サイコパスは「うそをつく」意志決定が速い 京大などがMRIで実証
京大などの研究グループがサイコパスが「うそをつく」メカニズムを調査。サイコパス傾向が高い人ほどうそをつくかどうかの意思決定が速く「半ば自動的にうそをついてしまう」ことが分かった。
京大、ハーバード大学(米国)、ニューメキシコ大学(米国)などの研究グループは7月19日、サイコパス傾向が高い人ほど「ためらいなくうそをつく」傾向があり、脳の前部帯状回という心の葛藤に関わる部分の活動が低いと発表した。米国の刑務所に収監中の囚人を対象にMRI装置を用いた実験を行った。
通常サイコパスは全体の1%程度しかいないとされているが、刑務所に収監されている囚人の15〜25%はサイコパスという報告がある。研究グループはニューメキシコ州の刑務所の男性囚人67人を対象に実験を実施。コイントスを使った課題を出し、機能的磁気共鳴画像法(fMRI:functional magnetic resonance imaging)と呼ばれる方法で、課題中の脳活動を測定したという。
課題はコイントスの結果(表か裏か)を予測し、合っていれば金銭を受け取り、外れれば金銭を失うというもの。予想と結果の両方を記録する「うそをつけない場合」と、自己報告のみの「うそをつく機会がある場合」を比較した。
分析の結果、研究グループの予想とは異なりサイコパス傾向とうそをつく頻度に相関は認められなかったという。しかし、うそをつく頻度が高い参加者については、サイコパス傾向が高い人ほどうそをつくかどうかの意思決定が速い傾向にあることが判明。また、これと対応するように前部帯状回という領域の活動が低いことも分かった。
前部帯状回は葛藤の検出など心理過程に関わっているとされ、サイコパス傾向が高い参加者は「うそをつくか正直に振る舞うかという葛藤」が低下し、ためらうことなく素早くうそをついていると考えられるという。一方で、研究グループは「前部帯状回はさまざまな機能に関わっている。解釈には慎重さが求められる」ともしている。
研究成果は英国学術誌「Social Cognitive and Affective Neuroscience」のオンライン版に7月3日付で掲載された。
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