AWSをElasticが名指しで非難 ElasticsearchとKibanaのライセンスを、AWSが勝手にマネージドサービスで提供できないように変更へ(2/2 ページ)
オランダに本社を置くElasticが、オープンソースで開発してきたElasticとKibanaのライセンスを変更。AWSが勝手にElasticsearchとKibanaをマネージドサービスとして提供できないようにした。その理由とは?
ほかのクラウドベンダーとは協力関係を結んでいる
その一方で、AWS以外のクラウドベンダーとは問題なく協力関係を結んでいることも記しており、問題はクラウドベンダー一般にあるのではなく、AWSにこそあるのだということも浮き彫りにさせています。
We collaborate with cloud service providers, including Microsoft, Google, Alibaba, Tencent, Clever Cloud, and others. We have shown we can find a way to do it.
私たちはマイクロソフト、Google、Alibaba、Tencent、Clever Cloudやそのほかのクラウドベンダーとは協力関係を結んでいる。私たちは適切な方法を示すこともできているのだ。
パートナー戦略を具体化させたGoogleと、歩み寄らないAWS
今回のElasticによるライセンス変更は、2018年頃から表面化した、大手クラウドベンダーによる「オープンソースのいいとこ取り」にオープンソースベンダーが反発した動きに続くものといえます。
参考記事:Redis、MongoDB、Kafkaらが相次いで商用サービスを制限するライセンス変更。AWSなどクラウドベンダーによる「オープンソースのいいとこ取り」に反発
このときにはRedis Labs、MongoDB、Kafkaの開発元であるConfluentなどが相次いでブログで、大手クラウドベンダーがオープンソースに大した貢献もしないまま、オープンソースを用いたマネージドサービスで大きな利益をあげていると指摘。
これを不満とするMongoDBやConfluentは商用サービスを制限するライセンス変更に踏み切りました。
こうした動きを察知したGoogleは、2019年4月に開催したイベント「Google Cloud Next '19」で、MongoDB、Redis、Confluent、Elasticをはじめとするオープンソースソフトウェアベンダーとの戦略的提携を発表。
オープンソースソフトウェアベンダーが提供するマネージドサービスをGoogle Cloudに統合することでビジネス機会を提供するなど、積極的なパートナー戦略をとりはじめました。
一方、AWSはこうしたパートナー戦略はとらず、オープンソースベンダーがライセンスを変更してくる動きに対して、AWS自身がオープンソースのディストリビューションを作成することで引き続きオープンソースを維持しようとするなど、歩み寄ろうとする姿勢を見せていません。
参考記事:AWSが、Elasticsearchのコードにはプロプライエタリが混在しているとして、OSSだけで構成される「Open Distro for Elasticsearch」を作成し公開
こうしたAWSの姿勢が、今回のElasticのライセンス変更につながったわけです。
記事執筆時点ではAWSからブログなどでの反応や反論は行われていません(独自ディストリビューションのOpen Distro for Elasticsearchのマネージドサービスと位置付けて継続する可能性が高いのではないでしょうか)。
ただしAWSでAmazon Elasticsearch Serviceを利用しているユーザーは、中長期的なセキュリティパッチの提供やアップデート、本家Elasticsearchとの互換性維持などについて注意しておいたほうがよいかもしれません。
とはいえこのままでは、AWSがオープンソースをベースにした自社のマネージドサービスを維持し展開していくための良好な環境が失われていく可能性が高まることは、AWS自身も理解しているはずです。AWSの姿勢がこの先変わるのかどうか、注視したいところです。
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