国宝「救世観音像」を8K画質で3DCG化 「現地調査以上の情報量」と仏像研究者も驚嘆
NHK放送技術研究所と東京国立博物館は、国宝「救世観音像」の8K画質の3DCGモデルを作成した。このCGモデルを鑑賞した仏像研究者たちからは再現性の高さに驚きの声が上がった。
NHKと東京国立博物館は、8192×8192ピクセル(約6700万画素)のテクスチャー17枚を使い、国宝「救世観音像」の8K画質の3DCGモデルを作成した。NHKが6月18日に仏像研究者向けにCGモデルを公開したところ、「現地調査以上の情報量を得られた」と、再現性の高さに驚きの声が上がった。
このCGモデルは、奈良県・法隆寺に所蔵されている救世観音像の形状を3Dスキャナーで測定し、一眼レフカメラで400カ所以上のアングルから撮影した静止画データを基にして作られた。NHKの放送技術研究所(NHK技研)と奈良放送局で18日に行ったデジタル調査会には、日本彫刻史や仏像を専門にする研究者計6人が参加した。
その一人である東京国立博物館の皿井舞研究員は「この3DCGモデルは、仏像研究者にとって革新的なものになる」と話す。
「救世観音像は“門外不出の秘仏”と呼ばれるほど、現地調査の機会も少なく研究資料も多くない。その仏像をあらゆる角度から細部まで、8K画質で再現したものの観察からは、現地調査以上の情報を得られた」(皿井研究員)
救世観音像は聖徳太子の死の際に作られた等身像とされている。その姿は、年に2回の法隆寺のご開帳の際に、正面からしか観察することはできない。だからこそ、仏像の背中や表面の起伏、眉間にある球体が埋め込まれた“白毫(びゃくごう)”と呼ばれる部分など、細部まで鑑賞できることを可能にした今回のCGモデルは、救世観音像の謎の解明に大きく貢献するという。
一方で「仏像の生地の成分」のような材質など外見以外の情報は、今回のCGモデルからは得られない。そのため、作成当時の状態を復元するなどのさらなる研究を進めるには「現地調査とかけ合わせるなど、目的に応じて調査手法を使い分ける必要がある」との意見も研究者から挙がった。
このCGモデルの作成は、NHKと東京国立博物館の共同プロジェクト「8K文化財プロジェクト」の一環として行われた。調査会では、東京のNHK技研と奈良放送局にある「8Kスーパーハイビジョンシアター」にCGモデルを投影し、ゲームエンジン「Unreal Engine 4」を使い、自由に動かすことを可能にした。それぞれのCG操作は、東京と奈良で同期するようになっていて、双方で同じ3DCGの映像を観察することができる。
この共同プロジェクトでは国宝などの文化財をデジタルアーカイブとして残すことで、文化財の新しい価値を探っている。2021年は聖徳太子の没後1400年の節目になることから今回、救世観音像にスポットが当たったという。
【訂正:2021年6月23日 午前11時00分 初出時、NHKとするべき部分をNHK放送技術研究所と誤って表記しておりました。お詫びして訂正いたします】
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