金利が投資に影響するわけ 金利は経済の体温計:渋谷豊の投資の教室(4/4 ページ)
投資に関する情報を集め始めると、「金利が上がったから」「利上げが」といった言葉をよく聞きます。でもこの金利とは何で、どうして投資に関係するのでしょうか? リスク管理、資金管理と同じくらい重要だという金利について、話を聞きました。
サイトウ: 米国金利については、フラット化とか逆イールドとか、そういう話題がよく出ました。
渋谷: そうです。イールドカーブのフラットニング、フラット化したということは、今の景気と将来の景気を見たときに、将来の金利がさほど高くなっていないということです。将来はあまり需要がないんだな、将来に自信を持っている人が少ないんだな、と。つまり米国は景気後退に向かっていくんじゃないか、とみんな思ったわけです。だから、これはやばいのではと思われたわけです。
逆イールドは、短期が3%に高止まって長期だけ1%になっている状態ですね。ただ長期が下がるときは短期も将来的には下げていくはずなので、フラットになっていきます。金利が安くなると、お金を借りてくれる人が増えるので、金利を下げて資金を注入して景気にテコ入れする感じです。
米国では不動産の価格が上がっていて、失業率も下がっている、局地的にバブルとまで言わないけれど物価が上がっている。もっとおカネが欲しいという人が多いから、少し引き締めるために金利を上げたいというのがFRB議長のパウエルさんの言い分です。
一方で市場関係者は、将来景気が良いとは思えないのでそんなに高い金利はいらないよね、と思っているので3.2%で落ち着いている。短期は2.25%でこれから2.5、2.75%と利上げを目指しているが、一方で長期は3.2%。つまり、今よりも将来がいいと思っている人が減ってきている。これがフラット化です。
サイトウ: 短期金利と長期金利のバランスを見ることで、経済の将来の見通しがわかるということですね。確かに投資をするときには将来の経済の見通しは大事ですものね。
渋谷: 金利は資産運用をやっている人にとっては絶対に欠かせないものです。例えば不動産ならば借り入れを利用してレバレッジをかけるのが当然なので、借りる金利が上がるほど収益は悪くなりますよね。低ければ低いほどいい。債券もそうです。
金利が上がれば債券の価格は下がる、金利が下がれば債券は上がる。金利と債券価格は逆の動きをするので、金利が上がったと聞くと、「俺の債券下がるんだな」と思わなきゃならない。株をやっている人も、僕の投資している会社、金利が上がるとおカネの調達が大変だろうなとか、社債発行できるかな、高い金利を払うんだろうなぁと思いますよね。金利が上がると企業業績も悪化するということになります。
利益が10億円しか出ない会社がおカネを10億円借りていて、金利が10%になったら金利だけで1億円払わなきゃならない。頑張っていることは変わらないのに、金利負担が増えることで利益が10億円から9億円になるわけです。10%減益となったら株価は下がります。
サイトウ: 金利が上がったり下がったりすることが、不動産から債券、株式までいろいろに影響すると。
渋谷: 投資経験が長くなってくると、朝起きてすぐにチェックするのは米国10年の金利がどうなったかです。授業でいつも伝えていますが、10年金利見ていないとダメよ、と。そしてできればイールドカーブも。これは経済の体温を知るということなんです。
3%なのか4%なのかという絶対値もあるんですが、大事なのは体温を知っておくということです。僕らも平常時の体温を知らなければ、38度と言われても高いのか低いのか分からないじゃないですか。定点観測していくことが大事です。3.2%だから、いい、悪いではなく、通常に比べて高いか低いかを知っておく。
景気がいい中で3.2%は低いし、悪い中で3.2%は高い。今の状態から見て3.2%を判断する。これができると運用はすごくうまくいきます。経済のことも分かります。仕事にも使えます。
話し手 渋谷豊
ファイナンシャルアカデミー取締役。中上級者向け講座では教壇にも立つ。大学卒業後、邦銀勤務を経て、慶應義塾大学大学院 経営管理研究科(MBA)を修了。その後、米系、仏系銀行のプライベートバンク部門にて、富裕層の資産運用業務に13年間従事。2008年の世界的金融危機を体験し中立的な金融アドバイスの必要性を痛感し、独立系投資顧問会社代表に就任した後、さらに幅広い層に金融経済教育を広めるためファイナンシャルアカデミーに参画。現在は投資信託スクールでの講師のほか、Jリーグの選手への講演等も行う。ファイナンシャルアカデミー
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