取扱額8兆円! 「独身の日」セールでアクセス急増、Alibabaが取り組む“サイトが落ちない”工夫とは?(2/2 ページ)
中国で毎年恒例の「独身の日」セール。毎年すさまじい規模のアクセスや売り上げがあるが、大手のAlibaba Groupは、自社の「Alibaba Cloud」などを活用してトラフィックを効率よくさばいている。AIやロボットを活用した取り組みも進めている。
AIやロボットも活用
Alibaba Groupは今回のセールにおいてアーキテクチャを工夫しただけでなく、AIなども活用し、出店者を支援するサービスを充実させた。
奥山氏が挙げた具体例は2つ。1つ目の「バーチャルキャスターサービス」は、ECサイト上にアニメキャラのようなアバターを登場させ、商品を紹介してもらうというもの。アバターは視聴者から商品に関する質問を受けると、その内容を認識し、文字によるチャットや音声で適切な答えを返すことができる。
2つ目は、AIによるライブストリーミングの自動翻訳だ。今回のセールでは、出店者が商品を紹介するライブストリーミングを行い、その内容をAIにリアルタイムで解析・翻訳させ、字幕として表示した。出店者が中国語で商品説明をしていても、ユーザーの希望する言語で字幕を表示できる。言語の壁をなくし、海外ユーザーの利用を促進できるメリットがあり、「出店者の70%がこのサービスを活用した」(奥山氏)という。
Alibaba Groupは今回のセールで、クラウド・AIに加え、ロボットを使って商品を配送する取り組みも実施。中国の杭州市にある浙江大学のキャンパス内での限定的な運用だが、クラウド/エッジの両方でAIに対応した配送ロボットを導入した。
具体的には、ロボットがクラウド上のAIが算出した最適経路を受信しつつ、搭載するエッジAIで障害物や歩行者などを回避しながら商品を配送した。このロボットは1回の充電でおよそ100km走行し、1日当たり500個以上の荷物を届けることができるという。
奥山氏は「この配送ロボットを導入したことによって、今回のセールで配送時間の短縮と配送コストの削減を実現できた」と強調した。
Alibaba Groupは今後、ライブストリーミングで使用した自動翻訳などのAI技術をマネージドサービスとして提供するなど、セールを支えた技術を早くも外販する計画だ。独身の日の大規模セールを裏で支える同社のテクノロジーは、今後どんな進化を遂げるのか。売り上げだけでなく技術的な観点からも、早くも来年のセールが楽しみだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
Alibaba、「独身の日(11.11)」の取引総額は86%増の約7.9兆円と過去最高を更新
Alibabaが毎年11月11日の「独身の日」に開催する特別セール。今年はコロナ禍の巣ごもり需要に支えられ、取引総額が過去最高だった昨年からさらに86%増の4982億元(約7.9兆円)だった。
世界IaaS市場、首位AWSのシェアは45% 2位Azureは18% 3位Alibabaは9%
Gartnerが、2019年のIaaS型クラウド市場(グローバル)におけるシェアについての調査結果を発表。シェアトップは米Amazonで45%、2位は米Microsoftで17.9%。3位は中国Alibabaが米Googleを上回って9.1%だった。
サントリー、国内の全サーバ1000台をAWS移行 データセンター解約で「身軽になった」
サントリーは2020年7月までに、国内の全サーバ(1000台超)をオンプレミスからAWSに移行したと明らかにした。今後は海外のグループ企業でもAWSへの移行を進め、ITインフラを統合管理する方針。
社内システム使えず「テレワークできない」→4000人がVPN同時接続 シオノギ製薬グループの“激動の5日間”
コロナ禍の前までは、テレワークを限られた部署で実施していたシオノギ製薬グループ。4月から急きょテレワークを始め、約4000人の社員がVPNに同時接続できるようにした。その裏側で何があったのか。
自社のOracle Cloud活用、決算業務をフルリモートで 日本オラクル経理部のコロナ対応
日本オラクル経理部は、コロナ禍を踏まえて3月中旬にテレワークに移行している。自社のクラウド型経営管理ツール「Oracle Cloud ERP」などを使って、決算業務もリモートで実施している。その働き方の詳細を、同社経理部のシニアディレクターに聞いた。
