電子チケットで行列ゼロ! 米ディズニーランドの「スター・ウォーズ」エリアに見る、テーマパークのスマホ活用の未来:テック・イン・ワンダーランド(3/3 ページ)
2019年に米ディズニーランドにオープンしたテーマエリア「スター・ウォーズ:ギャラクシーズ・エッジ」。ここでは、ゲストのスマートフォンを使い、行列ゼロを実現している。ディズニーの大ファンであるITジャーナリストの宮田健氏が、その仕組みと魅力を徹底解説する。
スマホを使ってスパイになれる?
ただでさえ、このように濃い体験ができるライズ・オブ・レジスタンスですが、ディズニーはゲストがアトラクションをもっと楽しめるよう、スマホと公式アプリを使った仕掛けを取り入れています。
運営元は公式アプリで、スター・ウォーズのテーマエリア内だけで遊べるゲーム機能などを配信しており、ライズ・オブ・レジスタンスと連動するゲームでは、アトラクション内にある小道具の数などに関するミニクイズを出題しています。
ゲストは、エントランスを抜けてからライドにたどり着くまでの“行く物語”を楽しみつつ、周囲を見渡したり、小物の数をかぞえたりしながら、「マーク付きのかごはいくつ存在する?」といった問いに答えていきます。正解するとポイントがもらえます。
面白いのは、ゲストが自身の所属先を、正義のレジスタンスと悪のファースト・オーダーから選べるところ。後者を選ぶと「レジスタンスの秘密基地から何が見える?」「今から何をしようとしている?」といった問いも出題されます。
それに答えながらキューラインを終え、いざライドに乗ってスター・ウォーズの世界を巡り始めると、その中で「レジスタンスの秘密基地内での行動が、ファースト・オーダーに筒抜けになっている」という演出があります。そう、悪の組織を選んでゲームを楽しんでいたゲストが、スパイとしてファースト・オーダーに秘密基地内の情報を漏らしており、それがストーリーに影響したのです。
このように、スマホアプリを使って、ゲストをアトラクションのストーリーに介入させる演出は珍しく、非常に興味深いものだと思っています。アプリで遊ぶ・遊ばないはゲストの自由ですが、その気になれば、アトラクションの奥深い部分に入り込み、そのストーリーを左右しているような、より高い没入感を得られるのです。
ちなみに、スター・ウォーズの世界にはスマホが存在しないため、このエリアではスマホを「データパッド」と呼んでいます。キャストの言葉もしっかり統制されているため、アトラクションの世界観に浸りたい方は、うっかり「スマホ」と口走らないよう気を付けましょう。
伝統を引き継ぎ、伝統を壊す
カリフォルニアのディズニーランドは1955年にオープンしました。開園時から現在まで存在する長寿アトラクションもありますが、伝統にこだわらず、今回のライズ・オブ・レジスタンスのように、最新技術を惜しみなく投入したアトラクションも積極的に開発しています。
昔ながらの濃いファンの中には、古き良き伝統を壊すことを是としない人もいるのですが、当のウォルト・ディズニー本人は貪欲に新技術を試す人でした。
The Walt Disney Companyの新CEO(最高経営責任者)、ボブ・チャペック氏は2018年の講演で「ウォルトは、彼が作り出したパークを博物館として、来園した人にディズニーの歴史を見せるために作ったわけではない。パークは時代とともに、ゲストとともに進化する生き物なのだ」と述べています。
スマートフォンが当たり前になり、ウェアラブルデバイスも登場したいま、テーマパークもできることが広がりました。最新エリアであるギャラクシーズ・エッジで行われている試みは、今後さらに進化していくでしょう。
そうした観点からも、ディズニーやスター・ウォーズに興味がない人も新エリアに注目していただければ、筆者は1ファンとしてうれしいです。
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