高校野球中継にもAI “人手不足”のNHK地方放送局が考えたAI活用法(2/2 ページ)
「第48回 番組技術展」でNHKの地方局が取り組んでいるAI(人工知能)活用事例が紹介されている。放送用に撮影した動画からSNSに使うダイジェスト版を自動作成するシステムなど現場作業の省力化を目的にしたものが多い。
AIを利用したスピードガン球速表示システム
野球中継でおなじみの球速表示。通常は球場側がプレスに配信する球速データを利用するが、高校野球の地方大会が行われる球場の中には設備が整っていないケースも多いという。NHK熊本放送局が開発した「AIを利用したスピードガン球速表示システム」は、画像認識と機械学習を組み合わせ、球速データを配信していない球場で中継映像に球速を自動表示する仕組みだ。
用意するのはバックスクリーンを撮影するカメラとノートPC。撮影スタッフは球場に到着するとまずバックスクリーンに表示される球速表示を撮影し、画像解析後の「数字」をAIに学習させる。
「少ない学習量で高い認識精度を持つパターン認識モデルのサポートベクターマシンを使いました。数字ですから、学習するのは0から9までの10パターンのみで済みます」(開発担当者)
球場ごとに球速表示の文字が若干異なることもあり、現時点では中継前の機械学習が欠かせない。それでも球場のインフラやシステム規模を考えるとベターな選択なのだという。何より球場の制約に野球中継の質が左右されないのがメリットになる。
熊本放送局では、2018年度の熊本大会で準決勝以上の3試合で同システムを運用し、数字の認識率は100%だったという。福岡放送局や沖縄放送局での運用実績もある。
今後は得点情報やBSOデータ、ランナー位置といった情報の解析と自動表示に発展させる方針。試合情報の完全自動取得を目指すとしている。
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