メルカリ米国事業が好調に 「ローカライズ」「コロナ特需」が成長のカギ
メルカリが多額の資金を投じ、赤字の要因になっていた米国事業が好調。配送手続きの簡略化やAIを活用した新機能の追加など、米国独自の施策がその要因だという。新型コロナウイルス感染拡大によるEC需要の増加も成長を後押ししたとしている。
メルカリが多額の資金を継続的に投じ、連結赤字の要因になっている米国事業。同社によると、その米国事業がここ数カ月で大きく伸びているという。
同社の決算資料によると、2020年6月期第4四半期(4〜6月)における米国事業のGMV(流通取引額)は6億8100万ドル(前年同期比88%増、約720億円)、MAU(月間アクティブユーザー)は420万人(同2.1倍)。出品数と購入者数が過去最高に達したという。
米国事業はなぜ急成長を遂げているのか。メルカリがこのほど記者説明会を開き、その要因を明らかにした。
日本市場とは異なる独自サービスを展開
米国法人Mercariのジョン・ラーゲリンCEOによると、好調の要因は、米国の市場環境に応じた独自サービスの展開だという。
国土が広い米国では、出品物の配送にどうしても時間がかかる。リアルタイムで詳細な配送状況を通知することも難しい。コンビニエンスストアは配送サービスを請け負っていない。米国よりも国土が狭く、コンビニのサービスが充実している日本とは状況が異なっている。
こうした米国ならではの事情に対応するため、Mercariは2018年11月に、グローバルで約8万カ所以上の持ち込み場所を構える配送大手の米UPSと提携。出品者が取引成立後にQRコードを印刷し、売れた商品と一緒に実店舗「The UPS Store」に持ち込むと、店側が梱包や配送を行うサービス「Mercari Pack & Ship」を始めた。
The UPS Storeの規模はグローバルで約5000店舗で、日本でのコンビニの数には及ばないが、配送できる場所を増やすことで配送へのハードルを下げている。
20年8月には、自宅にプリンタがない人でも利用できるようサービスを改善。出品者がQRコードをスマホの画面に表示し、店員に見せると配送手続きが完了する仕組みにしている。
外部企業との連携も強化し、20年6月には配送大手の米Postmatesと提携。配達員が出品者の自宅玄関で商品をピックアップし、購入者に即日配送するサービス「Mercari Now」を、サンフランシスコ限定で試験的に始めている(日本で過去に提供していた同名サービスとは異なる)。
ラーゲリンCEOは「アメリカ人は面倒くさがり屋で、仕事が忙しい人も多いので、できるだけ簡単に発送できるようにした」と話す。
アプリの機能も米国オリジナル
AIを活用した米国オリジナル機能の拡充にも取り組んでいる。これまでアプリに追加した独自機能は、類似した商品の情報から相場を推定して価格をレコメンドする「Price suggest」、出品者が売値の最低ラインを決めておくと、需要に応じて自動で値下げする「Smart pricing」、出品時期ごとに商品の売れ筋予測を表示する「Demand prediction」などがある。
ブランド品の鑑定を手掛ける第三者機関と提携し、ユーザーが機関に出品物の画像を送ると真贋を鑑定するサービスも提供している。ラーゲリンCEOは「本物だと保証されたブランド品が、いい値段で購入できると利用者から好評だ」と自信を見せる。
アプリの機能強化と並行し、米国独自のイメージ戦略にも注力している。米国法人の企業ロゴは、日本とは異なる青色。「信頼性と公平さを想起させる色」だという。
キャッチコピーには「The Selling App.」(売るアプリ)を採用し、屋外広告などを積極的に展開。不要品が売れるサービスであることを前面に打ち出すなど、徹底的にローカライズしたブランディングを行っている。
ラーゲリンCEO「コロナ禍も追い風に」
これらの戦略を推進する中で、新型コロナウイルスの感染拡大に伴ってEC需要が急増したことも、米国事業の成長を後押ししたという。ラーゲリンCEOによると、20年3月〜6月の米国における取引では、出品数が53%、購入者数が36%、出品者数が35%、コロナ禍の前からそれぞれ増加した。
同CEOは「コロナ禍では、米国での一人当たりの平均取引単価はあまり変化していない」とする一方で、「新しいユーザーが増え、取引回数が増えた」と説明。「利用者の売買行動がアクティブになり、数日間で状況が劇的に変化した。家で不要になったものを現金化できるメリットを感じてもらうことができ、追い風になった」とした。
米国事業では現在、21年6月までにGMVを50%以上伸ばす目標を掲げている。達成に向け、今後はMercari Nowの実施エリア拡大などを行う方針だ。ラーゲリンCEOは「ユーザーの利便性の促進や、費用対効果を考えた認知度向上を行っていきたい」と述べた。
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