GoogleのAI諮問委員会ATEACに「待った」 反LGBTQなメンバー除名の署名運動
GoogleがAI倫理を守る目的で立ち上げた諮問委員会ATEACのメンバーとして、保守系シンクタンクの所長を指名したのは不適切だとして、Google従業員有志が除名を求める署名運動を開始した。
米Googleの従業員有志らは4月1日(現地時間)、Googleが3月末に立ち上げたAI倫理原則のための外部諮問委員会「ATEAC(Advanced Technology External Advisory Council)」から、保守系シンクタンクHeritage Foundationのケイ・コールズ・ジェームズ所長を除名せよという署名運動を開始した。
ATEACは、GoogleがAI採用テクノロジーの開発・提供に取り組むに当たって「AI Principles」を順守することを支援するために組成された諮問委員会。
この委員会のメンバーとしてGoogleは、カーネギーメロン大学のアレッサンドロ・アクイスティ教授、香港科技大学のデ・カイ教授、ドローン企業Trumbull Unmannedのダイアン・ギブンスCEOなどと共に、ジェームズ氏の名を挙げた。
だが、アクイスティ教授は3月30日に、委員の申し出を辞退したとツイートした。同氏はその理由を、ATEACは自分にとって、AIの公平性や権利など倫理的な問題に取り組むための適切な組織だと思えないから、としている。
ジェームズ氏が率いるHeritage Foundationは、1973年設立の、政権に強い影響力を持つトランプ政権とも近いシンクタンク。ジェームズ氏は自身のTwitterアカウントでたびたび反LGBTQ的なツイートを投稿しており、従業員有志らは同氏を「反トランスジェンダー、反LGTQ、反移民」とみなしている。以下は、メキシコ国境壁問題について、「毎日何千人もの違法な外国人、危険な犯罪者、麻薬密輸業者、性的人身売買業者が国境を越えている」と主張したものだ。
Googlers Against Transphobia(弱者嫌悪に反対するGoogle従業員)と名乗る有志らはMediumの投稿で、「ジェームズ氏を委員に指名したことで、Googleの“倫理”は移民などの弱者の幸福よりも権力を重視していることが明らかだ」とし、同氏よりも弱者の代表を指名するべきだと主張した。
本稿執筆現在、855人が署名している。名前が明示されている署名者の中には、大学の教授やMicrosoftやFacebookの従業員、Mozillaのフェローなどの名前もある。
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