「怪しい」――ドローン点検は、そうした消費者の不安を払拭する狙いもある。
難しいドローン操作、事故の課題も
点検する側のメリットも大きい。屋根点検は足場や命綱を使わないケースが多く、転落の危険性が高い。厚生労働省によれば、2016年には建設業界で屋根や足場、はしごから転落する事故が846件発生、40人が死亡している。ドローン点検は、こうしたリスクを最小限に抑えられる上、はしごの設置や測量にかかる時間を短縮でき、これまで約2時間かかった作業が10分程度で完了するという。
ただ、ドローン点検の導入にはハードルもある。協会の夏目和樹理事は「10時間以上の練習は必要」と話す。夏目理事は、ドローン向けのソフトウェアを開発するCLUE(港区)のCOO(最高執行責任者)を務める。協会はそうした知見を基に、屋根の点検・工事を行う業者向けに、ドローン点検の資格制度やセミナーの機会を設ける考えだ。
資格制度はドローン操作の研修に加え、飛行前に必要な国土交通省の機関へ許可・承認手続きの案内など、リテラシー向上が狙い。ドローンの落下リスク、賠償責任(保険への加入など)の周知にも取り組む。まず屋根工事の業界団体、全日本瓦工業事業連盟(千代田区)と連携し、2018年度内を目標に立ち上げる計画だ。消費者側は、業者が資格を取得しているかを、点検を依頼する判断基準にできるとしている。
ドローンの事故を巡っては16年11月、岐阜県大垣市のイベントで機体が落下、3人が軽傷を負うトラブルが起きた。国交省によれば、機体を提供した企業が十分な安全措置を施していなかったという。業種は異なるが、石川さんは「ドローンの認知が進む中、どういった運用が正しいか、情報が錯そうするのではないか」と危惧し、「消費者にも分かるようドローン点検の“理想の姿”を伝えていくことが協会の役割」と意気込んでいる。
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