JASRAC、ネットで物議醸す「音楽教室に潜入調査」報道にコメント 「違法ではないと認識」
JASRACが音楽教室に、職員を約2年間通わせて“潜入調査”していたと、朝日新聞デジタルが7月7日付で報じた。著作権料徴収の正当性をめぐる裁判で、JASRACは、潜入調査した職員の供述を証拠資料にする考え。
日本音楽著作権協会(JASRAC)が、ヤマハ音楽振興会が運営する音楽教室に、職員を約2年間通わせて“潜入調査”していたと、朝日新聞デジタルが7月7日付で報じた。JASRACは音楽教室から著作権料を徴収する方針を打ち出しているが、ヤマハなど音楽教室側は2017年に、JASRACに徴収権限はないとして東京地裁に提訴していた。JASRACは、潜入調査した職員の供述を裁判の証拠資料にする考えという。
この報道を受け、ネット上では「(ヤマハの)講師が気の毒」といった声が上がるなど物議を醸している。ITmedia NEWSの取材に対し、JASRACは「調査自体は違法ではないという認識だ」と回答した。
「公衆への演奏」かどうか? 立証のため“潜入”
著作権法では、著作物を公衆に聞かせるために演奏する権利「演奏権」を、作詞・作曲者が占有すると定めている。JASRACは、音楽教室が「公衆に演奏の場を提供している」として著作権料徴収の根拠としているが、音楽教室側は「教室での演奏は聞かせることが目的ではなく、演奏権は及ばない」と反論。支払い義務はないと主張し、東京地裁に提訴した。
朝日新聞デジタルの報道によれば、JASRACは、同協会が管理する楽曲が音楽教室でどのように利用されているかを把握・立証するために潜入調査を実施。職員が「主婦」を名乗って教室に入会し、約2年間にわたり数回のレッスンを受けた他、成果を披露する発表会にも参加したという。7月9日に行われる証人尋問では、この職員が証人として出廷する予定だ。
「違法ではないという認識」
これに対し、ネット上では「JASRACの『音楽文化の普及発展に資する』という目的に反していないか」「生徒だと信じ、教えていた講師を気の毒に思う」「利用実態を把握する方法は、他になかったのか」などと批判の声も出ている。
ITmedia NEWSはJASRACに対し、調査方法を決めた経緯や、ネット上の反応へのコメントを求めたが、同協会は「9日に口頭弁論を控えているため、詳しいコメントは差し控える」とした。
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