FBI、EUROPOL、AFPがおとり暗号化アプリ搭載スマホで犯罪組織を多数摘発
FBIは2018年に立ち上げた暗号化チャットのプラットフォームによる国際的なおとり作戦「Trojan Shield」の成果を発表した。専用スマートフォンを犯罪組織などに1万2000台上販売し、管理するマスターキーで復号したメッセージを読むことで多数の犯罪者逮捕や麻薬押収という成果を上げた。
米連邦捜査局(FBI)、欧州刑事警察機構(EUROPOL)、オーストラリア連邦警察(AFP)は6月8日(各現地時間)、E2EEチャットが可能と謳うスマートフォンを闇市場に販売し、やり取りされるメッセージを傍受することにより多数の犯罪組織を摘発したと発表した。
FBIとEUROPOLはこの作戦を「Trojan Shield」と、AFPは「Operation Ironside」と呼ぶ。AFPの記者会見によると、FBIが2018年に暗号化チャットプラットフォームPhantom Secureを押収した後、このプラットフォームを使うおとり捜査を開始したという。
FBIとAFPは2018年に新たな暗号化チャットプラットフォーム「ANOM」を立ち上げ、ANOMアプリだけがインストールされているスマートフォンをWebサイト(現在は閉鎖されている)で販売した。100カ国以上で1万2000台以上のスマートフォンを販売したとしている。
このアプリでのチャットは実際にE2EEで暗号化されていたが、法廷文書(リンク先はPDF)によると、プラットフォーム上のすべてのメッセージはFBIのサーバにルーティングされ、FBIが管理するマスターキーによって復号された。18カ月で2700万件のメッセージを傍受・復号したという。
この結果、16カ国で800人を逮捕し、数千キロの麻薬と数百万ドルの犯罪行為による世界通貨および暗号通貨を押収した。今後さらに多数の逮捕を計画ている。
FBIは「この作戦の目的は犯罪組織の情報収集だけでなく、こうした暗号化ネットワークへの(犯罪者による)信頼を低下させることにある。世界の犯罪者が、自分が使っているプラットフォームを運営しているのがFBIなどの法執行機関なのではないかと恐れることを望んでいる」と語った。
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