欧州議会、著作権指令の改正案承認 YouTubeなどにユーザーの著作権侵害完全防止を義務付け
EUの欧州議会が、主にネットでの著作権保護を目的とする著作権指令の改正案を正式に承認した。加盟国で法制化されれば、例えばGoogleなどのプラットフォーマーは、ユーザーによる著作権侵害コンテンツのアップロードを完全にブロックする技術の導入を義務付けられる。
欧州連合(EU)の欧州議会は3月26日(現地時間)、2月に欧州議会、欧州評議会、欧州委員会が政治的に合意した著作権指令の改正案を賛成多数で正式に承認したと発表した。
3月末に開催される欧州理事会でも加盟国の過半数が承認すれば、2020年にも施行される見込みだ。施行されれば、2年以内に各加盟国で法制化される見通し。
この改正は、主にインターネット上の著作権保護強化を目的としている。米Googleなどのいわゆる「プラットフォーマー」に対し、著作権侵害コンテンツの削除や、ニュースアグリゲーションサイトでのコンテンツ使用料支払いなどを義務付ける。コンテンツの著作権保有者がプラットフォーマーに対して適切な使用料を請求する交渉をしやすくするとしている。
この改正案に対しては、ネットでの表現の自由を阻害するとして、プラットフォーマーだけでなく、Wikipedia、ネットにおける言論の自由保護を目的とする米非営利団体、電子フロンティア財団(EFF)なども反対している。
Googleは昨年11月、新指令の、特に第13条を順守するのは技術的にほぼ不可能だと苦言を呈した。この条項では、例えばYouTubeのようなプラットフォーマーに対し、ユーザーがアップロードするコンテンツがそのコンテンツの権利保有者の権利を侵害しないような、効果的なコンテンツ認識技術を構築するよう義務付けている。
YouTubeのスーザン・ウォジスキCEOは、第13条がEU諸国で法律化された場合、EU圏内の視聴者から動画をブロックせざるを得なくなると警告した。
欧州議会は発表文で、「Google News」などの短いスニペットは規制の対象ではなく、非営利のWikipediaやGitHubのようなオープンソースプラットフォームも規制対象外だと説明している。教育やイラストに使う場合も対象外だ。
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