東京ドーム7個分! 巨大データセンターを千葉に建設、大和ハウスの狙い(2/2 ページ)
大和ハウス工業が10月から、千葉県印西市の「千葉ニュータウン」内で巨大なデータセンターを建設中だ。総延べ床面積は約33万平方メートルで、東京ドーム約7個分に相当する。この施設を使ってどんなビジネスを始めるのか。
物流センター事業のノウハウ生かす
ただし、大和ハウス工業はサーバやラックは用意せず、運用管理も行わない。これらはあくまで、入居するクラウドベンダーやデータセンター企業の役割だ。大和ハウス工業は「地盤が強固な土地、免振構造を採用した堅牢な建物、そしてデータセンターで働く人たちへの支援を提供することで、施設の付加価値を高める」(更科氏)という。
「堅牢な建物の開発やサービス提供においては、物流センター事業のノウハウも生かせる」と同氏は自信をのぞかせる。
と言うのも、大和ハウス工業は昨今、ネット通販の普及を受けて物流拠点の建設に注力。全国の270カ所に、総敷地面積が約947万平方メートルの物流センターを配備し、物流事業者などに貸し出している。入居する企業には、アマゾンジャパンなどの大手も含まれる。
物流施設の運用は物流事業者に任せているが、大和ハウス工業は各社のニーズに基づき、(1)オフィススペースやカフェテリアを設ける、(2)通勤用のバスを停めるエリアを用意する、(3)パート従業員を雇いやすいように託児所を造る、(4)全館に空調を配備する――といったサポートを行っている。
大和ハウス工業はこうしたサポートをデータセンターでも提供する計画だ。データセンターの管理には、サーバの熱負荷に対応するために厳密な温度調節が必要だ。運用管理の担当者は、交代制で昼夜問わず勤務し、障害が起きた場合は休日でも駆け付ける必要がある。そんな中でも、顧客企業の従業員が快適に働けるように工夫する方針だ。
足元の業績は悪化、データセンターは活路となるか
大和ハウス工業がデータセンターという新規事業にチャンスを見いだしている反面、既存事業は苦しい状況だ。同社が11月11日に発表した21年3月期上半期(20年4〜9月)の連結業績は、売上高が前年同期比9.8%減の1兆9664億円、営業利益が同25.5%減の1560億円、最終利益が同38.0%減の913億円。通期予想では、最終利益が同44.4%減の1300億円を見込んでいる。
テレワーク普及の影響で、足元では広い家への住み替え需要が高まっているが、いつまで続くかは不透明。オフィス事業も厳しく、ホテルの建設は止まっているのが現状だ。苦境を打破し、データセンターの賃貸事業を予定より早く始められるよう、今後は完成の前倒しを目指して工事を進めるという。
「当社の強みは多様な事業をやっていること。住宅の調子が悪ければビジネス(セグメント)でカバーできる。全部の業績がそろい踏みすることはなかなかないが、(トータルでは)もっと伸ばせる」と更科氏。想定する売り上げや利益は現時点では明かせないというが、日本トップクラスの面積を生かしたデータセンターは未来の業績の柱になるか。
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