M1の異常な性能 または私は如何にしてiPhoneを毎年更新するのを止めてApple Silicon Mac miniを買うようになったか:CloseBox(3/3 ページ)
M1搭載Mac miniがやってきたので早速感想文を書いた。
Mac miniにした理由
で、M1搭載Macである。3つあるモデルのうちどれにするかというのが問題。小寺さんが選んだMacBook Airというのも正しい選択かと思うが、僕の場合は価格が決め手となった。税込8万円で新しいMacが買える、しかもどのみちオーディオインタフェースやMIDIキーボードをつなぐから場所固定だし、据え置きならディスプレイがある必要はない。もともと34インチの湾曲ディスプレイにつなぐつもりだったのだ。サブディスプレイが必要な場合はiPad ProをSidecarで使ったり、Logic Remoteでコントロールサーフェスとして使ったりできる。
で、M1搭載Mac miniにしたらどうなったかというと、2018年モデルのMacBook Airでヒイヒイ言ってた作業を余裕でこなすのである。Logic Proの重い処理であるFlex Pitchによるボーカルトラックのピッチ調整は、多数のトラックがあっても楽々できるし、ソフトシンセのトラックを増やすのに躊躇することはない。これまでは、iPad Proで動かすGarageBandの方がまだマシと思うことが多々あったが、それもこれからはなさそうだ。Logic ProとMainStage 3を同時に立ち上げていても、どちらかが影響を受けることはない。
仕事で使うアプリの組み合わせも楽々こなしてくれる。事実、テキストを打ち込むレスポンス、ブラウザの表示速度など、これまで経験したことがないレベルのスムーズさ。それでいてたった8万円。いい買い物をしたものだと思っている。Big Surの出来の良さもあって、原稿もサクサク進む。
ただ、音関係のアプリには未対応の製品が多い。いや、Apple純正以外では対応している方が少ないかもしれない。Waves Audioなどのサードパーティー製プラグイン、Rogue Amoebaのオーディオルーティングなど、これがないと生きていけないようなソフトも多い(→11月末にはM1対応β版が公開された)。試しにWavesの定番プラグイン、NS1とVocal Riderをインストールしてみたが、インストール自体とアクティベーションはできるものの、Logic Pro側からプラグインを起動すると、表示はされるのだがコントールのフェーダーなどは動かず、表示も二重になってしまい、動かすことができなかった(初稿ではグレイアウトと書いていたが、AUの登録を別途行い、起動はできるようになった)。僕はLogic内蔵ソフトシンセやエフェクトだけで事足りているので大丈夫なのだが、そうでない人はまだ待った方が賢明だろう。
Logic ProやGarageBand以外のDAWをメインで使っているユーザーも、現在のところはM1 Macを積極的に使う理由はないだろう。しかし、これらのメーカーの多くは近々対応すると発表はしており、まずはBig Surへ、次にM1対応を進めてくれているはずだ。Logic ProやGarageBandを見れば分かるように、M1チップ最適化から受けられる恩恵は多大だ。それまでは、Intelマシンは残しておいて、そのレガシーとは共存するようにしたい。
ビデオ編集もM1にした要因の1つだ。Blackmagic Designの「DaVinci Resolve」がM1チップへの最適化をいち早く発表した。その発表は記事にしたのだが、ダウンロードのリンク先がなかなか見つからないという人は多いと思う(自分がそうだった)。というわけで、M1対応版はこちらからどうぞ。インストールしてGPUのところを確認してみたが、確かにM1 GPUに最適化されていた。というか、バージョン17.0のβ1ではGPUではねられて起動もできない。M1の人は迷わず17.1をインストールしておこう。
そういえば、Apple Silicon Macならではの大きな特徴について語るのを忘れていた。iOSアプリ、iPadOSアプリをmacOS上で動かせるという機能である。Mac App StoreではiOS/iPadOSアプリを検索できるようになっていて、僕のお気に入りの、サンプリングプレーヤーの「bs-16i」とメロトロンエミュレーター「Super Manetron」があった。iOS/iPadOSのApp Storeで購入していれば、そのままダウンロードできる。MIDIを設定して動かしてみたらちゃんと音が出る。これはすごくないですか?
僕のように、PC/MacよりもiPhone、iPadでの音楽作りがメインの人間にとっては、このBest of Both Worlds的なソリューションはたいへんうれしい。しかも複数のアプリを同時に弾けるのだ。iOS/iPadOSには素晴らしい楽器アプリが無数にある。これだけで元を取れた感がある。もちろんmacOS専用のサードパーティー製品がM1対応してくれるに越したことはないが、なしでも当面楽しむことはできそうだ。
M1 MacはディスクリートGPU並みとか、Ryzen 5950Xに匹敵するとかいう性能の異常さが取り沙汰されているが、僕のM1 Mac miniはパフォーマンスを誇示することはないものの、平穏にパワーを発揮し始めている。アプリの互換性が高まり、最適化が進んでくれば、M1 Macは「仕事に、趣味に、普通に使える安いパソコン」として受け入れられるんじゃないかと思っている。
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