プログラミング初心者も「“ぷよ”が動いた!」の感動を 着想から7年、ぷよぷよの教材が生まれた理由(2/2 ページ)
コード入力すると“ぷよ”が動くぷよぷよのプログラミング教材が登場。教材を作った経緯や理由を開発者に聞いた。
「甘口」「激辛」、ゲームの世界観をどこまで表現するか
教材を作るに当たり、五十嵐さんたちは教育現場が抱える悩みや不満を考えた。学校にはプログラミングに詳しくない教員やコーディングが初めての生徒がいる。そこで、特別なソフトウェアをインストールせずWebブラウザで作業でき、汎用性の高いJavaScriptで入力できる環境を作れないかと考えた。
そんな環境を作れる企業を探したところ、プログラミング教材を得意とするアシアルに行き着いた。セガの話を聞いたアシアル側も二つ返事で快諾。同社の塚田さんは「ゲームはものすごく子どもを引き付ける力があるので、教材の題材として良いなと思いました」と振り返る。
教材の内容で両社が重視したポイントが、初心者でも見本のコードを書き写せばプログラムが動く写経にフォーカスした点だ。プログラムが思い通りに動かなかったりエラーの原因が分からなかったり、プログラミングで壁に直面する場面は多い。
そこで教材では写経を通してコーディングに慣れ、指示通りにぷよが動く達成感を感じてもらうことを重視。コードの入力量に応じてコースを分け、初級は28行、中級は95行、上級は1015行を入力するようにした。
セガが提供したぷよぷよのサンプルコードを基に、アシアルがWebブラウザでプログラミングができる環境とスマートフォンでゲームが動くようにする環境を構築。コロナ禍がありながらも、約3カ月で教材を完成させた。
順風満帆に進んだように見えるプロジェクトだが、ゲーム題材ならではの悩みもあった。五十嵐さんは「難しかったのは教材の中でどこまで“遊び”の表現を入れて良いか見極めることでした」と振り返る。初めて教材の開発に取り組む中、本来エンターテインメントであるゲームの表現をどこまで盛り込むべきか悩んだという。
「教材名の『ぷよぷよプログラミング』はゲーム商品ならもっと遊び心やひねりのある名前にできます。レベル分けもゲームなら『甘口』『辛口』『激辛』とする表現を『初級』『中級』『上級』にしました。ゲーム色が出ると先生方がどう思うか、学校で教材として使うのにふさわしいのか、その線引きに悩みました」(五十嵐さん)
ぷよぷよを入口に身近なものに興味を
教材は6月29日に無事公開。初心者に気軽に使ってもらうことを目的に無償で提供している。公開から約1週間で、全国の学校や自治体から導入に関する問い合わせが約30件あったという。
ネットでも「ぷよぷよを動かせて楽しそう」「大人もやってみたい」といった好意的な意見が多く、五十嵐さんは「写経に特化したので『もっと体系的に学習できる教材が欲しい』という声もあるのではと心配しましたが、肯定的な意見が多く安心しました」と話す。
写経でコーディングに慣れた後は5〜10人のチームを作り、どんなゲームを作るかを話し合ったり役割分担をしてゲームを作ってみたりするグループワークもおすすめだという。
五十嵐さんは教材をきっかけに、コンピュータを始め日常のさまざまなことに興味を持ってほしいという。さらに「ぷよぷよを入口にプログラミングはもちろん、ゲームのイラストなど他のことにも興味をつなげてもらえたら」とセガの細山田さん。アシアルの塚田さんも「プログラミングができたら、もっと何かできそうだという感覚をつかめるのではと思います。コンピュータで動くクルマやエアコンなど日常の身近なものに興味を持ち、便利にしたり新しい発見をしたりといった学びにつなげて欲しいです」と期待を寄せた。
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