コロナ禍で急成長した「Zoom」運営元、日本市場での今後の方針は?
テレワーク需要を踏まえて成長を遂げたZVC Japan。今後、日本市場ではどんなサービスや機能を提供していくのか。
新型コロナウイルス感染症が多くの企業に深刻な打撃を与えている一方で、テレワーク需要を踏まえて成長を遂げた企業も複数ある。Web会議ツール「Zoom」を提供する米Zoom Video Communications(ZVC)の日本法人ZVC Japanもその1つだ。
1年前には2500社だったZVC Japanの企業顧客数(「Business」ライセンス以上を利用する企業)は、現在では2万社ある。この1年で、パートナー数も5社から300社以上に増加。社員数は約3倍、国内売上は約10倍となった。
こうした状況を受け、ZVC Japanの佐賀文宣さん(カントリーマネージャー)はこのほど開催したオンラインイベント「Zoomtopia Japan Session」で「オンラインであれば、コミュニケーションの壁を克服できることが分かってきた。コミュニケーションには、『地域の壁』『時間の壁』『言葉の壁』という3つの壁がある。これらを壊す挑戦をみなさんと一緒に取り組んでいきたい」と語り、今後の取り組みや展望について説明した。
「Zoom Rooms」や「Zoom for Home」の機能拡充を推進
まず、ZVC Japanの今後の方針について、佐賀さんは据え置き型端末向けWeb会議サービス「Zoom Rooms」や、リモートワーク向けデバイス「Zoom for Home」の機能・機器拡充を推進していく考えを示した。これらを用いることで、オフィスとリモートで働く人のコミュニケーションを円滑にできるという。
クラウドPBXサービス「Zoom Phone」を展開し、PBX市場への参入を進める計画も明かした。佐賀さんによれば、楽天コミュニケーションズとのアライアンス締結により、年内には050番号と接続できるようにしていくという。「もっと多くの機能を日本の市場へ提供したい」(佐賀さん)として、Zoomを利用してイベントの告知や決済、申込者の管理などができる機能「On Zoom」も提供する方針だ。
佐賀さんは、ZVCが10月14〜15日(現地時間)に開催したユーザーカンファレンス「Zoomtopia 2020」で発表した新機能にも言及。会議参加者のリアクションをアニメーション化して確認できる機能や、ウェビナーでのリアクション機能、付箋を貼り付けてより共同作業がしやすくなったホワイトボード機能が発表されたことに触れ、これらを活用することで「コミュニケーションの壁を超えていくことができる」と話した。
ZVCによる透明性レポートの提供や脆弱性報酬プログラムの強化といった取り組みに加え、エンドツーエンド暗号化機能(End-to-end encryption:E2EE)に対応する計画にも言及。「これらの機能によって、よりセキュリティを高めることができる」(佐賀さん)と自信を見せた。
「オフィス・リモートを問わず、対等なコミュニケーションができると『地域の壁』は超えられる。リモートワークに伴って時間を柔軟に使えるようになると『時間の壁』もなくなる。育児や介護を理由にキャリアを諦める人は減るだろう。Zoomには同時通訳機能もあり、『言葉の壁』を超えた海外とのコミュニケーションも可能だ」(佐賀さん)
ZVC Japanは今後1年で社員を倍増する方針。人員を増強し、リモートでの商談や会議だけでなく、名刺交換や教育などあらゆる場面に対応したソリューションを提供できるよう体制を整えるという。
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