「SFみたい」「カッコいい」――ネットで反響“球体ドローン”、生みの親が貫く信念(2/3 ページ)
丸いボディーに映像を表示しながら飛行できる「浮遊球体ドローンディスプレイ」、プロペラがなくても空を飛べる「羽根がないドローン」など、球体のドローンを手掛けてきたのが、NTTドコモの山田渉さんだ。山田さんは「SFをサイエンスにする」をモットーに掲げ、モノづくりに取り組んできた。そんな山田さんに、ドローン開発にかける思いやこだわりを聞いた。
斬新な“球体ドローン”が飛ぶ仕組みとは
そんな山田さんが努力の末に考え出した、2つのドローンの構造は次の通りだ。
浮遊球体ドローンディスプレイは、サッカーボール状に並べた金属製のフレームに、細かくLEDを配置。フレームの内部には、4つのプロペラを持つドローンを備えている。ドローンが空を飛んでいる間、フレームはLEDを点灯させた状態で高速回転させることが可能。LEDの“残像”でできる光の幕がスクリーンの役割を果たすため、プロジェクションマッピングで映像を投影できるのだ。
屋内であれば、遠隔操作だけでなく、条件付きでの自動飛行にも対応。スタジアムやコンサートホールなどでの商用化を目指して着々と準備を進めており、19年4月にはプロバスケットボール「Bリーグ」の演出でも使用された。
「普通のディスプレイと違って、このドローンが作り出す“残像ディスプレイ”は透明です。そのため、映像そのものが浮遊しているような演出を実現できます」(山田さん)
ヘリウムガスの浮力でフワフワ移動
羽根がないドローンは、本体がヘリウムガスを充填した風船である点が特徴。プロペラではなくヘリウムガスの浮力で宙に浮かび、表面に取り付けた「超音波振動モジュール」が空気ポンプのような役割を果たすことで空中を移動する。このモジュールは、本来はデバイスの冷却などに使われる市販のものだ。
「モジュールが発する微弱な振動を推力として使うため、前後・上下・左右のいずれの向きにも動くことができます。付けるモジュールの数や、重量の調整を手探りで行い、計200グラム程度に収めることで飛行を可能にしました」と山田さん。
「『羽根がないものはドローンではない』という意見もあるようですが、本来のドローンの定義は無人航空機。これはれっきとしたドローンですよ。羽根がないため、接触しても人を傷つけないのが既存のドローンと大きく異なる点です」と山田さんは自信を見せる。
今後は屋内での“空飛ぶ広告”や道案内、警備などの用途を想定して改良を続けるという。将来的には、浮遊球体ドローンディスプレイと羽根がないドローンを組み合わせ、2機種が上空を飛び交うイベント演出を手掛けることも構想中という。
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