トヨタよりも50年以上前に、実験的未来都市を計画した男がいた:新連載 テック・イン・ワンダーランド(3/3 ページ)
トヨタ自動車が静岡県に実験都市を建設する──筆者は、そんな報道に少し既視感を覚えました。いまから50年以上前、ウォルト・ディズニーが「EPCOT」という計画を打ち出していたのです。
ディズニーの一員であるマーベルコミックスのヒーロー、スパイダーマンが空を飛ぶというスタント映像です。カリフォルニアのディズニーランド・リゾートで20年夏にオープン予定の新エリア「アベンジャーズ・キャンパス」で見られるようになるそうです。
これだけ見ると何の変哲もないスタント映像に見えるかもしれませんが、下記の動画を見れば、皆さんもその技術に驚くはず。おそらくですが、これはスタントマン(人間)ではなくロボット。ディズニー・イマジニアリングが18年に発表した「スタントロニクス」プロジェクトによる成果であると考えられます。
ロボット(ディズニー的には「オーディオアニマトロニクス」と呼ぶもの)であれば、スタントマンを使うよりも安全にショーを行えるはずです。かつてウォルト・ディズニーが不安定要素の多い本物の動物を使わず、ロボットによって均一なショーとして運営が可能になった「ジャングルクルーズ」のように。
ウォルト・ディズニーは、先のEPCOT計画を紹介する映像を残した直後になくなりました。しかし現在もディズニーという組織は未来を見据え、新たな技術を持って私たちを驚かせます。
ディズニーランド・リゾート以降、ディズニーは米国外にも東京、パリ、香港、上海にテーマパークを超えた「テーマリゾート」を作り出し、各パークにはびっくりするような技術を使ったアトラクションやエンターテインメントが登場しています。それも、SNSやスマートフォンアプリといった最新技術を積極的に導入し、それらを含めたエンターテインメントを、技術を感じさせずに提供しているのです。
それらはもはや魔法。ディズニーをはじめとするエンターテインメント業界は、技術者であれば言葉にするのも恥ずかしいような魔法を、本気で実現しようとしていると、私は考えています。
その魔法を感じられるのは、やはりエリア全体で都市設計を行った、近未来ならぬ現代で都市設計を行ったテーマリゾートかと思います。ディズニー、ユニバーサルが直接対決するフロリダ州オーランドでは、エンターテインメント業界が本気でIT技術をぶつけ合う姿を見ることができます。
次回はそのテーマパークがウェアラブルデバイスで魔法を実現する様子を紹介します。
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