スパコン「富岳」の五輪“感染”シミュが炎上したワケ(2/3 ページ)
理化学研究所のスーパーコンピュータ「富岳」を使った、国立競技場内での感染シミュレーションの結果に“ツッコミ”が殺到した。大会の開幕を前に、富岳の結果が炎上した理由を考察する。
マスク着用者がほぼ皆無だったサッカー欧州選手権
海外の大会では、コロナ対策をしていてもクラスターが発生した事例がある。例えば、7月11日に閉幕したサッカーの欧州選手権(EURO2020)では、試合観戦がきっかけの集団感染が2件発生した。現地メディアなどによると、6月29日にはロシア・サンクトペテルブルクでの試合を観戦したフィンランド人300人、30日にはスコットランドで2000人の感染が発覚したという。中にはスタジアムで試合を観戦した人も多数含まれるという。
コロナ対策には、入場時にPCR検査の陰性証明やワクチン接種証明の提出などを課し、観客動員数にも制限を掛けたという。一方、テレビ中継で試合の様子を見ると、観客席にマスク着用者はほぼ見られなかった。人数制限をしているとはいうが、熱狂的なサポーターが集まるバックスタンド側は、間隔を空けずに着席し、かなり密になっているという印象を抱いた。
当然ながら、試合が始まると応援が始まり、ゴールが決まるとスタジアム中が熱狂の渦と化す。サポーターが国歌斉唱を大声で熱唱する国もあり、マスク未着用者が多数を占める会場内で、飛沫感染のリスクが高まっていることは容易に想像できる。
11日(現地時間)に英ロンドンで開催された決勝戦でも、観客数を約7割に制限していたものの、マスク未着用者が目立った。ロイター通信のデータによると、11日に英国では約3万1000人の新規感染者が報告されていたという。
東京五輪では海外からの観客の受け入れを既に見送っていたが、陰性証明などがあってもマスクがないと、このようにクラスターは出る。熱中症リスクやスポーツ応援の性質を考えるとマスクを外した計算がないのは、やはり現実に沿わない。
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