「僕は本当に入学していますか?」 コロナ禍で進む大学オンライン化、学生は困惑 教授らに実情を聞いた(5/5 ページ)
新型コロナウイルス感染症の流行で大学のオンライン化が急激に進んでいる。新型コロナの対応には困難を挙げればキリがないが、遠隔教育の可能性が一気に広がるチャンスでもある。今回は、5大学の教授たちに各大学の現状とオンライン化の難しさ、メリットを教えてもらった。
≫新型コロナで、オンライン授業の認識に変化
──大学をオンライン化するメリットを教えてください。
慶應・植原先生 もともとオンライン授業はやりたかったのですが、興味を持ってくれる先生は限られていました。今回、「オンライン授業がやれそうな気になってきました」という反応がもらえるようになって良かったです。
今後は、完全に元通りになるのではなく、オンラインと実地での教育をミックスしながら一番いいスタイルで授業をできるようにしたいです。
農工・三島先生 ずっと家にこもって授業を受けるという状況は新型コロナが落ち着けばなくなると思います。やはり大学に来ることも重要。今後は、講義や実験などその場でやるスタイルでも、オンライン授業でも、それぞれの先生が好きに選べるようになると思います。
海洋・室田先生 IT系の人は前からオンライン化、ペーパーレス化の提案をしてきましたが、「チャットは遊びのツール」という認識をされがちでした。今回、否応なくオンライン化することになり、デジタル化も進みました。
東洋・澤口先生 一番良かったのは、改正著作権法が1年前倒しで施行されるようになったことだと思います。同法は、教育目的で教材を配信する際に、管理団体に利用料を払えば、教材の著作権者に個別に許諾を得なくてもよいとするものです。これによりオンライン授業がとてもやりやすくなります。
同法は21年5月に施行される予定でしたが、新型コロナの影響でオンライン授業が普及して需要が拡大し、20年4月28日に施行されました。
長崎・丹羽先生 うちでは1年前からeラーニングの導入で教員の負担を減らそうと取り組んでいました。今回のことがきっかけになって話が進められます。新型コロナが落ち着いても1年生にオンライン授業を経験させてみてもいいのではと考えています。
遠隔教育の専門家、工藤先生の語るメリット
慶應・工藤先生 オンライン授業をやってみると、どうしてもできないことが目に付いてしまいます。しかし、オンライン授業にはたくさんのメリットがあります。例えば以下のようなものです。
- どこからでも授業を受けられる
- 感染症の流行下でも教育が続けられる
- 授業の文字おこしを行えば、目の見えない人や耳が聞こえない人も一緒に学べる
- 翻訳機能を使えば国際交流もやりやすくなる
- 離れた場所にある企業からゲスト講師を呼びやすくなる
- 高校や中学校と連携した教育がやりやすくなる
今回は単に通常の授業の代わりとしてオンライン授業をやっていますが、今後、本当にやりたい教育をやるための環境整備ができたのではないでしょうか。
新型コロナをきっかけに構築したシステムが、オンライン教育のインフラとして使えるようになれば、新しい教育の在り方を追求する土台になってくれるでしょう。
新型コロナをきっかけに、遠隔教育の良いところを生かせるか
オンライン授業をはじめとする大学のオンライン化は、新型コロナの影響で始まった一時的な対応だが、これまで研究や実験として行われていた遠隔教育が実戦投入され、利点と欠点を広く明らかにした。
新型コロナの流行が終息したとき、完全に元の体制に戻ってしまっては今回で明らかになった“良いこと”もなかったことになってしまう。
場所に縛られないというオンライン授業本来の良さは今後の教育の自由度を大きく押し広げる可能性がある。新型コロナをバネに教育も進化できるのではないか。
【編集履歴:2020年5月25日午後7時 事実に基づいて、本文を一部修正しました】
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