“Webの父”バーナーズ=リー氏、個人情報をGAFAからユーザーの手に戻すプロジェクト「Solid」立ち上げ
WWWを考案し、“Webの父”と呼ばれるティム・バーナーズ=リー氏が、「個人情報をデジタルの巨人から人々の手に取り戻す」ためのオープンソースプロジェクト「Solid」を発表した。プロジェクトに集中するための企業Inruptも共同創業した。
World Wide Web(WWW)を考案し、“Webの父”とも呼ばれるサー・ティム・バーナーズ=リー氏は9月29日(現地時間)、“Web上の個人の力と主体性を取り戻すための”オープンソースプロジェクト「Solid」を発表した。
「Solidは、便利さと引き換えに、人々が自分の個人情報をデジタルの巨人たち(訳注:Google、Amazon、Facebookなどを指す)に引き渡さなければならない現状を変える。この現状は、われわれすべてが気づいているように、われわれにとって最善ではない。Solidは、すべての人々がデータを完全に管理できるようWebのバランスを再調整する方向に進化させる、革命的な方法だ」とバーナーズ=リー氏は説明する。
Solidは、既存のWeb技術を使って構築したオープンソースのプラットフォーム。仕組みを大まかに説明すると、ユーザーはサービス提供企業それぞれに個人情報を提供するのではなく「Solid POD」と呼ばれる保管場所(クラウドあるいは自分のサーバ)上に情報を保存し、Solid上のサービスを使う際、どの情報をサービス側に提供するかを選択する。これにより、ユーザーが自分の情報を管理しやすくなるだけでなく、サービスを利用した際に生じる個人データもアプリと分離されてPODに保存されるので、サービス側も大量のデータを収集する必要がないという(Solid Explainedページより)。
このプロジェクトは、バーナーズ=リー氏が米マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者らを中心にしたチームで数年前から取り組んできたもの。同氏はこのプロジェクトに集中するために、MITの教授職を休職し、W3Cの日常業務を減らし、Inruptという企業を共同創業した。同氏はInruptのCTO(最高技術責任者)を務める。InruptのCEOはSymantecやEMCで幹部を歴任し、セキュリティ対策企業Resilient Systems(2017年にIBMが買収)の創業CEOであるジョン・ブルース氏。
まだ対応サービスはデモ段階のものがほとんどだが、専用ページからサインアップしてPODに登録できる。
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