Apple、「人権への取り組み」文書公開 中国政府との関係批判対応で
中国政府との関係で一部株主などから批判されているAppleが、「人権への取り組み」文書を公開した。「国内法と国際人権基準が異なる場合、われわれはより高い基準に従う」とある。
米Appleは9月4日(現地時間)、企業としての人権への取り組みを説明する文書「Our Commitment to Human Rights」(リンク先はPDF)をひっそり公開した。米Financial Timesが最初に報じた。
Appleは、中国政府の要求に屈して香港やチベットの人々の人権を危険にさらしていると一部の株主などから批判されている。Appleがこの文書を公開したのは、来年の株主総会への株主提案提出期限の前日だった。
この株主らは今年2月の株主総会で、Appleに対し、表現の自由と情報への接続に関するポリシーを毎年報告し、中国からの要求への対応についての透明性を高めるよう提案(PDF)した。この提案は支持が足りず採用されなかったが、40.6%の支持を得た。
Appleは、この人権への取り組みを説明する文書は、国連のビジネスと人権に関する原則に基づいているとしている。「われわれは、ユーザーの人権を尊重する方法でコンテンツやサービスを含む高品質な製品をユーザーが利用できるよう日々取り組んでいる」とある。
具体的な国名は明示していないが、「われわれは現地の法律を順守する必要があり、正しい方向に進むためには政府や他の利害関係者に賛同できないこともあるという複雑な問題がある」としている。「国内法と国際人権基準が異なる場合、われわれはより高い基準に従う。この2つが対立する場合、われわれは国際的に認められた人権の原則を尊重するよう努めながら、国内法を尊重する」
株主提案をした非営利権利団体SumOfUsは同日、この文書を評価する声明文を発表した。Appleがこの文書で「最初の一歩を踏み出した」と評価しつつも、ポリシーに関する年次報告書を公開するよう新たな提案をすると語った。
中国はAppleにとり、主要サプライヤーであり、欧米に次ぐ重要な市場でもある。同社は2017年には中国政府による検閲を回避するために活動家が使っていた一連のVPNアプリをApp Storeから削除し、2019年には香港デモ支援アプリを削除して米議員からも批判された。
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