AIと一緒に創作すれば作品が良くなる でも褒められるのは人間だけという「AIの悲哀」も
東京都市大学は、AIが作った曲を音大生が手直しすることで、人間にとって心地よい楽曲を制作できたと発表した。実験では、良い結果が得られると人間が称賛され、イマイチな結果になるとAIが非難されるという場面もあった。
東京都市大学は、人工知能(AI)が作った曲を、音楽大学の学生が手直しすることで、人間にとって心地よい楽曲を制作することができたと12月22日に発表した。AIが人間の創作意欲を引き上げる効果も確認したという。今後は、一般の人もAIを使って作曲できるよう研究を進めていく。
実験では、既存の楽曲を50曲用意。シンガーソングライターの白井大輔さんと洗足学園音楽大学の学生の協力を得て、楽曲をAIで混ぜ、新しい曲を作る実験をした。
音大生がある状況を思い浮かべ、それに合う楽曲を2、3曲選び、それらをAIが混合して作曲。感情を持たないAIは、評価を気にせず既存の楽曲をもとに作曲できるが、全てをAIに任せた場合は、音大生やミュージシャンによる評価が低い「イマイチ」の曲が多く生成された。AIが作った曲を、学生が音楽理論に基づいて修正することで、人の感性に訴える曲も作ることができたという。
また、参加者へのインタビュー調査で、AIがアーティストや学生の創作意欲を引き上げる効果も認められたとしている。作曲者は通常、自身が考えたメロディーを編集して楽曲を作るが、AIが提示したイマイチなメロディーを修正することで普段の制作方法を捉え直すきっかけになり、感性が刺激されたとしている。
ただ、実験では、良い結果が得られた場合は適切な楽曲を選んだ人間が称賛され、イマイチな結果になった場合はAIが非難の対象になったという。できた楽曲の質が高かったとしても、褒められるのは人間に限られることから、同大はこれを「AIの悲哀」(悲AI)と呼んだ。
実験の参加者はAIとの共同作曲について「AIだからみんな好き勝手に言えるところがある」と話していたという。同大は、複数人による楽曲制作で、人間同士が作曲した“イマイチ作品”を面と向かって批判することははばかられるが、感情を持たず、いくら批判しても問題ないAIが人と人の間にいると、円滑な創作活動につながることが期待できるとしている。
今後は、音楽を専門的に学んだ経験のある人だけでなく、一般の人が好きな楽曲を入力して、AIとともに自分好みの曲を創造できるようにする研究を進める。
学生とAIが作曲した作品は、2019年11月の洗足学園大学の学園祭「洗足学園フェスティバル」で発表した。また、日本質的心理学会で研究論文を発表しており、2020年の論文賞を受賞したという。
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